名探偵のいけにえ: 人民教会殺人事件

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103535225

作品紹介・あらすじ

奇蹟 VS 探偵! ロジックは、カルトの信仰に勝つことができるのか? 病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウン。調査に赴いたまま戻らない助手を心配して教団の本拠地に乗り込んだ探偵・大塒は、次々と不審な死に遭遇する。奇蹟を信じる人々に、現実世界のロジックは通用するのか? 圧巻の解決編一五〇ページ! 特殊設定、多重解決推理の最前線!

感想・レビュー・書評

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  • 1978年11月18日。
    ガイアナ共和国バリマ・ワイニソ州のジョージタウン。
    教父ジム・ジョーデンにスポイトでジュースを飲まされた信者900人が集団自殺を図るという事件が起きています。

    1978年11月15日。
    探偵の大塒(おおとや)崇は助手で東大文学部宗教学研究室に在学中だった有森りり子がジョーデン・タウンに行って戻ってこなくなったのでりり子の身になにか危険があったと察知し、後を追って乃木野蒜(のびる)と共にジョーデン・タウンへと飛びます。


    以下ネタバレありますので、これから読まれる方はご注意ください。




    りり子は無事でしたが、乃木は撃たれて死亡。
    そしてジョーデン・タウンの調査団のメンバーが次々と殺されていきます。

    りり子はメンバー3人を殺した犯人を推理してみせますが、その後すぐにりり子が殺されてしまいます。
    そこでついに大塒が皆の前でこの事件のりり子の推理の間違いと、真犯人を推理し始めますが…。
    この推理シーンが非常に長いです。

    そして別の本ですが『本の雑誌2023年3月号』の「どんでん返しはネタバレか」でこの本の編集者の新井久幸さんが「この本ではいくら期待のハードルを上げてもらっても、それを上回る”どんでん返し”が待っていることはお約束する」とおっしゃっています。

    確かにこの作品のどんでん返しは凄いです。
    驚愕のどんでん返しが待っていました。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんばんは♪

      そうそう、どんでん返しはどこまでいくのか…この結末は誰も予想できないですよね〜。
      タイトルもストンと腑に落ちまし...
      まことさん♪こんばんは♪

      そうそう、どんでん返しはどこまでいくのか…この結末は誰も予想できないですよね〜。
      タイトルもストンと腑に落ちました。

      2023/04/16
    • まことさん
      くるたんさん、おはようございます♪

      確かにこの結末を予想できた人はいないと思います。
      タイトルの意味も深いですね。
      それにしても、...
      くるたんさん、おはようございます♪

      確かにこの結末を予想できた人はいないと思います。
      タイトルの意味も深いですね。
      それにしても、驚きました。
      2023/04/17
  • 鬼★5 宗教団体の凄惨な事件… スゴイ重厚感、作り込み抜群の多重推理ミステリー #名探偵のいけにえ

    ■レビュー
    またもやスゴイ本格ミステリーを読んでしまった。話題になるだけあるわ…

    新興宗教団体のキャンプ地をベースに繰り広げられる殺戮劇。
    怪しさと不快さ満点の雰囲気に包まれて、ストーリーが展開されます。

    序盤から引き込ませて、中盤もダレずにどんどん読めちゃう。終盤からの解決パートも単に解決策を提示するのではなく、話にのめり込んでしまう面白さなんです。

    本作、いわゆる多重推理ものですが、複雑な人間関係の設定と絶妙にストーリーに絡まっていて物語の作り込み度がハンパないんすよね。
    多重推理は問答合戦になっちゃって、エンタメ派の人は置いてけぼりになってしまうのがありがちなんですが本作は違うんですよ。小説が上手なの。

    もちろんミステリーとしての解法も、ひとつひとつがロジカルでお見事。動機も素晴らしいし、読み応えもバッチシです。
    そして登場人物たちのキャラクターも濃い奴らばっかりで、関係性や心情描写もお上手。脇役ひとりひとりにも、しっかり人間性が仕込まれていてGOOD。

