朝鮮総連 (新潮新書 68)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106100680

作品紹介・あらすじ

在日朝鮮人のために生まれた組織が、なぜ「北朝鮮・金日成親子の手先」へと変質していったのか-。組織結成の知られざる経緯、新国家建設・祖国望郷の思いを裏切った「帰還運動」、そして北朝鮮への送金のカラクリや、批判者に対する執拗な糾弾の実態、日本人拉致問題で暴かれたウソ…そのすべてがいま明かされる。かつて組織内に身を置いた著者が、痛恨と義憤の思いで綴った「もう一つの戦後史」。

感想・レビュー・書評

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  • 朝鮮総連と聞くと太平洋戦争に日本が敗戦し、当時大量に日本に連行され強制労働させられていた朝鮮人の解放目的で設立され、その後北朝鮮へ影の献金をし続ける闇組織といったイメージがある。正式名称「在日本朝鮮人総聯合会」は概ねその様な経緯を現在まで辿る。本書は朝鮮総連の成り立ちや、これまでの活動実態について、元総連に所属していた筆者が実態について明らかにしたものである。但し、筆者の考え方や思想が余りに過激な方向に向かってしまうと筆者の身の危険にも繋がりかねない為、あくまで事実の羅列に重きを置いて語られ、それに対する筆者の想いや判断は極力除外されている。よって朝鮮総連の歴史研究という見方をするのが適している。
    朝鮮総連は北朝鮮の機関であるから、当然ながら本国の影響を大きく受けるが、その思想は金日成の独裁を正当化するための理論である「主体(チュチェ)思想」をベースに置き活動している。そもそも北朝鮮が実態が判りづらい国であることから、当然総連自体が闇に包まれた「影の組織」的なイメージを持たれる事が多いが、実際には日本国内に暮らす在日朝鮮人の統制組織という側面が大きい様だ。
    本国はミサイル発射や核実験で多額の資金を必要とするから外貨獲得の手段の一つとして、日本国内に住む在日朝鮮人からの献金は重要だ。そうなると日本国内での朝鮮人の経済活動や教育が重要になる。よって朝銀が融資により資金援助し、その利益を本国に還元する構図がなければならない。そうした利益循環はバブルの時代の不動産業やその後のパチンコ業などでは一定の効果をもたらした物の、バブル崩壊と共に立ち行かなくなり、結局拉致被害者を人質とした身代金ビジネスも必要になる。北朝鮮との直接外交窓口を持たない日本では北朝鮮窓口としての存在にもなる。
    但しやはりそこは未熟な社会・組織と言わざるを得ないのか、金が絡めば権力の集中や裏金の存在、地位への固執が存在し、徐々に求心力を失っていくといった悪循環が過去にはあった様だ。何処の企業もそうだが(日本の企業でさえも)、本来の組織の目的から外れ、そして忘れ去られ個々人の利益追求に向かってしまうのは人間の弱さに加え、北朝鮮という未熟な社会の一端を表している様に思える。但し近年の同国の報道から見る発展の兆しも見逃せない。国民生活は相変わらず厳しいであろうが、いよいよ核兵器を保有し、宇宙にまで偵察衛星を飛ばすところまで来ている。その背景には恐らくはこうした総連の様な組織と資金力が支えになっているのではないかと思う。
    いずれにしても、北朝鮮の真の実態が見えない中で、相手にするのは難しい。こうした書籍から一つでも情報を手に入れ、北朝鮮という国を考えるための参考にするのは良いだろう。何より過去に日本が朝鮮半島併合により自分で蒔いた種である。そこから目が出て、敗戦という栄養で育った木から、いつしか食べたら毒になる真っ赤な実が日本海近辺に落ちている。そう考える事で、物騒な国だとただ決めつけるだけでなく、彼らと将来に向けてどの様に会話していくかヒントがある様に思える。

