フォグ・ハイダ - The Fog Hider

著者 :
  • 中央公論新社
4.09
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120046070

感想・レビュー・書評

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  • 2016.03.03

  • ヴォイド・シェイパ・シリーズ四作目。
    守るものの有無と強さについて。
    ちょっと切ない感じ。

  • ヴォイド・シェイパシリーズのなかでもいちばん読みにくい作品だった。事情が込み入っている。人を斬りたくないが刀を極めたいという矛盾。女性と暮らすということ。という二つが軸かもしれない。
    刀をふるか、刀をすてて人と暮らすか。

    キクラさんが言っていた、愛しい者がいるということは、傷があるのと同じ、という言葉が心に残った。

  • 結末悲しかったなー。良い方向に動いたこともありつつ、でもなぁー。うーんとか悩みつつ終わった巻でした。

  • 『悔いているのか、憎んでいるのか、悲しいのか、それとも嬉しいのか、涙ではわからない。まして、口から出る言葉は、もっと信用がおけない。人は、いつでも、どんな言葉でも、簡単に口から出せるのだ。』

    「ゼンさん。来てくれたんだ。嬉しい」
    「琴の音を聴くためです」
    「そういうときはね、ノギさんの琴が聴きたくて、と言うの」
    「そうか。ああ、気がつきませんでした。覚えておきます」
    「大丈夫なの? 鈴屋が襲われたりしない?」
    「それは、その、たぶんですが、解決しました」
    「え、どんなふうに?」
    「また、あとで、えっと、チハヤ殿が説明してくれるかと」
    「ゼンさんが、今説明したら良いじゃない」
    「いえ、今は、ノギさんの琴が聴きたいので」
    「あらら、なんか、ちょっと変な気もしますけれど、まあ、ええ、だいたいそれで、よろしいと思いますよ。そんな感じです」

    「刀のほかに、二つある ー 一つは場数。もう一つは知恵だ」

    「人は、じっと待つことができない。それはまるで、息を止めることにも似て、苦しく感じられるものだ。痺れを切らし、つい動こうとしてしまう。戦いというのは、そうして始まるのではないか。」

    「拙者が果てたときには、フミは自害しようとするでしょう。そのときには、どうか止めないでいただきたい。私が願うのは、それだけです」

    「俺はな、フミさんのために刀を抜く。それだけのことだ。なにか不足があるか?」

    『とにかく、自分の刀を、自由に振ろう。
    それだけだ。』

    「まさに今、大勢の人を殺そうとしている者がいて、それを止めねばならない、という場合には、その者を殺し、多くの命を救おうとするかもしれない」
    「救う命のために、命を奪って良いことになります」
    「そうなりますな」
    「それは、正義ですか?」
    「いえ、正義ではない。ただ、しかたがないことです。さきほど貴方が言ったように、正義とは、そのような悪人がこの世に生じないように導くことではないでしょうか」

    「少しくらいの濁りは、あった方がよろしい。この世にあるものは、いかなるものも、必ず無駄なものが混ざっております。なにも溶けていない水はない。なんの匂いもしない風もありません。それでも、それを綺麗な水といい、澄んだ空という。おそらくは、正しい剣、正しい刀も、そのようなものと想像いたします」

    『いくら考えても、答えのない問題ばかりだ。答がないことが自分でもよくわかる。それなのに考えてしまうのだから、困ったものだ。こういうのは、人の質なのだろうか。』

    『チハヤは、また声を上げて笑い、リュウがつられて笑った。何が面白いのか、よくわからなかったが、自分の心も温まった。酒のせいではなかったはずだ。』

    『みんなが同じではない。それぞれが、自分の命を持っている。なにかを楽しみにして、生きているのだ。苦しみだけで生きている者は、たぶん少ないだろう。それでは生きていけないように思われるからだ。』

  • 山中でゼンを襲った山賊。その用心棒たる凄腕の剣士には、やむにやまれぬ事情があった。「守るべきもの」は足枷か、それとも……。若き侍は旅を続けながら少しずつ変化していく。
    BOOKデータベースより

    刀筋を通して、自分の内にある考え方を分析していく、ゼン.何のために強くなりたいのか、社会の有り様はなぜそうなのか.
    頭は未だ靄の中にある.刀を交えるたびに、人と接するたびに、一つひとつ答えに近づくときもあれば、さらなる疑問が生まれることもある.
    人は人と関わることで成長することができるのだなぁと改めて思った.でも成長するには考えることが必要であるね.

    追記
    このシリーズをアニメ化すればいいと思う.その時の主題歌は米津玄師の「海と山椒魚」がいいと思う.

  • 20

  • 前作(スカル・ブレーカ)に比べると狭間の一冊、間延び感が否めないけれど、つい引き込まれて読んでしまうのが森博嗣の偉大さである。

  • 『ヴォイド・シェイパ』シリーズ4作目。
    ゼンの旅はまだまだ続くらしい。
    1話目に比べるとゼンがずいぶん世慣れてきていて、一方で世慣れた自分を「そういうことも近頃はわかるようになった」と自己評価しているあたりが何だか可愛い。
    3作目でゼンの正体が明らかになってきたのに、今回はほとんどそちらの方へは話が進まなかったので、ちょっと欲求不満。

  • 2014年10月30日読了『フォグ・ハイダ』森博嗣著 評価B+
    森博嗣氏の剣豪小説のヴォイド・シェイパシリーズの第4作。出自不明の剣士ゼンを主人公とする新しいタイプの剣豪小説である。自らの生まれを知らないゼンは、小さい時から人里離れた山中で、師匠であるスズカ・カシュウに育てられ、剣術他自らに厳しく生きることを教えられた。師匠は亡くなり、山を下りた。
    そこから、ゼンの剣と己を磨く修行の旅に出た。

    どこへ向かうともなく旅の道すがら、すさまじい剣の腕を持つキクラに出会う。自らが負けるという勝負を予感させる相手に惹かれるゼン。同じ道を追いかけてきた旅で知り合った剣士、チハヤと旅芸人の女ノギに出会う。
    そして、キクラに再会を望むゼンは、チハヤとともに、ようやくキクラに会うことができると、剣友チハヤは、キクラの知り合い。キクラは、都で濡れ衣を着せられ、連れ合いの幼なじみフミと故郷へ戻る途中であった。
    しかし、キクラは、その濡れ衣により仇討ちと称する追っ手と戦わなければならなくなる。
    キクラの太刀筋に魅せられたゼンは、結果的にキクラを助太刀することなり、二度にわたる追っ手との戦いで、キクラとフミを失う。戦いを宿命づけられた侍の空しさと生きる意味合いに悩むゼン。多くの命のやりとりで、更に剣は磨かれるが、、、、

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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