神曲

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103542810

作品紹介・あらすじ

神の正体を、知っていますか。天国も地獄も、すべてこの世界にある。小鳥店を営む檀野家の平穏な日常は、突然終わりを告げた。息子が通り魔事件で刺殺され、犯人は自殺。地獄に突き落とされた父、母、姉の三人が、悲しみと怒りを抱えながらも足搔き、辿り着いた先にあるものとは。次々に明かされる家族の秘密、ラスト20ページの戦慄、そして驚嘆の終曲。震えるほどの感動が待つ、著者渾身の飛躍作。

感想・レビュー・書評

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  • この作品は通り魔事件によって、小学生の息子奏汰を突然亡くした母の響子、父の三知男、義理の姉の花音がカルト教団「永遠(とわ)の声」に入信する話です。

    宗教って何なのかなあと思いました。
    響子にとっては信仰は息子の奏汰に再会する場だと信じ込んだので、花音や三知男を誘った訳ですが。
    三知男は妻の為に入信。
    花音も義理の母の愛情を得るために入信。

    最後に事件が起こって一家の再生となるようです。


    永遠の声は明らかにカルトみたいだけれど、カルトには入らない方がいいという認識が一般常識としてありますよね。
    響子は全く信仰に疑いがなく弱みに付け込まれて入信しています。


    カルトと普通の仏教やキリスト教などの宗教って規模や歴史以外にやっぱり全く違うんでしょうね。
    カルトは何か怖いところというイメージです。

    でもカルトに入っているから人間的に劣っていて、仏教やキリスト教だから上ということは全くないような気がします。ただ騙されているということは大いにあると思いますが。

    私は、高校がカトリックだったので、朝夕、お祈りは3年間強制的にやっていましたがその時も今も何も信仰は持ったことがありません。

    私の友人に敬虔なカトリックの方がいますが、友人の御主人はなんと仏教の僧侶のお仕事をしています。
    友人は結婚後にあえて仏教ではなくカトリックに入信しました。

    友人曰く「信仰とは生きることが楽になること」だそうです。
    友人はご主人に色々と哲学的な話を訊くのがとても面白いと言ってもいます。
    二人は私の目からみても(Facebookでやりとりをしています)とても仲がよくてラブラブです。

    人間にとって信仰というのはない人には何もないし、又ある人にはいくら話しても果てがないもののような気がします。

  • 幼い子供を無差別な通り魔犯に殺され
    その傷が癒えぬまま新興宗教にハマっていく家族の物語…

    自分自身は宗教には全く興味がなく、
    宗教にハマっていく感覚はわからないんだけど
    この家族みたいにどうしようもない絶望に陥った時
    心の救いを求める為か現実逃避の手段かわからないけど、少なからず状況によっては宗教にハマってしまう事もあるのだろうと考えさせられた

    二十歳くらいの頃、急に中学の同級生の女の子(そこそこ可愛い)から電話があって、話したいことがあるから会いたいという事で、ドキドキしながら会いに行ったら、キリスト教系の新興宗教の勧誘でした!
    俺は歴史が好きで宗教に関してもそこそこ詳しかったので、完全論破でねじ伏せてやりました…笑
    関係ない話ですみませんでした!

    この物語で唯一共感できたのが、ほぼ最後
    色々あった家族の会話なのですが、
    「神のみぞ知るってなによそれ?
    良いことは神のご加護、悪いことは神の試練。
    事勿れもいい加減にしてよ。
    私たちがどんなに苦しんでいても見て見ぬふりで、
    何にもしてくれないくせに」

    「ほんまそうやなぁ…
    神様ちゅうのは酷いやっちゃ」

    本当にそう思います。
    虐待されて殺される子供
    暴走老人に轢き殺される母と子
    1日何回も祈りを捧げる人たちの国の貧しさや
    爆弾テロ
    何の罪もないウクライナの子供達…

    神様はいつ救ってくれるのでしょうか

    宗教に入る、祈りを捧げる、修行をする
    お布施を納める、布教活動
    そんな事をしてる人のみを救うのか
    エコ贔屓の権化か神ってのは…

    この世界に神様はいないと思います。
    いるのは悪魔だけ…

    全く救いようのないオチですみません

    2000年前には本当に人々にとって必要だったんだし
    預言者も奇跡の人も蓮華の上の人も
    実際神ってたんでしょう!
    でも、もう2000年もたってるんだから
    もう、だいぶ希釈されてご利益も薄まってるでしょうよ…
    人類はそろそろ新しい考えで生きていくべきじゃないかな
    たぶん、こーゆー考えは日本人みたいに宗教が曖昧で
    生活に根付いてないからなのかもしれないですね

  • 宗教は、身近なものであるような、そうでないような。

    日常、窮地に立たされたとき、必死に祈る自分がいます。そんなときだけであることを情けなくも思います。歳を重ねるにつれて、何かにすがりたいという気持ちは増してきました。

    信仰により、心を落ち着き平穏になるのであれば、それはとても大事なものであると思います。
    2021,12/25-26

  • 隼太郎がエルサレムで見た神様の”正体”。
    世の中にあふれるフェイク動画。
    結局人は各々信じたいものを信じていて、祈りには終わりがないということなのかな。