  • 読みやすくて面白い。
    帰還事業は日赤の罪かと思っていたが、政治的にスケープゴートにされたと知り、ちょっとごめん。

  • 【192冊目】東アジアを知ろうシリーズ・北朝鮮2冊目。やはり、北朝鮮と日本のかかわりを知るには朝鮮総連のことを知らないとダメだろうと考え、購入。
    Amazonのレビューでは日本に強制連行されてきた朝鮮人の数等をめぐって酷評されていたりもしたが、本書が学術的な研究書やジャーナリスティックなルポではなく、筆者が在日朝鮮人の一員であり、そうした教育を受けてきた人間の視点からの朝鮮総連についての考えを記したものだと思えば、そこまで目くじら立てるほどのものでもないのではないかと思う。
    かつては在日朝鮮人の権利擁護を理想として設立された朝鮮総連が、幹部の権力欲や金銭欲のためにそうした理想とは程遠い組織に成り下がってしまったことに対する批判の書。そこにはもちろん本国・北朝鮮の思惑が絡んでいて、本国の経済的な困窮に対処するため、様々な口実をつけて在日朝鮮人からの送金を促すということが行われた。帰還朝鮮人の在日家族に支援を求めたり、祖国の理想のためと言ってみたり…。
    個人的に、朝鮮総連は国交のない北朝鮮の大使館的な役割を担っていると考えていたが、筆者が全然違う見方をしてたことに驚いた。筆者は在日朝鮮人を守るための組織だととらえていて、そうしたことを無視してチュチェ思想の喧伝や祖国からの指令を実行する組織となってしまった朝鮮総連を嘆いていた。なるほど。成り立ちから言えば、金王朝のための組織とは必ずしも言えないのね。
    あと、朝鮮総連が在日朝鮮人を動員し、北朝鮮に批判的な記事を書いた週刊朝日や毎日新聞に対して抗議行動を行ったというエピソードがとても不気味だった。

  • 朝鮮総連の内幕を書いた本。かの国のゴタゴタぶりがよくわかる。こんな国に生まれなくて、本当よかった。

  •  元朝鮮総連側の人間であった筆者が執筆した、「何のために朝鮮総連が作られ、これまでに何が内部で発生し、今日に至った」のかを説明している本。
     あくまで筆者の視点から見た「組織の歴史」を綴っている本なので、拉致事件の目的や裏社会との繋がりの暴露を期待して読むと、物足りないと感じるかも知れない。とはいえ、この本を読んでおけば他書を読むときに役に立つ・・・かもしれない。

  • 総連がいかに変質してしまったか。
    設立当初の理想を失い、北朝鮮の集金マシーンとなってしまった経緯が書かれている。
    未知の世界に足を踏み入れることができた。
    多分興味のない人にとっては苦痛。

  •  日本ですっかり悪名高い存在になってしまった朝鮮総連。なぜ朝鮮総連は金親子に奉仕する組織に成り下がってしまったのかを検証する。
     総連もかつては貧しい在日の人のために活動していた時期があった。しかし、北朝鮮政府の思惑と内部紛争により、組織は徐々に変質してゆく。北朝鮮の実情を知りながら、「地上の楽園」として多くの在日の人を北朝鮮に送り込んだ罪、北朝鮮の経済を支えるために在日の人から様々な名目で搾取をした罪、日本社会との共生を目指す在日の人を裏切り者として理不尽に批判した罪、マスメディアに対して強硬な圧力をかけた罪等々、この本では総連の罪が次々に暴かれる。そして、在日の人に対する著者(著者自身も在日)の強い思い入れも感じられる。

  • [ 内容 ]
    在日朝鮮人のために生まれた組織が、なぜ「北朝鮮・金日成親子の手先」へと変質していったのか―。
    組織結成の知られざる経緯、新国家建設・祖国望郷の思いを裏切った「帰還運動」、そして北朝鮮への送金のカラクリや、批判者に対する執拗な糾弾の実態、日本人拉致問題で暴かれたウソ…そのすべてがいま明かされる。
    かつて組織内に身を置いた著者が、痛恨と義憤の思いで綴った「もう一つの戦後史」。

    [ 目次 ]
    プロローグ 壊れていく朝鮮総連
    1 戦後に誕生した朝鮮人団体
    2 朝鮮総連の結成
    3 朝鮮総連の変質―指令は万景峰号で
    4 韓国の瓦解をもくろむ秘密工作
    5 堕ちた総連、反在日的存在に
    6 批判者を集団で脅し圧力
    7 もはや在日の「未来」に背を向ける存在に
    エピローグ 日本人拉致批判の嵐の前に立ちすくむ―終わりの始まり

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    [ 参考となる書評 ]

  • 戦後すぐの混乱期の様子はこの本で初めて知った。

  • 平成20年2月6日読了

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