戦後日本経済史 (新潮選書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106035968

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  • 戦後に、B円が流通することを阻止した。B円はごく一部と沖縄で流通した。
    銀行に対しては、集中排除法の適用がなく、銀行を中心にした企業グループが残った。
    アメリカの猟官制の弊害を排除するため、公務員の職階性、人事院設置などが採用された。
    シャウプ勧告で直接税中心の税体系を作った。戦前は間接税を中心とするもの。シャウプ勧告より前に、40年度税制改革で法人税親切、源泉税制度ができた=戦費調達のため。

    財政投融資はうまくできている。一般会計の負担がない。国会の承認なしに融資ができる。
    高度成長は、外需依存ではなく国内市場の拡大。
    比較優位があった繊維産業ではなく、重工業に力を入れた先見の明のおかげ。耐久消費財の需要は所得弾力性が高く、お互いを高める高度成長になりやすい。繊維や食品とは違う展開になる。
    戦前の世界企業は鐘ヶ淵紡績。戦後は政府の規制と保護によって鉄鋼自動車電機が成長した。

    安保闘争、バブル、郵政民営化、はいずれも根拠なき熱狂。
    労使協調路線は日本型企業の本質。戦後の経営者は内部昇進者であり、経営者と労働者が未分離、企業内組合。
    法人税課税の退職給与引当金と社宅の建設費によって、正社員を増やすことの促進が働いた。

    戦後は、額面発行が主だった。企業は銀行にたよった。
    株式会社は利益よりも拡大を求める組織になった。
    日本列島改造論が地価上昇の原因ではない。その前から工業化と都市化により上昇していた。

    田中角栄による2兆円減税。給与所得控除を大幅に増やした。社会福祉元年。
    予算書は、対数表の次に誤植が少ない書籍。

    欧米諸国では物価スライド条項を含む賃金協定が一般的=インフレなら自動的に賃金が上昇する。不況でも同じ。これがスタグフレーション。
    日本では、企業内組合のために、不況時に賃金上昇を抑えることができた。石油ショックの時にいち早く乗り切れた一因。
    田中角栄のときの道路整備特定財源制度と給与所得控除拡大は日本経済に大きな影響があった。

    戦時経済から始まった農地解放、財閥解体、借地借家法は資産家を直撃し、平等な社会づくりに寄与した。

  • 本書は、戦後の日本経済は戦時期に確立された経済制度の上に築かれた、とする歴史観を提示されている。戦時経済の中で、資金を軍需産業に集中させるために間接金融体制がとられた。終戦後、既得権益者の策略とアメリカの日本への無理解と中途半端な経済改革が、このシステムを生き残らさせた。これによって企業は資本の影響や市場の圧力から開放され(ある意味社会主義経済)、高度経済成長を担った。また、この統制力のあるシステムは石油ショックへの対応において優れたパフォーマンスを示し、このシステムの継続が助長された。一方で、1990年代以降の技術体系に本質的な変化(量から質)が生じ、このシステムは機能不全に陥った。依然、日本企業は閉鎖的であり、市場の要請が経営に影響を与えにくい状態が続いている。以上の認識を読者に示し、事の深刻さについて理解を求めているのが本書の意図。安易な解答は書かれず、冒頭に記載した歴史観を軸に事実を連ねられた良書だと思います。歴史を振り返りかえることによって日本人の典型的な思考体系を理解でき、新しい技術体系への適応について考えさせられる興味深い1冊。

  • 面白いし読みやすい。しかし、週刊誌連載と言う体面上、若干、面白さや読みやすさを優先した部分がある。そういった意味で★3っつ。内容としては、十分に読む価値もある。読みやすくて面白いのだから、興味があったらぜひ読んでいただきたい。

    参考までに、私の書いた要約
    http://d.hatena.ne.jp/keigossa/20111027/1319728523

  • 読みやすい。大学生におすすめ。

  • 戦後の日本経済は1940年代に作られた戦時統制体制のためだ。それがバブル崩壊後も変わらないため、日本の経済力は低下している。
    これからあたらしい技術をどう生かしていくのかが、日本経済復活のための課題だ。

  • 2008年5月購入

著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業。64年大蔵省入省。72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て2017年9月より早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター顧問。専攻はファイナンス理論、日本経済論。ベストセラー多数。Twitterアカウント:@yukionoguchi10

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