    人は自分を助けてくれた存在を神と崇める。自分の都合の良いように物事を信じる。
    鳥が自分に餌をくれる存在を親だと思うのと同じように。

    新興宗教の話だったけど、不思議と嫌な気持ちなく読めた。

    絶望の淵に立ったとき、人は何を信じて何に縋るのか、という話だと序盤は思っていたけど、なんだかいろいろな信仰の話に飛び火していてまとまりのなかった印象。

    父の三知男。母の響子。娘の花音の視点で描かれる。
    花音の視点に共感。
    子供はいつも親の犠牲になる。親の身勝手にいつも振り回される。
    信じられないものを信じさせようとする。自分本位に。最後は少し、わだかまりが溶けたという認識でいいのかな。


  • 神曲/川村元気

    父 檀野三知男
    母 檀野響子
    娘 檀野花音

    三遍

    弟の奏汰の死をきっかけに崩れていく家族。
    何が神なのか、それぞれの心を覗き
    家族の姿を問うた話。


    響いた言葉
    ・好きなものより、
    苦手なものが一緒って方が信用できる

    ・苦手なものはなかなか変わらない、
    でも、好きなものはすぐ変わってしまうから



  • とっても期待してた新刊だったのだけれど、私は前作が好きかな。
    あとなにかを信じること、「信仰」そのものを否定したくはない。騙されても、それが嘘でも、信じ続けていればそれは救いになるのだと思う。
    でも今の私にはなにかを信じることはとても怖いし、難しい。今後のことはわからない。

  • 本のテーマとしてはいいかもしれないが、好みではない。やはり信仰宗教系は苦手だ。読んでいてきみ悪い。
    ただ、目の前で息子を殺され、その日たまたま夫に頼んだ送迎で息子を失った母の気持ちには多少なり寄り添える。だがそこから怪しげな永遠の声、永遠様を信じるか、というとそうはならない。
    最後の20ページが1番現実的なのかもしれない。

  • 最近、新興宗教というのか、一つの信条を共にするコミュニティと、その中にいる一つの家族の物語を、よく読んでいるような気がする。

    信じることの内部的な一体感と、しかし、それを外側から見つめてみると、グロテスクだという図式も多い。
    でも、安直に、この図式に当てはめて、分かったように済ませられないのは、人ひとりにとっての〝救い〟というテーマの、今日的な意味合いの大きさがあるからかもしれない。

    以下、ややネタバレ含みます。注意。





    この作品は、息子が殺された後、崩壊してしまった家族の視点で、章立てがされ、進んでいく。
    そして、加害者と被害者と加害者家族と被害者家族がそれぞれ入り混じって、苦しんでいく。

    お互いに「何を考えているか分からない」という不安と恐怖の中で、しかし、皆があの日の理想的な「家族」に戻りたいと願って、贖罪する。
    良い行いを詰めば、理想は達成されるはずだ。
    そう真摯に願うほど、当事者同士の心の中は見えなくなって、行為だけが純化されていく。

    そこで、バックグラウンドに響く、歌、だ。

    作中では、家族が営む小鳥屋をはじめ、夫が参加する、犯罪被害者遺族の会合場所のカラオケボックスや、妻がのめり込む永遠様の合唱曲などに、意味が持たされていると思う。

    声と調和は、理想の体現なのだろう。
    美しい声を持つ鳥は、人の願いを叶える魔力を持つし、関西弁しか話せない鳥は、なかなか売れないように。

    けれど、関西弁しか話せない鳥だって、生きていて、守るべきものがあって、苦しんでいるのだ。
    結局、家族が「何を求めていたか」を知るためには、歌ではなく、言葉が必要だったということか。
    汚くても、辿々しくても、言葉を交わすこと。
    簡単には言い切れないけれど。
    そんな風に感じた。

  • 「神とは何か?」という万人に共通の答えが出るはずもないことをテーマにしているので、ある程度は仕方がないのかなとは思うが、何かがありそうな雰囲気だけで、特に何もなかったように思う。

    全てが綺麗めに格好つけて表現されていて、時々白けてしまった。この作家さんは初だったのでわからないけれど、いつもこうナルシスティックなのだろうか?

    答えのないことでも、何かしらのその人なりの答えを探し求め熟考すること自体には惹かれる。作家さんが本を出してまでその考察を表現するのだから、そこはその作家さんの肝を見せることになるのだろう。その、挑む姿勢はすごいと思った。

    この作家さんの初めての1冊がこの本でなかった方が良かったかもしれないと少し後悔した。

  • とても読みやすかったのですが本の帯に期待し過ぎた感があります。

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著者プロフィール

かわむら・げんき
1979年、横浜生まれ。
上智大学新聞学科卒業後、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『君の名は。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、’11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。’12年に初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞にノミネートされ、佐藤健主演で映画化、小野大輔主演でオーディオブック化された。2作目の小説にあたる本作品『億男』も本屋対象にノミネートされ、佐藤健、高橋一生出演で映画化、’18年10月公開予定。他の作品にアートディレクター・佐野研二郎との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬものがたり』、イラストレーター・益子悠紀と共著の絵本『ムーム』、イラストレーター・サカモトリョウと共著の絵本『パティシエのモンスター』、対談集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』。最新小説は『四月になれば彼女は』。


「2018年 『億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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