    総じて本格ミステリーとしての厚み、エンタメ、キャラクター、さらに社会問題も風刺しつつといったバランス抜群の出来栄えで、控えめに言って★5 鬼面白いです。

    なお白井先生はグロ描写が激しいんですが、本作は凄惨な事件ではあるものの、描写としては大人しいです。
    思い切り本格ミステリーを楽しめるので、本格ファンはもちろん、重厚なミステリーを読んでみたい人にもおすすめできる作品でした。

    ■推しポイント
    まず、なんといっても多重推理の部分ですね。

    細かい伏線もしっかり仕込めていて、何重にも推理と解法を重ねていく。
    どんでん返しといった一発大技でなく、積み重ねたロジックで読者を引き込んでいくのは圧巻ですよ。
    もちろんそれだけでは終わらないところが、また鬼なのですが、詳細は是非読んでみてください。

    もう1点、宗教団体の成れの果てに関する記述があるのですが…

    教祖が終末論で民衆を繰り返し騙し続ける、信者が私財をなげうってしまう。傍から見ると馬鹿馬鹿しいのに、彼ら本人は仮に疑問に思っていても決して止まれない。

    『戦争は始めるよりも、止めるほうが難しい』

    ふとどこかで聞いた言葉を思い出し、いまの世界情勢に不安を抱きました。

  • お話は国内事件かと思いきや、舞台は海外アメリカへ!
    そうなると当然、登場人物はカタカナやアルファベットで、カタカナ人物覚えられない私には辛い…
    ジョーデン、ジョディ、ジョセフ、(スージー)Q
    JOJOの系譜でしょうか?
    主人公は大塒(おおとや)うーむキラキラ

    登場人物に感情移入できないと、都度の場面変化で躊躇するので読み進みにくい…

    「多重解決」触れ込みで後半謎が解けてはひっくり返る。
    どの推理が認められるのか?
    一気読みの最高のエンタメでした

    これを気に挫折中の名著「毒入りチョコレート」も読めるようになりたい

  • 宗教に信仰するものとしない者で変わる推理結果。その推理も二転三転し驚かせれっぱなしで最後は究極の2択で教祖を追い詰めた。その教祖と信者を全て殺す動機が負けず嫌いとはある意味リアルで腑に落ちた。

  • うーん、うーん、そうかー

    とんでもないロジックと、見事すぎる多重推理
    すごい!すごいんだけどなぁ…

    「人間」が出てこないんだよな〜
    誰も彼も駒のように思えるんです
    このロジックを成立させるために登場する駒
    駒の種類がものすごく多いので、そこに人間の個性のようなものを感じとれる瞬間もなくはないんだけど
    結局は動き方を決められている駒にすぎない
    なので物語に深みが感じられない
    謎解きゲームとしては超絶優秀だけど
    物語の流れとしては予想の範疇



    と、思わせることが作者の狙いなんじゃなかったんでしょうか
    最後の最後に殺人者の動機が示されたときにゾワゾワゾワーってきました
    駒の中から急に「人間」が浮かび上がってきたような感覚に襲われました
    これほど「人間」らしい動機はないと思わせるものだったからです
    すべてはこの一言のための布石にすぎなかった
    全ての感情をひっくり返された気分
    文句なしの★5です

    すごいよこれは!

  • 「本書はフィクションであり、実在の人物、団体等とは一切関係ありません」というお断りに違和感を持つ。
    ”本書はフィクションであり”というところまではわかる。
    物語なので想像やちょっと盛ってしまったこと、場合によっては事実でないことが含まれますという注意書き。
    ただ、参考文献まで載せておいて、むしろ意識の矛先を誘導しているくらいだと思うのに”一切関係ありません”というのは。

    ガイアナ共和国って本当にあるの!?っていう無知なところから入ってしまったけれど、wikipediaで”ジム・ジョーンズ”を見る限りでは完全にモデルでしょう。
    一部史実に着想を得ていますくらいに言ってもらえた方が面白味が増すというものだが、関係者や関連団体からするとちょっと微妙な内容を含んでいるので問題になるのだろうか。

