落日燃ゆ

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103108146

感想・レビュー・書評

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  • 先頃(3/22)亡くなった、城山三郎氏の代表作のひとつです。

    骨太・重厚なルポを読んでいる感じ。これって小説なんだよね・・・?^^;

    東京裁判にかけられ、文民として唯一A級戦犯となり処刑された広田弘毅元首相の物語。

    彼はむしろ戦争に反対し、軍部にブレーキをかけた。当時から「なぜ彼が裁かれなければならないのだ?」という声も多かったという(検察官さえ「死刑は重すぎる」と呟いたそうな)。が、「開戦の責任は私にある」として、頑として言い訳も他者の告発も行わなかったがゆえに、有罪となる。
    そこには、かれ自身の「中道の美徳」というものがあった。奢らず、ひがまず(威張らず、おもねらず)、公平に、そして運命のままに・・・。

    ただ、個人の覚悟としてはよくても、黙して主張しなかった(真実を必ずしも明らかにしなかった)ことは、日本の歴史認識をも停滞させてしまったのではないか? ・・・読後真っ先に思ったのはそのことでした。

    また、先の戦争の原因はもっぱら軍部の暴走にあったと思っていましたが、この小説を読むと、戦争はある気狂いのリーダーが起こすのではなく、時代の空気といったものによって必然的に駆り立てられていくものだ、という感じもして来ます。

    現首相の「暴走」の背景として、北朝鮮の非常識への怒り、中韓の「内政干渉」への不快感、テロへの不安、アメリカ国への依存(もしくは隷従)などがあると思いますが、それらは、そもそも我々の中にある物かも知れません。

    落日とは大日本帝國の終焉であり、「長州が作った憲法」の最期であったと小説は結ばれています。

  • 官僚たちの夏に比べて、更にジャーナリズム的な色彩を強くしており、
    人物をその感情描写でなくて行動によって読者に印象付けている。

    複数の登場人物/複雑きわまりない情勢を把握するのに一苦労だが、
    それでもなお描き足りない感があるのだから、
    それだけintricatedな時代/場面だったのだ。

  • こういう本は、実は組織の中に入って読んだ方が面白いと思う。

  • 平和主義者で戦争回避に努力した広田弘毅が、何故A級戦犯として処刑されたか。同期の吉田茂や松岡洋右との比較で外務省の中の対立、軍部の独走、東京裁判まで描かれている。「男子の本懐」浜口首相から戦後までの流れにもなり興味深かったけど・・僕にはどうしても、内情を知らされずに命令で死んでいった兵士、戦争だからと虫けらのように虐殺された中国の人、貧困に苦しんでいた庶民の観点が抜けている気がする。戦争責任・・確かに軍部ではあるが・・天皇の存在を無視出来ない。広田にしろ、東条にしろ、天皇を守ろうとして責任を肩代わりしたのなら、もうそれはそれでいいんじゃないだろうか。
    広田弘毅を通しての戦前、戦後記録として読みましたが・・鵜呑みにする気はありません。

  • 広田弘毅の外交と戦争回避の志。A級戦犯として処刑されるまでの生き様。

著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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