巡礼

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104061112

感想・レビュー・書評

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  • 第一章、第二章は少々日常過ぎて普通過ぎて退屈。しかし第三章であっけなくもあるがこういう結末かと納得させられる。

  • ・次の朝、修次が目を覚ますと、隣の布団の中で、兄はそのまま死んでいた。その表情はなにも語らず、ただそのままになっていた。

    ・死んだことに驚きながら、修次は「兄貴にすれば、生きようとすること自体がつらかったのかもしれない」と思った。兄が死んだことをまず認めてしまった修次は、その冷静さ図々しくも思って、試すように兄の体に手を掛けた。「兄貴!」と揺すって命を呼び戻そうとしたが、忠市は冷たくなって答えなかった。「答える」ということから自由になった体は、固く、ぎこちなく揺れるだけだった。
    「自分はもう、ずいぶん昔から、ただ意味もなく歩き回っていたのかもしれない」と思った時、忠市の体は、深い穴に呑まれるようにしてすっと消えた。「生きる」ということの意味を探るため、弟と共に歩き始め、「自分がなにをしている」とも理解しなかった忠市は、自分が巡るあてのない場所を巡り歩いていたと理解した時、仏の胸の中に吸い込まれて行った。拒まれるのではなく、招かれることを素直に受け入れて、「会いたい人に会いたい」と思いながら、どことも知れぬ虚空に吸い込まれて行った。
    修次は、暗い闇の中にいた自分の兄が、金色の仏と夜の中で出会ったのだと思った。そのように思いたかったー。

  • 生きようとすること自体がつらかったのかもしれない

  • 2013.1.9読了。

    自分が何をしようとしているのかが分かっている人間は、一体どれほどいるだろう。

  • 感覚としては重松清の疾走に近いかな。序盤の流れが重くて結構読むのがきつかったです。

  • よくわからない小説なんだ、これが。いや、本当いうとわかりやすすぎるくらいなんだけど、作者の意図みたいのを考えるとよくわからない。作者の視点というか、何を大事に思っているのかとか。

    ゴミ屋敷をとりまく住人たちの不満、なにもしない行政、興味本位のテレビのリポーター。まず思ったのは、フィクションの質感があまり感じられないということ。ここで言うフィクションとは「現実にはありえなかったり、多少大袈裟かもしれないけど、こう書いたほうが本当っぽく見える」もののこと。
    ここには在るものをありのまま書いてる、「ウソをついてない」質感があって、派手ではないけど、かえって実にしっかりと細部まで描かれている。読みながらに不毛さを感じるくらい…それは徹底している。

    ゴミ屋敷の主、下山忠市がなぜゴミを集めるようになったのか? その「なぜ」には確たる答えが出されない。忠市が家を出て住み込みで働き、嫁をもらったが出て行ってしまい……
    「確たる答え」がないのは、そもそも人生に「確たる答え」など見いだせないからだ。なんとなく各々が各々の理由づけで満足するほかない。

    でもってなんで「巡礼」なのか? このラストだけはちょっと気にいらなかった。ただ忠市の弟によってゴミ屋敷の二階の大戸が開かれて、それを見ていた吉田家の母と娘が固唾をのむところは、なんでかびっくりするくらい感動的だった。吉田娘の「普通の人だ――」「ママ、あれ、普通の人だよ」という嘆息はなんなんだろう? ここに何かある気がするんだが。

    ゴミを捨てられて「ここはゴミ捨て場じゃねェぞ!」と言いながら、ゴミを家へ持ち帰ってしまう忠市の姿があなおかし。

  • 劇的な不幸より幸せのない空しさが鬱になる。

  • 読後感は決していいものではなかった。ただ、色々考えさせられたのは確かである。そういう意味では読んでよかったと思う。
    喪失感・・・人生においてほんとにこれは厄介なものだ。

  • 良かったです。 西国行きくなりました。

  • ゴミ屋敷かぁ。
    なぜにゴミを溜め込んでしまうのだろうか?
    と思ってしまう。
    実は、満たされない何かをゴミで埋めているのかもしれない。

著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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