    なったとして、ここまで似せている中で”関係ありません”と言い切ればよいというものなのだろうか。
    この本をもって、想像される特定の団体・ことがらに対して固定観念を持たれるのは本意ではない、という表明ぐらいの話なのだろうか。。。
    自分がその辺の事情知らなさ過ぎなだけかもしれないが、釈然としなかった。

    で、物語の方は中々に面白い。
    グロミステリーを武器に鬼才として名を馳せている白井さん、初読み。
    思っていたよりは拒絶反応出なかったし、何かよくわからなかった前日譚がちゃんと回収されていたと感じたし、多重解決の亜種として楽しめたし。
    まあ、主要人物がちょっとあっさり死に過ぎですけど。

  • 探偵の大塒、大塒のもとで助手として働くりり子、りり子はすごぶる優秀な助手であった。そのりり子が事務所を休み渡米、帰国日を過ぎても戻らず大塒はりり子の周辺を洗い、あるカルト集団に行きつき、たどり着いたのは奇蹟の楽園ジョーデンタウン…。そこでは、病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る…それは事実か??ジョーデンタウンでは人々が不可解な死を遂げる事件が発生した…。

    以前「謎の館へようこそ 黒 」の中で白井智之さんの作品も読んだことがあったけれど、正直あまり好きになれそうもないなって思っていました。だけど、この作品の評価がすごくよかったこととか、気になって…そしたら運よく図書館ですんなり借りることができました!すごくスケールの大きなストーリーとカルト集団ならではの事件の背景…怒涛の推理ショーも読み応えありました!なんで、今まで苦手意識あったんだろ??私(^-^;。ラストは思ってもなかった展開で…スゴイっ!!「名探偵のはらわた」も読んでみたいと切に思いました。私はこの作品、好きです(#^^#)

  •  白井智之さん、初読でした。
     本書の読了感想は、緻密に考え抜かれ、畳み掛けるような推理劇に「凄い!」の一言に尽きます。

     人・立場・視点が変わると、事象や世界の見え方がこうも変わるものでしょうか? 理詰めの思考で推理を展開し、終わったと思ったら、そこから続くどんでん返し! 「疲れた」という気持ちと「え、次はどうなる」という期待の連続で、(よい意味で)どっと疲れました。
     カルト集団における「奇蹟」を信じる人々と、「現実」を生きる人々との認識の相違が、多くの伏線と回収の仕方の違いによる多重解決を、複雑にかつ面白くさせているのでしょう。
     人がたくさん死ぬのですが、心理描写の妙からか、あまりドロドロ感がなく読めるのもいいです。
     面白いと言いながら、私たちが暮らす現実世界にも、正義の違い、洗脳などがあり、恐ろしさを感じる側面もありました。

     探偵・大塒のみならず、読者諸氏にも「りり子崇拝」が広がったりして‥。(それこそカルトか!)
     いやはや、内容と構造、最後に明かされるタイトルの意味など、計算し尽くされた作品で、恐れ入りました!

  • もう最高におもしろい!!
    好き───ヽ(*゚∀゚*)ノ───っ!!!!♡♡♡

    10選入りの予感♡


    まず、皆が気になる点としては、白井先生の著作『名探偵のはらわた』を読まないと内容が分からないんじゃないか?という疑問。

    タイトルが共通しているので、気になる所ですね。
    答えはNoです。
    『名探偵のいけにえ』単品でも大丈夫。

    ただ、2作に共通するワードはいくつか出てきます。
    (本編に影響ありません)
    ファンサービスなのでしょうか。
    色んな作家さん、やってますよね。
    こーゆーの大好きです。(〃´-`〃)
    共通点を探しながら読むのも楽しみのひとつです。


    そして本編。

    この小説、◯◯が最高!!

    私の好きな小説の傾向として、◯◯はポイント高めです♡⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅   )⁝

    (グロじゃないよ。グロも好きだけど^ ^)


    『いけにえ』のタイトルにふさわしくカルト教団モノのお話なのですが、信者達の心理や集団心理における物理的な影響も含まれていて、推理の材料になります。

    自らの推理を否定し推理を重ねるいわゆる『多重解決推理』が読者の頭の中を混乱させ、捲し立て、トリックに引っかけます。

    『虚無への供物』も多重推理ですが、複数人というよりむしろ単独で否定しにかかる刀城言耶のような感じ。

    白井智之さんはパズラーと言われるだけあって、あちらこちらに伏線をばら撒きます。
    それが何気ないひとことだったり(敢えて)紛らせて書かれていたり…。
    メモは必須なのです!!


