ひとつむぎの手

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103343820

感想・レビュー・書評

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  • 大学病院の医師もの。
    ドラマで親しんでいる要素もあり、初めて知るような側面もあり。
    リアリティも楽しめて、さわやかな感動もあり、の読後感。

    平良祐介は、純正会医大付属病院の医師。
    良心的で熱心だが、それだけにひたすら忙しい。内心にはもっと認められたい葛藤もありました。
    研修医を3人担当して指導することになり、忙しさには拍車がかかります。三者三様の研修医の指導に苦心することに。
    トップの赤石教授から、3人のうち2人を心臓外科へ来させるようにという指令が。
    達成出来れば、かねてから念願の病院へ出向してさらなる可能性を広げるチャンスが訪れたのです。

    いまどきの若者の相手をしつつ、患者それぞれの事情にも親身に向き合う平良。
    病院での事件に巻き込まれ、右往左往するうちに、ある点では成果が。しかし…?

    平良の不器用さや苦悩にこちらもはらはらしますが、温かな人柄と誠意ある行動にほっとします。
    そして、合う道へと進むエンディング。
    いい話でした☆

  • 心臓外科の平良祐介は、三人の研修医のうち2人を心臓外科への入局を決意させれば、希望している富士第一病院への出向を考慮すると言われ、3人の指導を引き受ける。しかし、その一人にはそっぽを向かれ、他の2人への指導にも自信を無くす。主人公の祐介は、患者のことを親身になって考えるいい医者なのだが、うじうじといろいろ悩み、適当に力を抜いてリラックスすることもできない。読んでるこちらとしては、おいおい大丈夫かと情けなくなってくる。すると、医局の不正を糾弾した怪文書がばらまかれ、事態は思わぬ方向に進展していく。最後は、感動の結末を迎えるので安心して読んでください。いいお話でした。

  • おもしろい!
    夢中になって読んだ。

    2019年本屋大賞ノミネート作品。
    図書館で半年前に予約してようやく自分の順番になった。
    長い間待ったけど、ほぼ1日で読み終わってしまった。

    純正医大附属病院の勤務医・平良祐介はとても多忙で週に1日しか家に帰れないほど。そんな中、最高権力者の赤石教授から、3人の研修医の指導を命ぜられる。しかも、最低でもそのうち2人を心臓外科への入局に導くことを求められる。このミッションを遂行することができれば、心臓外科医としての技術を磨くために希望している富士第一総合病院への出向を考えてくれるというが…

    個性豊かな研修医の指導に奮闘する中、赤石の不正を告発する怪文書が出回る。平良は赤石から怪文書の作成者を調べることも依頼される。

    …って平良君、大変です。

    宿命ではあるけど、優しくて真面目で仕事ができる人には、厄介ごとも引き寄せられるように集まってくる。
    平良が迷いながら、時に傷つきながら、挫折しそうになりながらも、医師として、人間として成長していく姿を描く。
    なによりも、平良の人に対して真摯なところが素敵だと思った。

    「話がよくできすぎ」という意見もあるとは思うが、ストレスから逃れるための、気分転換の本としては完璧。モヤモヤした気分が読後スッキリとなる。
    そういう意味では「半沢直樹」に近いものがあるかな。

    知念実希人さんの小説は初めて読んだ。
    医療や病院に関して、なかなかリアリティがある描写だなぁ、と思ったら、現役の内科医でもあるということ。
    他の小説も読んでみたい。

    • やまさん
      たけさん、こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      いい本に巡り合えてよかったですね。
      たけさんのレビューを見て私も読んでみたくなりま...
      たけさん、こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      いい本に巡り合えてよかったですね。
      たけさんのレビューを見て私も読んでみたくなりました。
      2019/11/06
    • たけさん
      やまさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      レビュー読んで「読んでみたい」と思っていただけたのなら、とても嬉しいです。

      今後も...
      やまさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      レビュー読んで「読んでみたい」と思っていただけたのなら、とても嬉しいです。

      今後も良い本を紹介してくださいね。
      2019/11/06
  • イッキ読みですが最後は涙で…。

    大学病院ではありがちな日常。大学医療の権力争い。
    「病気を診ずして、病人を診よ」の理念も物語にあり、倫理として考えさせられる内容でした。

    「ひとつむぎの手」とはそうゆう事だったんだ!

  • 臨床医でもある知念さんの作品を初読み。

    中堅の心臓血管外科医が主人公。
    医局が舞台。気が付くとあっという間1冊を読み終えていた。

    大昔、医局のどろどろの人事抗争を描いた『白い巨塔』の田宮二郎版テレビドラマを見て、知らない世界があるものだと、度肝を抜かれたが、現場をよく知る現役医師である知念さんが繰り広げる展開に、それぞれが抱える葛藤や欲望の奥深さを知る。

    頑張れば報われる。正しくあれ。
    言うは簡単だが、正しさは一つではないのは、いつの世もどの社会でも一緒。

    心臓血管外科の専門用語や病名、或いは医局人事の構造など、物語の展開を邪魔しない説明が加えられ、流れるように出来事が繰り広げられる。

    若干会話が多めで進展させる場面が気になったが、人物造形も表層的なものと、内実との乖離がそれぞれ次第に露わになり、人間の奥深さにも触れられた気がする。

    以前近くの書店の閉店時、畑野智美さんや額賀澪さんら若手作家さんたちが集いサイン会を開かれ、手持ち無沙汰にただ静かに佇んでいたのが、知念さんでした。勝手に親近感を覚えています。

  • まず、面白かったー!
    医者が主人公で病院内で話が進んでいく。
    医療用語とか難しい単語も多々出てくるが、全然苦にならずスラスラ読める!

