半席

著者 :
  • 新潮社
3.54
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本棚登録 : 266
感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103342335

感想・レビュー・書評

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  • このミス4位なので読んでみた。
    徒目付の片岡直人が探偵役となって、事件の「動機」を探る短編集。
    正統派時代小説はあまり読んだことがないので、一代かぎりの「半席」、徒目付の職務、勘定所との関係などこの本で初めて知った。
    片岡が上司に依頼される公務以外の頼まれ事は、犯人が犯行を自白して決着がついているのに動機だけがわからない事件である。黙して語らぬ犯人に「なぜ」を語らせるために、刑の執行までの短いあいだに真相を推理して犯人にぶつける。ホワイダニットの面白さもあるが、それよりも実直に生きていた武士たちの胸に秘め、長年こらえてきた想いが明らかになるところに切なさ、哀しさを感じた。
    それにしても文明開化の前はみんな五十歳くらいで死んでいたと思っていたが、八十歳になっても隠居せずお役についている武士がけっこういたらしくてびっくり。

  • 時代もので堅苦しい雰囲気ではなく、面白いと思わせる作品です。
    なぜを追求することで、浮かぶ構図や主人公の成長など物語が展開していく。
    次もありそうな最後でしたね。続編が出たら読みたいですし、この人の他の作品も読みたいですね。

  • 仕事はプライドを持って

  • 巧いなぁという感想。特に子どもの麻疹(だったか)の話にぐっと来た。

  • 上司と部下の尊敬と信頼が最後にグッときた。尊敬される人間から必要とされるのは自尊心をこの上なく満たす。 ただ、私には難しい言葉が多くて読み進んで戻ってを繰り返した。江戸、要勉強。

  • 読書記録です。まだの人は読まないでね。


    「半席」「真桑瓜」「六代目中村庄藏」「蓼を食う」「見抜く者」「役替え」同じ主人公の短編集。
    表題の「半席」で半席とはなにか、主人公はどういう人物なのかを説明しています。他の作品にも短編であるがゆえに必ず導入される部分だけど、内容によって少しずつ変わっているところがあって、この短編はココなのね、と。あと、たわいないおしゃべりの相手が都合よくヒントをくれちゃうところもわかりやすい。一気に読めておもしろかった。
    サムライって現代のブラック以上にブラックで、こんなにも本人の適性や希望が通らないものなんだということがやっと理解できました。父から長男へ家督を継ぐということが、どれだけの重圧なのかも。
    主人公の時代は、罪を認めた咎人に「なぜ」は必要ない。その罪に見合う刑罰を受けるだけ。「なぜ」を掘り出すことは主人公の身を危うくすることもある。それでも知ることで何かが変わるという人臭さが救いになるお話でした。
    現代は「なぜ」によって刑罰が変わる。時には「罪」よりも「なぜ」が重視され、見合う刑罰も軽重が変わり禍根が残る。
    知ったがゆえに救われない人がいる。難しい。

  • 御家人から身上がりして、一代御目見の「半席」から永々御目見の旗本になることに励む片岡直人であったが、徒目付組頭の内藤雅之からの頼まれ御用をこなすうちに、人の世の裏側の見えない真実に思いを馳せるようになるが・・・

  • 6つの連作短編。『真桑瓜』のみ既読。
    登場人物に魅力があり、続編を読みたいと思える作品集だった。

    上役から青い、硬いと評される若き徒目付 片岡直人が、罪を犯した科人の『なぜ』を解き明かす頼まれ御用の数々。動機に口をつぐむ加害者それぞれの秘めた思いに人間らしさを見る。
    片岡の実直な人柄には好感が持てるし、飄々としていながら要所は確実に押さえている上役の内藤、分かるような分からないような話で片岡の推理を助ける謎の浪人 沢田源内にも興味が尽きない。
    ただ、各話で繰り返される、半席という片岡の立場を説明する下りが長く、一冊を通して読むには厄介に感じた。

  • 青山文平さんの新作、短編の切れ味はさすが、好きな作者の1人である。

    人は複雑な理由では動けぬものだ、1行で書き尽くされる理由でのみ、人は動ごく。

    歳食ったら、人は丸くなるってのは、あれは外してるぜ、
    年を送るほどに、カンニングする歯止めが消えてゆく、たっぷりと世間を見てきて、我慢のしがいをを感じていない

    何も考えずにものを言うから、言葉が勝手に毒を持つ、

  • 半席とは、無役から役付きになっても、お目見え以上でない場合は一代限りの役となる。
    御家人から旗本になっても、そんなわけで半席ではいられないと、主人公の片岡直人は日々を励む。

    仕事は徒目付け。
    上司の徒目付頭の内藤雅之は時折、仕事以外の頼みという依頼を受け、直人に振ってくる。
    初めは断りを入れていたが、内藤の仕事ぶりを見るうちに、断りきれず半年に一度の頻度で受けるようになる。

    犯罪を犯し事件が決着を決めたあと、当事者の『なぜ?』の問いに答えることだった。
    何度も、事件に向き合ううちに、この仕事が好きになり、人間が深く理解するようになった。

    心地いい読み応え。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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