- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104444069
作品紹介・あらすじ
漱石の未確認原稿発掘で話題沸騰! 日本人作家がロシア人学生に語りだす、20世紀初頭を生きた「暗殺者」たちの真実。安重根による伊藤博文暗殺。大逆事件で処刑された幸徳秋水、管野須賀子、大石誠之助。生きのびた荒畑寒村……。日本近代史のなかの人々が、いまそこに生きている人として語りなおされ、歴史の記述にはおさまらないいきいきとしたポルトレとして浮かびあがってくる。小説ならではの達成として動乱の時代を語る画期的な長篇。
感想・レビュー・書評
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夏目漱石の、全集にも収録されていないエッセイをネタ元に、ロシアの日本語学科学生に講義するという設定が斬新。
伊藤博文を暗殺された者としてだけでなく、暗殺した側としても捉えているのが面白い。
どこまでが史実でどこまでがフィクションなのかもよく分からず、一番ページが裂かれているのが伊藤でも、伊藤を暗殺した韓国の英雄である安重根でもなく、幸徳秋水と愛人の管野スガ、そしてスガを奪われた荒畑寒村であるところも独特である。
エンディングも収まりがはっきりせず投げ出された感じなのだが、少なくとも、180ページの本を数時間で読んでしまったので、これは面白い小説だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初めて読んだ黒川氏の著作。
夏目漱石が満洲日日新聞に投稿した記事や彼の著作『門』の記述から、安重根による伊藤博文の暗殺事件や大逆事件が語られていく。大学での講義の体裁をとった作品で、話が脱線し広がっていくのもこの小説の魅力だ。 -
文学
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ふむ
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漱石の実際の未発表文“韓満所感”をもとにロシアの大学で明治期の暗殺者たちとその周辺にいた人々について講義する、という架空の講演形式で物語が進む。
伊藤博文、安重根、明治期の社会主義運動家、漱石にドストエフスキー。様々な人が散りばめられているが、“韓満所感”を掘り下げるでもなく、点と点を結ぶわけでもない。興味深いエピソードがあるしトリビア的な知識も得られるが、物語るという点では勢いがない。
講演記録の形にした意図も不明確でよく分からず。暗殺者と本当に呼べる人は伊藤博文と安重根しかいなかったというのも、伝わりにくい。
面白い小話が多いのにまとまりもなく、う―ん。 -
黒川創『暗殺者たち』新潮社、読了。安重根の伊藤博文暗殺から大逆事件に至るまで、当時の思想家群像を描き出す長編小説。ロシアの大学での講演「ドストエフスキーと大逆事件」という体裁で、当時の人間群像を生き生きと描く。学者が見落としがちなエピソードを拾い上げ、時代の雰囲気の描写がリアル。
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独特の構成。
これだけでもこの本を読んだかいがある位、なかなか珍しいと思うし、かつ、成功している。
現実を苦々しく見るだけで受け入れるしか手が無い大多数の人間の象徴として漱石という日本を代表する知識人の動向を基底におきつつ、現実を能動的に変えようとする暗殺者達の協奏、特に伊藤と安の同質性が上手く描かれている。
またこういう結末、村上春樹的に言えば読者に委ねられた開放的な構成は当方好み。
つまるところ読み応え十分の作品かと。