    研修医を育てて心臓外科に入れること、怪文書の犯人探しが主な話の軸やけど、その中で患者との関わりや研修医との問題もあったり。

    宇佐美さんと14歳の女の子の所が印象に残った。
    会社の昼休みに読んでたので、泣くかと思ったわ!

    祐介の夢は叶わなかったが、自分にあった道を見つけハッピーエンドってのも◎

  • またステキな一冊と出会えました。

    知念作品はいつ読んでも、何を読んでも大好きです。

    本作もとてもステキなヒューマンドラマでした。

    若き心臓外科医である平良祐介が本作の主人公で、過酷な医療現場と、大学病院での権力闘争、若き研修医との出会い、患者の死とそれに向き合う家族...

    重厚なミステリー作品ではないが、医者として、人としての成長物語。

    祐介が目指した一流の執刀医としての心臓外科医になる夢は3人の後輩達へ託された。

    命をつむぎ、夢をつむぐ。

    いつもながら、タイトルのうまさにも脱帽です。

    これぞ知念作品、感動作をお楽しみ下さい。

    説明
    内容紹介
    人として一番大切なものは何か。若き心臓外科医に課された困難を極めるミッション。医療ミステリーの旗手が挑むヒューマンドラマ。
    内容(「BOOK」データベースより)
    大学病院で過酷な勤務に耐えている平良祐介は、医局の最高権力者・赤石教授に、三人の研修医の指導を指示される。彼らを入局させれば、念願の心臓外科医への道が開けるが、失敗すれば…。さらに、赤石が論文データを捏造したと告発する怪文書が出回り、祐介は「犯人探し」を命じられる。個性的な研修医達の指導をし、告発の真相を探るなか、怪文書が巻き起こした騒動は、やがて予想もしなかった事態へと発展していく―。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    知念/実希人
    1978年、沖縄県生れ。東京慈恵会医科大学卒、日本内科学会認定医。2004年から医師として勤務。2011年「レゾン・デートル」で島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。2012年、同作を『誰がための刃』と改題し、デビュー。2018年、『崩れる脳を抱きしめて』が本屋大賞ノミネート(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 医局の社内政治に巻き込まれる、一流の心臓外科医を目指す若手医師の奮闘。
    書き下ろし

    第一章 選択の温度
    第二章 外科医の決断
    第三章 追憶の傷痕
    第四章 命を縫う
    エピローグ

    多忙を極める心臓外科で、研修医を入局させることでステップアップの病院出向の希望を聞いてもらえることで、研修医を引き受けた平良。

    プレッシャーのかかった平良だが、自分の医師の信念を見せるに従い、3人の研修医たちはそれぞれ開眼していく。

    そんな中、心臓外科主任教授の不正を告発する怪文書が出回り、それの調査も依頼される平良。

    出向の病院を巡って、ライバルである教授の甥・針谷との技術の差にも気づき、平良に迷いが生じる。

    そんな中、教授が倒れ、治療にあたった平良の医師としての何かが変わる。


    患者と向き合う医師の素晴らしさと、まとまりの良い読後感でした。

  • ブク友さんのレビューで知って。

    〇針谷に無邪気に声を掛けられるたびに、耐えがたい自己嫌悪にさいなまれる。醜い嫉妬心を胸に抱え、独り相撲をとっている自分の姿を見せつけられて。(p29)

    ☆結局この針谷もなかなかの曲者だった訳だけれど、そういうことをほとんど感じさせない進め方だったからこそ、最後の最後まで楽しめたのだろう。

    ☆ハッピーエンド。それはよかった。

    ☆自分の中の黒いものを見るようで、それが週末の癒しになった。ああ、それでもいいか、そういう思いも抱えていてもいいか、という。

    ☆著者略歴を見ると、お医者さんなのね。やっぱ、派閥とか、あるんかね。大変やね・・。

  • 展開が気になって次々ページをめくり、あっという間に完結。初、知念作品。噂に違わず面白かった。

    医療現場。真っ直ぐで努力家な心臓外科医が、自分の希望する出向先への辞令を条件に、三人の研修医の医局入りを前提とした指導を請け負う。一人ひとりとぶつかりながら織りなすドラマ。休みなく救急にも応じる心臓外科医のリアル。肉体的な疲労に加え、院内のドロドロとした政争。そして、怪事件。

    『ブラックジャックによろしく』が好きな人には、オススメ。一気読み、不可避。

著者プロフィール

1978年沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。医師。2011年、第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞し、12年、同作を改題した『誰がための刃 レゾンデートル』で作家デビューする。代表作に、「天久鷹央」シリーズがある。その他著書に、『ブラッドライン』『優しい死神の飼い方』『機械仕掛けの太陽』『祈りのカルテ』「放課後ミステリクラブ」シリーズ等がある。

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