ゆうじょこう

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104041046

感想・レビュー・書評

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  • 実在した遊郭で実際に起こった遊女たちのストライキを題材にした小説。まずは遊郭がどんなところなのか、知らないことだらけでびっくり。そして、花魁の東雲さん、紫さん、女紅場の鐡子先生、新入りのイチ。それぞれみんなかっこいい。
    誇り高く娼妓という仕事に従事しながらも、遊郭を去るとき楼主から「花魁。わしはお前さんに何か悪さをしたか」 と問われ、「それでもお前様は、人を売り買いしなさんした」 と答えた東雲さんに、女の矜持みたいなものを感じました。うん、かっこいい。(女の矜持がなんなのかは、わたしにゃよく分からんけど。)
    遊郭というものを鋭く観察するイチの日記と、それを読む元娼妓であり手習いの先生である鐡子先生、この二人の心の交流がすごくいい。ここに東雲さんの思いが絡まって、どんな結末を迎えるのか、ドキドキ読めました。

  • 遊廓に売られてきたイチのお話。

    遊廓って独特の世界があって、すごく興味があったから読んでておもしろかった☆イチの方言とか、昔の言い回しとか、読みにくい時あったけども思ったよりスラスラ読めた。

  • 明治後期の遊郭のはなし。
    南の今島から来た“青井イチ”そこで、『女紅場』で文字を習い日記を書く。
    方言で書かれている日記には飾らない素直な気持ちや折れない強さがある。
    逃れられない辛い世界のはずだが彼女の面倒を見てくれる東雲太夫、女紅場の鐡子先生達の暖かさに囲まれ、心身ともに成長していくイチの姿に明るさを感じて読むことができた。

    遊郭「東雲楼」は実在していて、娼妓たちのストライキ事件があった事で知られる。そこを舞台に描かれた小説。
    福沢諭吉について、見方が変わってしまう気がするので、彼についてもう1度勉強したい。

  • 熊本の廓での物語
    海女だった幼いイチが一人前の娼妓となっていくが
    まわりの女たちの悲哀も描かれ

    しきこさんがかたる福沢諭吉の「貧富智愚の説」についての解釈もなるほどなぁ、と
    腹がたつわなぁ、と

    最終章ははらはら見まもりました

    イチの日記、島ことばで勢いがあって読むのが楽しかったです

  • ~硫黄島から熊本の廓に売られてきた海女の娘イチ~
    鹿児島訛りで字も書けないイチが
    周りの人から教えられ支えられて苦界を生き抜いて行く。
    「貧乏家にはお金を吸い込む真っ暗な穴がある」
    そんな中でも自分を見失う事の無い娼妓たちに救われる思い。

  • 遊女としての苦しみや悩みも描かれているのに、あまり悲愴感を覚えないのは、潮の香りがするイチが最後までバネのような心をもっていたせいだろうか。方言で書かれる日記も素朴な中に芯のようなものが見えて楽しい。あまり色気はないし、ラストもあっけないといえばあっけないが、こういう廓の話もまた一興だ。

  • なかなか面白かった。実際に明治33年にあった東雲楼のストライキが題材になっていることは、読み終えてから知った。イチという硫黄島から売られて来た少女が主人公ではあるが、私は花魁の東雲と元遊女で「女紅場」の師匠を務める鐡子が好きだ。
    TVドラマ「jin」の花魁「野風」みたい。かっこいい!
    福沢諭吉のことは以前読んだ小熊英二さんの「日本という国」の中にも書かれていた。「学問のすすめ」は「天は人の上に人を造らず」の後に続く文章が福沢諭吉の本当の考えだってことを。
    読書ってこうやって以前読んだ本や次に読みたい本に繋がって行くところが本当に楽しい。

  • 「こう」という名の遊女の話ではない。「ゆうじょこう」は「遊女考」なのだが、それはまた「遊女行」であり、あるいは「遊女稿」でもあるのかもしれない。
    南海の絶島から15歳で売られてきた少女の、成長物語、なんだろうな。廓ものと呼ぶには艶が足りないというか健康的で、島の言葉で綴られる彼女の日常は微笑ましくさえある。ラストに至る展開もわりと淡泊なので、残り少ないページで本当に終わるのかと、妙なスリルまで感じることができた。
    直接登場するわけではないものの、福沢諭吉が批判的に語られているので、諭吉ファン(これは違う意味になるな)はちょっとムッとするかも……。

  • 遊廓の日常とイチの日記。淡々とほとんどイチの感情のブレがないので穏やかな気持ちで読了。女の世界なのに嫉妬も意地悪もなく花魁も頼もしい存在。
    イチの目を通してみる遊廓の世界は全然参考にもどんな暮らしをしていたかも分からないが不幸さは感じられなかった。

  • 道理のないことをするのは親である。その子に道理を説くなっち!

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著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村田喜代子の作品

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