- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900441
感想・レビュー・書評
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初レンツ本です。クレスト・ブックスで翻訳が独文の松永さんといえば、もうそれだけで信頼してしまいます(笑)。装丁も素敵で、ただ飾っておくだけでもいい(笑)。
鉄道会社の遺失物管理所(「忘れ物センター」よりもごつくていい響きです)に仕事を得たヘンリーと、その同僚たちの物語です。題名からは窓際職場の重い空気の作品を想像したりもしましたが、ぱらぱらっとめくった他のレンツ作品よりも軽やかな作品だと思います。主人公のヘンリーは天然キャラの、明るい雰囲気を持った青年。自分の将来などはあんまり深刻に考えていないようでもあるけれど、日々きちんと仕事をこなしています。でも、それは他の同僚の「きちんとやる」とはちょっと外れたところなんですけど…軽やかに楽しそうです。ダンナがいる同僚の女性(もちろん年上だ)に「好きです」とか直球で言ってみたり。私の中のゲルマン民族とはちょっと遠いキャラクター造形のラブリーさで、思わずくすくす笑ってしまいます。
もう一人、遺失物のつながりでヘンリーと友人づきあいをするようになるフェードルという数学者が登場しますが、彼のエピソードはきらきらしているようで幕切れがなんだか切ないです。隠れた悪意が表に出る瞬間の鋭さを感じてしまいます。
とらえどころのない群像劇のように話が進むので、ストロングな作風を好まれるかたにはいまひとつかもしれませんが、私はこの軽やかで、静けさを感じさせる作風も嫌いではないのでこの☆の数です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
題名がいい。新潮のクレストブックはどれも装丁がいいよなあ。その名の通り鉄道での忘れ物を管理している所で働いている青年が主人公。ちょっと予想してたのとは違った話だったけど、これはこれでよい。遺失物をめぐるミステリーみたいな感じかと思っていたのだが。どちらかというと人間関係、どう関わりあっていくかってとこか。丁寧な数学者の「刺さった矢は抜けるけど、言葉は永遠に突き刺さったままだ」という言葉が印象的。そんな言葉を二度と使わずにいられたらいいのだけれど。
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ドイツ鉄道のターミナル駅の遺失物管理所が舞台ということで、人間模様が交錯する様子がとても面白い。
ただし、物語全体としては面白かったけれど、主人公のヘンリーの無邪気すぎるがゆえの邪悪さに、神経を逆なでされるようだった。自分の周りにはいて欲しくない。 -
北ドイツの大きな駅の遺失物管理所に派遣された青年。様々な人間が様々な置物、忘れ物を訪ねにやってくる。街の有力者と縁続きのこの青年は生来のお坊っちゃんで、職務規定や服務規程を正しく理解せずに、訪ねてくる人達と常識はずれのかけあいをやらかす。口答えせず上司や同僚の言うこと聞けよ!と思いつつ、こういう幼いところ、自分にもまだ残っていて嫌になる。駅員さんの物語ではなく、遺失物管理所という設定がミソ。持ち主を特定するために、お客に対して唯一強い態度に出られる場所だから。そんな処にいたら、謙虚さなんて育たないよ。
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ドイツ連邦鉄道の忘れもの管理所。そこに新しく配属された
青年ヘンリーと彼の友人・同僚たちの物語。
劇的なストーリーはないけれど、忘れ物は様々な物語を生み出す。 -
主人公ヘンリー・ネフの造形が見事。
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「自己実現」や「自分探し」などという言葉の対極にあるような主人公の生き方が微笑ましい。遺失物に込められたエピソードも必見。
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くーっ。