仏陀を買う

著者 : 近藤紘一

• 中央公論新社 (1986年8月1日発売)

感想・レビュー・書評

[ピヨピヨさんの感想 · 2009年12月24日]

第10回中央公論新人賞を受賞した、近藤さんの最初で最後の小説作品。「小説という装置を手に入れたことで、行動紘一は自己の内部を曝す手段を手に入れた」と沢木耕太郎が論じている通り、「です」「ます」調のその軽妙な書きかたは、自身のベトナムでの経験や考えの告白のようにも感じ取れます。

夫人の仏像購入における一騒動をまとめた、朗らかで、微笑ましいお話です。

[n2kさんの感想 · 2021年9月9日]

サイゴン〜の続きで探して古本で購入。サイゴンにいた時の話を元に書いた小説とありました。文体が違っていて印象も違いますが、ベースというか根底にあるのは同じでした。これが文庫になっていないのは残念。もっと沢山作品を残して欲しかった。

[まきとさんの感想 · 2014年8月6日]

戦禍のサイゴンで生きる日本人記者が出会ったベトナム人の女主人。たくましく生きる南国の人には仏教が似合うような気がしてくる。自分の心のよりどころに仏像を買う下宿の女主人の様子をユーモアなのか事実なのか、巧みに描いている。これは近藤氏の一連のノンフィクションエッセイではないので、どこかに創作くがあるのだろう。学生時代に行ったバンコックやシンガポールなどから類推する。欧米の映画を観ているのではない未知の世界が描かれている。