    何より白井作品の最大の魅力である『エログロ』!
    ………こちら、残念ながら、かな〜り控えめであります(´・ω・`)

    ただ、そんな事はものともしない面白さ!
    むしろグロ少なめで、苦手だった方も手に取りやすい一冊となっております!
    (『名探偵のはらわた』もグロ少なめだよ)


    にしても、白石先生の毎回キュン( ´͈ ᵕ `͈ )♡とする『表現』は健在。



    ーーーーー

    階段の下に汁っぽいげぼがあった。
    (本文より)

    ーーーーー

    『吐瀉物』でも『嘔吐物』でもなく『げぼ』ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)




    ーーーーー

     乃木がボストンバッグから便座の形のクッションを取り出し、首の裏に挟む。(本文より)

    ーーーーー

    『便座型』!!!笑




    ーーーーー

    白子の天ぷらみたいな雲を眺めていると、〜
    (本文より)

    ーーーーー

    『白子の天ぷら』!!!ゞ(≧ε≦*)




    朝井リョウさんの表現が美しいと常日頃思っていた私。
    初めて読んだ白井作品にはかなりの衝撃を受けました。笑笑

    すっかり虜です。ゾッコンです。
    (同じ事を飴村行作品や平山夢明作品にも言えます)


    色んな視点で楽しませてくれる白井作品、是非色んな人に読んで頂きたい!



    おススメです( ᵕᴗᵕ )♡

  • 融合が面白い一冊。

    舞台は宗教団体が営む、病気も四肢喪失もへのかっぱ、プラス思考の奇蹟の楽園ジョーデンタウン。

    そこで起きた不審死の謎を探偵が解き明かすミステリ。

    素晴らしい。
    初読み作家さんに416ページ、時間を奪われ魅せられまくった。

    やたらと、げぼが出てくるのも伊達じゃない。
    だってこちらまで吐きそうなぐらいの推理の連続、休憩を入れたくても入れさせないたたみかけ、二転三転、密林の斜面を転がり落ちそうな面白さなんだもの。

    現実、奇蹟、ねじれ、人の心理を余すことなく融合させ、とどめの一撃を刺された圧巻の面白さに拍手。

    • まことさん
      くるたんさん。こんにちは♪

      これ、今、図書館に予約待ち3人目です。
      順調にいけばちょうど、春になるころ、読めると思います。
      星5つなんです...
      くるたんさん。こんにちは♪

      これ、今、図書館に予約待ち3人目です。
      順調にいけばちょうど、春になるころ、読めると思います。
      星5つなんですね。
      楽しみです。
      2023/02/24
    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪

      わ、もうすぐ共読が楽しみです¨̮♡

      これは想像以上に面白く本格ミステリなるものを楽しめました(*^^*)
      終盤...
      まことさん♪こんにちは♪

      わ、もうすぐ共読が楽しみです¨̮♡

      これは想像以上に面白く本格ミステリなるものを楽しめました(*^^*)
      終盤は特に止まらない展開ですよ♪お楽しみに(*^^*)
      2023/02/24
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著者プロフィール

1990年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。『人間の顔は食べづらい』が第34回横溝正史ミステリ大賞の最終候補作となり、同作で2014年にデビュー。『東京結合人間』が第69回日本推理作家協会賞候補、『おやすみ人面瘡』が第17回本格ミステリ大賞候補となる。『名探偵のはらわた』は「2021本格ミステリ・ベスト10」で第3位。他の著作に『少女を殺す100の方法』『お前の彼女は二階で茹で死に』『そして誰も死ななかった』『ミステリー・オーバードーズ』『死体の汁を啜れ』がある。衝撃的な作品で読者の度肝を抜く、気鋭の本格ミステリ作家。

「2022年 『お前の彼女は二階で茹で死に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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