樽とタタン

著者 :
  • 新潮社
3.29
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本棚登録 : 416
レビュー : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103513513

作品紹介・あらすじ

忘れかけていた子どもの頃の思い出を、あざやかに甦らせる傑作短篇集。小学校の帰りに毎日行っていた赤い樽のある喫茶店。わたしはそこでお客の老小説家から「タタン」と名付けられた。「それはほんとう? それとも噓?」常連客の大人たちとの、おかしくてあたたかな会話によってタタンが学んだのは……。心にじんわりと染みる読み心地。甘酸っぱくほろ苦いお菓子のように幸せの詰まった物語。

感想・レビュー・書評

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  • 面白いタイトル。
    理由は赤い樽の中にいつもちょこんと入ってる女の子。その子のニックネームはタタン。
    坂の下にある喫茶店での話。小学校から帰ったらこの喫茶店で時間をつぶす。
    そこの常連客との面白い日常。
    こんな小学校時代を送ったら面白かっただろうな~

  • 学校帰りに安心して立ち寄れる居場所。
    私にとってそれは家ではなく赤い樽のある小さな喫茶店だった。
    迎えてくれるのは血の繋がった家族ではなく、年齢も職業も違うし本名さえも知らない、喫茶店の一風変わった常連客の面々。
    けれど彼らはまぎれもない「家族」であり仲間だった。
    常連客の一人がつけてくれた私の呼び名は「タタン」。

    30年以上経って大人なった「タタン」が幼少時代の記憶を手繰り寄せる連作短編。
    あの頃のおぼろげな記憶が嘘か誠か…それは問い詰めてはいけない問題だ。
    確かに幼少時代の記憶は曖昧で、自分の都合で作り変えたものが多いのかも。

    印象に残ったのは亡き祖母の言葉。
    人はぱっと死んで、ぴっと入ってくる。
    亡くなった後、心の中に入り込んできた大切な人との思い出は、そのままずっと心の支えとなってくれるはず。
    素敵なセリフだった。

  • 居場所が見つかってよかったね。
    そんなにホッとできる喫茶店、行ってみたよ。
    周りの大人が放置してくれるから、変な気を遣わずにいられて安心できたのか? 赤い樽が魅力的だったのか。
    狭い所に入ると安心するってあるのね〜。
    本当の話のような嘘のような、でもなんかじわっと幼いころを思い出せていい感じ。

  • 子どもの頃の記憶、思い出。それは本当にあった出来事か。それとも後から付け足されたものなのか。確かに体験してその時にはよくわからなかったことが後々意味を持って降ってくる。ずっと思い出さずに忘れていたことが突然頭の中で鮮明になる時がある。思い出せば思い出すほどに大切で意味のあることだったのだと大人になった今気づく。あの時の自分と今の自分。変わったとこも変わってないとこもあるけれどあの頃の大切な記憶は大切なまま持っていられるように変わらずにいたい。

  • 小学校からの帰りに毎日立ち寄っていた喫茶店での小さな出来事を、大人になってから回想して記したという設定の連作短編集。

    幼い頃から集団生活になじめなかった少女の、唯一安心できる居場所だった喫茶店には、一風変わった人たちが集う。
    過去に体験したと信じている出来事は、果たしてどこまでが本当に起きたことだったのか、記憶の上書きも含めて記しているため、物語というよりも作者のエッセイを読んでいるかのような気分になってくる。
    その曖昧さが優しさに包まれて、そのまま読後感へとつながるような作品だった。

  • 「あの店に来ていた客たちは、誰もがどことなき孤独だった。[...] みんな独自のひとりぼっち感を漂わせていた。」(127 ページ)

    小さな少女が、幼少期に預けられていた喫茶店。
    そこで出会った、少し孤独な大人たちとの物語り。

  • どことなく川上弘美さんのうそこ話に似ているような似ていないような…
    でもあちらはたんぽぽの綿毛が舞うようなふんわり感であるのに対しこちらはさらさらと砂山が崩れるような儚さが漂うところはやはり中島さんらしさなのだろうかわかりにくいけど。
    かつてタタンちゃんと呼ばれた女性の30年の時を遡る回想録、当時下町の喫茶店に集う超個性的な常連さんたちの哲学的とも取れるエピソードだけでも充分に面白いのだがそれらをラストにファンタジーで一括りしてしまう演出も心憎い。
    もうひとりのトモコは誰?それは聞いてはいけない質問です

  • 2019.4月。
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    #樽とタタン
    #中島京子
    #新潮社
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    喫茶店の樽に居場所を持つタタンとそこに来る大人たちの不思議な話。
    学校でも家でもない自分の居場所があって、大人たちと関わりがあるっていいな。
    子どもも大人もないね。
    一対一の人間。
    そういう扱いをしてあげられる大人になりたい。
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    #2019年28冊目
    #本 #book #読書 #reading #本の記録 #読書日記 #読書感想文 #書店員

  • しつけや勉強とか大層なものではなく、小さなことだが子供の頃に教えられた何気ないこと。そういうことって、みんな何某か持っていると思う。

    この本では主人公の小学生「タタン」が学童保育代わりに預けられた喫茶店でマスターや常連客から教えられた何気ないことを大人になって思い出す体でストーリーが進んでいく。大人(というか中年の域)になって読むこういう回顧物語は、実にフワフワと気持ち良い。まさに大人のための童話だなぁと思う。

    リアルな話もあれば、ちょっとだけファンタジーな話や、メランコリックな話もあって、心の様々な琴線をちょっとずつ揺らしてくれるのが心地よい。

    しかし、タイトルだけでスイーツをめぐる女子が活躍する小説と思っていたが、全然違った(笑

  • 語り手は、小学生のころ両親が共働きだったので放課後を近所にある喫茶店で過ごしていた。店主は彼女に赤いコーヒー豆の樽で居場所を作ってあげた。その樽の中にすっぽりはまって過ごしている彼女を、常連客の作家が「タタン」と呼び始め、お店の常連客達は皆タタンと呼ぶようになった。そのタタンと喫茶店の客たちのあれこれを大人になり小説家となったタタンが語る短編集。

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著者プロフィール

中島京子(なかじま きょうこ)
1964年東京都生まれの作家。『FUTON』でデビュー。著書に『小さいおうち』(直木賞)、『かたづの!』(河合隼雄物語賞・柴田錬三郎賞)、『長いお別れ』(中央公論文芸賞)等。2019年5月15日、新刊『夢見る帝国図書館』を刊行。

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