東京番外地

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104662029

感想・レビュー・書評

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  • 品川と場って知らなかった。呼称が安定してない場所は、直視するためらいが感じられる、みたいな文章が心に残った。牛の眉間に一メートルのワイヤーを入れるあたりの記述はショッキングだった。「いのちの食べかた」、読んでみよう。

  • 東京近郊のスポットを無目的に歩きながら、思い出したり触発されたこと
    場の記憶に感応したことなどを随筆風に綴る一冊。

    森達也氏の著作でなかったら、『東京番外地』という名の本など
    手に取らなかっただろうと思う。
    タイトルからは「とりあえず避けておきたい場所」、
    「見ないですませておきたい場所」の現状をまざまざと
    見せつけられるような、そんなちょっとこわいイメージを持つ。


    拘置所や新宿の繁華街、裁判所、入国管理局・・・
    著者は様々なところを訪れ、その場所で喚起された心情を吐露する。

    なんとなく負のイメージを抱く場所だ。
    だけどページをめくってみれば、そこにいるのは私たちと同じ人間だった。
    私たちが生活しているこの世界と地続きで繋がっている場所だった。
    何も特別視することはない。無駄に怖がることもない場所だった。


    知らない場所はこわい。こわいから見ないようにする。
    見ないから知ることが出来ない。
    知ることができないから、先入観でそれを捉え
    異物と判断したら即排除するようになる。
    それをほぼ無意識に自然に行っている。

    周りに流されやすい性質の私でも、この感覚の鈍さはヤバイよなと思う。
    思考停止することの怖さを改めて感じるし、
    それを教えてくれる森達也の本が私は好きだ。

  • 一般の人が滅多に訪れない、でも都市機能に組み込まれている場所のレポートという本。例えば拘置所。裁判所。ドヤ街など。

    まあまあ面白い。でもレポートの場所が面白いのであって、著者の視点や考え方が面白い本ではない。そこはかとなく著者のタブー(?)を紹介しているという優越感を感じ、チョットしらける。

  • 東京の中で「普通の人が何となく忌避してしまうところや、近すぎて焦点距離が合わなくなってしまったようなところ」15か所(拘置所・皇居・屠殺場・ドヤ街など)についてのドキュメンタリー的な本。
    写真が少なすぎるのが残念。

  • 「知られたくないから」と隠されていることを理由に「知らないまま」でいてはならない。少なくとも、わたしは知りたい。

  • 拘置所、東京タワー、山谷、入管局、中央卸売市場、歌舞伎町、精神病院…
    東京にある日常的非日常スポットを森達也が巡り、それぞれの場所が抱える複雑な歴史、そして実際に訪れた時の体験を記していく。
    そこに常にあるにも関わらず、人々が無意識に目を伏せている場所について取り上げた良作。

    非日常といえば、森達也の著書にはいつも非日常を感じる。
    独り言のように書かれた文章を読み進めていくにつれ、彼の白昼夢に取り込まれたような気分になってくる。
    例えば、この本に出てくる編集者は実は存在しないのかもしれない。
    いや、もしかしたら森達也という人間すら…。
    という思いにかられる。
    しかし、その一方で彼があぶり出す社会の歪みは、厳然と現実感をもって心に残るのだ。

    逡巡し続け、「わからない」と呟き続ける森達也には、ときにイライラさせられる。
    暗くて深い穴の底で何もせず、困りながら呆然としているだけの人のようだ。
    しかし、本当はわからないことをわかったものとして、うやむやに切り捨てていくよりずっと良い。

    ただただ繊細に臆病に、「わからない」点を指摘し続ける彼の姿勢が、私はとても好きだ。

  • マスメディアではあまり取り上げられないような
    身近な場所の裏側を紹介したり、
    アングラな場所などを訪れている。
    場所によってはちゃんとした手続が必要だったりする。

  • まず最初に、どのカテゴリに該当するか迷った。
    ノンフィクションと言うには大袈裟なような気がし、
    紀行というほどライトではないと思ったからだ。

    著者が東京の色々な場所を訪れ、
    その地に滞留する空気や、その奥にあるものなどを独自の視点で綴っている。
    その内容が他の紀行と異なり、
    ノンフィクションの要素が加わっていると感じたのである。

    最初に著者を知ったのは、ドキュメンタリー映画「A」である。
    オウム真理教の信者の日常を追ったものだ。
    この映画で、物事を一面的に捉える危険性を改めて感じた。

    映画、本いずれも、
    重要な問題提起をしているのだが、
    彼の意図することや伝えたいことを受け手に委ねているのが、
    彼の手法であり特徴であると思う。
    特に、映画「A」では個人的感情は排除し、
    淡々と事実をカメラに収めている
    (穿った見方をすれば、それが演出なのかもしれないが)。
    本書でも、彼自身の考えや思いを述べているものの、
    そこに強引な押しつけはない。

    本文の
    「世の中には、考えてもわからないことはたくさんある。
    結論がどうしても見つからないこともたくさんある」
    と言う彼の言葉にもそれは表れているのではないだろうか。
    それは、諦めではない。
    その考えを前提に物事を捉えると、
    より大きな視野、より大きな心を持て、
    現実だけではなく、その裏にある真理に思い至るのではないか。

    以上の感想は、いささか大袈裟な感はあるが、
    ためになる本ではあると思う。
    凝り固まった「自分の中の常識や無意識」を多少なりとも
    ほぐしてくれるそんな一冊だ。

  • この中から面白そうな場所を選んで、実際に東京番外地ツアーを決行しました。


  • 「波」連載をまとめた単行本。東京の異空間を彷徨い歩く。スポット選別がまたいい。”東京拘置所””浅草身元不明相談所””新宿歌舞伎町風俗街”等。一歩深く踏み入って悶々と考える。ボソボソと語るような文が私には心地イイ。同行者・土屋との何気ないやり取りも面白い。

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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