閉鎖病棟

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 110
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103314073

作品紹介・あらすじ

異常の烙印を捺され社会から肉親から隔絶されたまま流れ流れる果てしない時間が突如として破られた…。とある精神病棟。殺人事件。熱い血と熱い涙。感涙を誘う長編。

感想・レビュー・書評

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  • 最初は読んでいる間、ずっと暗い空気に包まれてしまい、なかなか進まなかったけれど、後半は一気に色々な変化が起きて、最後はじんわりと心が温まった。

    演芸会での演劇、素晴らしい内容だったー!
    あれでクロちゃんの心が揺れてしまったのも、うなずける。

    島崎さん、よく立ち直ったな。。それも秀丸さんのおかげなのだろうが、秀丸さんの過去を思うと切ない。人を救ってもいるから…

    色々と考えるところはあるのだけど、いつものように言葉にできないのでした。

  • 自由な閉鎖病棟だな!

  • 読み終わってから気がついた。
    これ10年くらい前に読んだ事がある。

    その時もさわやかな感動を覚えたものだけれど、年月が経ってまた読み返してみると違った趣もある。

    閉鎖病棟に暮らす人々と登校拒否の少女。
    犯罪を犯しても「精神病患者だから」と病院に押しつけられる現実。

    確かに閉鎖病棟に何十年もいるわけだから、ある意味「病気」も重度で、外では殺人を犯したりしている訳だけれど、ある一人を除いては皆「普通」もしくはそこら辺の人よりもよっぽど穏やかな人達。

    最後の法廷のシーンでは色々考えさせられました。
    「無事」とだけ書かれた壺。
    なにがあっても生きなきゃいけないんだ。

  • 2014.10.11

  • ああ、わかる、わかってしまう、の閉鎖病棟の中の雰囲気。さすが精神科医。エピソードの数々がいささか突拍子なくひろがっていく感じがするかも。ひろがりすぎて、この人の過去もちょっと知りたかった…と思う点がいくつか。時代は違えど、精神科の閉鎖病棟ってあんまり雰囲気変わらないんだなぁとしみじみしてしまった。閉鎖の中を知ってるから割と楽しめたけど、知らない人はつまらないと思うかも。

  • 精神科医である著者が書いた精神科の病棟を舞台にした小説。
    細かい個々の話が重なって、ひとつの大きな話になる。

    病院の風景や患者の暮らしや医療の問題は面白い。
    ストーリーも先が読めるけど一応面白い。
    けどヒロインの扱いだとか、色々モヤモヤする。
    1994年の出版ってことを割り引いて考えるべきとはいえ。

    「島崎さん」(由紀ちゃんではない)が一貫して「女性」として扱われているのが気になる。
    いや女性なんだけども中学生はもっと子供扱いされるべきだ。
    子供扱いというと言葉が悪いかもしれないけれど、周囲の大人はもっと大人として接しなきゃだめだろと。
    まだ保護されるべき年齢なんだから。

    そんでこのこの良い子ぶりは、気持よく同情できる便利で美しい被害者像だ。
    しかも中高年男性に夢を与えてくれるきもちわるい美しさ。
    あんなトラウマ発生現場(レイプされた場所とセカンドレイプされた場所)に勤めたがるか?
    中高年も検閲前提の手紙で「守ろうとした」はずのプライバシーを平気で書いちゃうし。

    冒頭の産婦人科はかなりダメ医院だと思った。
    患者を見て驚いて見せたり、親身な顔で話も聞かずに説教をかましたり。一人称が「先生」なのも嫌だ。
    ダメ医者として描写されているならこれでもかまわない。
    最初は鈍い人として書かれているんだと思った。
    けれど、先生さまたちの一人称がことごとく「先生」だったり、親しみの表現だけじゃなく敬語を省略していたり、そんな場所に女の子が喜んで勤めているところをみると、著者がナチュラルにパターナリズムに漬かってるようだ。

    死刑にウソ臭さを感じるけれど実際のところはよくわからないからそこは保留。
    うーん明治なりたてくらいならともかく、それはないんじゃないかなあ…

    気質の人とメンタルの人は良い子だけど、覚醒剤中毒の元やくざは迷惑な悪人という区分けは、なんだか「人格障害お断り」に通じるものがある。
    まあ嫌なんだろうけどさ。扱いやすさで良い患者悪い患者をわけるのは医療としてよくない。

    古い本ってことを考えなければダメなんだけど、当時の常識やら倫理やらにいやーな思いが残る。
    自分の領域のリアルさと、それ以外の部分のケレンのバランスが悪い。

  • タイトルどおり精神科病棟が中心となった話ですが、そこに入院する人、通院する人、それぞれの過去と現在が丁寧に書かれています。
    読んでいるうちに病棟実習を思い出してしまいました。
    半閉鎖病棟だったそこで生活する人々を思い出しながら読んでいたら切なくなりました。

  • 殺人は起きるけど、決してミステリーじゃない。こんなに優しい小説は、滅多にないんじゃないか。登場人物を描く著者の眼差しがしっかり感じられる。 丁寧だし、温かい。これは、読んだ方がいい。ラストでは、本当に「泣ける」。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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