沖縄文化論 新版: 忘れられた日本 (中公叢書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120032967

作品紹介・あらすじ

民俗の根源にひそむ悲しくも美しい魂を天才と直感と直観とで見事に捉えた名著。

感想・レビュー・書評

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  • 岡本太郎の著書に『沖縄文化論 忘れられた日本』があり、その最後に「本土復帰にあたって」との短い章がある。この本のほとんどは、復帰前の沖縄を岡本が訪ねた際のことが書かれているのだが、その経験と感慨を経た上で、十数年後の1972年に本土復帰する際に新版として書き加えられた章だ。
    この本土復帰を「ほんとうに喜ぶべきなのかどうか、言いようのない疑念が残る」と岡本は書いている。いわく、「私は沖縄の人に言いたい。復帰が実現した今こそ、沖縄はあくまでも沖縄であるべきだ。沖縄の独自性を貫く覚悟をすべきだ。決して、いわゆる「本土なみ」などになってはならない」として、ずるずると流されて、本土流の考え方に巻き込まれるな、と警告する。
    岡本は戦後の日本の経済的発展と欧米化した社会、官僚的なものを「本土流の卑しい常識」として唾棄し、沖縄のあるがままの生き方と文化を愛した。だからこそ岡本太郎は、沖縄が日本に復帰することで、沖縄的な美しさや文化が失われてしまうことの予感があり、それを危惧したのだろうと思う。

    「だから沖縄の人に強烈に言いたい。沖縄が本土に復帰するなんて、考えるな。本土が沖縄に復帰するのだ、と思うべきである。そのような人間的プライド、文化的自負を持って欲しい」

    こんな過激な論理には賛否があろうし、ほとんどの方々は、この岡本太郎の呼びかけに賛同はできないだろうと思うが、個人的には沖縄とのつきあいと葛藤する思いから、深く頷くところがある。
    今の沖縄の状況、日本の状況を見たら、岡本なら何と言うだろう、と思わずにはいられない。

  • 岡本太郎の絵や立体物はあまり好きになれないものが多いのだが、この方の書く文章はいつも素晴らしいなと思う。
    今回沖縄に旅行するにあたって、偽善的ではあるが上っ面を眺めて楽しむ旅行者になりたくがない為に、池澤夏樹のカデナに続きこの本を手に取った。
    あるいは、人にいわれた沖縄は日本のルーツだという言葉の根拠をもとめてだったかもしれない。
    読んでみて、ルーツであるということは腑に落ちたし、人頭税のや舞踊の話など恥ずかしながらほとんど知らなかったので、良かったなと思う。
    何より岡本太郎の洞察力が理論に向かわないで本質を伝えてくれるので、それが素晴らしい本だなと。

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著者プロフィール

岡本太郎 (おかもと・たろう)
芸術家。1911年生まれ。29年に渡仏し、30年代のパリで抽象芸術やシュルレアリスム運動に参加。パリ大学でマルセル・モースに民族学を学び、ジョルジュ・バタイユらと活動をともにした。40年帰国。戦後日本で前衛芸術運動を展開し、問題作を次々と社会に送り出す。51年に縄文土器と遭遇し、翌年「縄文土器論」を発表。70年大阪万博で太陽の塔を制作し、国民的存在になる。96年没。いまも若い世代に大きな影響を与え続けている。『岡本太郎の宇宙(全5巻)』(ちくま学芸文庫)、『美の世界旅行』(新潮文庫)、『日本再発見』(角川ソフィア文庫)、『沖縄文化論』(中公文庫)ほか著書多数。


平野暁臣 (ひらの・あきおみ)
空間メディアプロデューサー。岡本太郎創設の現代芸術研究所を主宰し、空間メディアの領域で多彩なプロデュース活動を行う。2005年岡本太郎記念館館長に就任。『明日の神話』再生プロジェクト、生誕百年事業『TARO100祭』のゼネラルプロデューサーを務める。『岡本藝術』『岡本太郎の沖縄』『大阪万博』(小学館)、『岡本太郎の仕事論』(日経プレミア)ほか著書多数。

「2016年 『孤独がきみを強くする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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