持続可能な魂の利用 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.65
  • (63)
  • (136)
  • (98)
  • (20)
  • (13)
本棚登録 : 1516
感想 : 165
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120053061

感想・レビュー・書評

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  • 作者の、現代日本のオヤジ社会への怒りには共感する。この本を読んで、こういうこと、感じたことも経験したことも一度もないという女性はほとんどいないだろう。

    女が「負の感情」を出すと、「感情的」の箱にすぽっとシュートを決めればいいからと、なぜか安心し、勝った気になる男(P191)

    日本の中高年男性にとって、女の子は、自分たちを安心させてくれる、どんな意味でも脅威にならない存在だった(P206)

    女が大統領になるくらいだったらあらゆる面で醜悪な「おじさん」を大国の大統領に据えて世界を危険に晒す方を選ぶように、急病人の命を救うことよりも男の聖域である相撲の土俵に女が上がることの方が許せないように、深刻な環境破壊よりもそのことを訴える三つ編みの女の子の口調が気に入らないように、このままきっと「おじさん」によって国が滅び、世界が滅びる。(P235)

    高齢の男が政治も経済も法も握って、しかし女も働かせねばやっていけないから、表面だけは平等だと言いながら、家事も育児もさせ、性的欲求の捌け口とし、決して自分たちの中には入れない。どころかちょっとでも権利を主張しようものなら、押し潰す。
    読んでいて本当にそうだそうだと、ふつふつと怒りがわいた。

    しかし、某アイドルグループとそのセンターをモデルにした部分が乗れない。私個人としては、あまりよく知らないということもあるし、果たしてその女の子が、作者の言うように今までのアイドルとは全く違うのかも、ちょっとわからない。だから、そこまで彼女を推す気持ちというところには共感できなかった。
    それと、純粋に小説としては、弱いかなと感じた。言いたい事が先にあって、それに沿って物語を作ってるような感じがした。

    でも、松田青子さんには期待してるので、次も読むと思う。

  • 3.7

  • 生きづらい要因の一つを教えてくれた本であった。これまで、自分の中に違和感があったが、それが分からないままであったが、それを明確にしてくれた。どんなに制度や仕組みが整っても人の考え方、行動が変わらない限り何も変わらないと常々思う。その一つに男女差別である。女性や男性の役割が昔から固定されているように感じ、それは特に家庭内では差別がなくならず、生きづらい世の中になっているように感じる。最後の部分は展開が大きく変わりびっくりするが、読むと元気が出る本であった。

  • 国を畳んだという状態が一体どういうことなのか、他国の領土にでもなっているのか具体的なことがわからないけど個を無くすのはそれはそれで怖いのでは。ハーモニー計画みたいなこと?

  • 文学的な強度を持つ共感とは、ある社会構造の中で理解できない深淵に落ちた人間の生身の叫びによって生じるものだと思う。本書はその点で共感を回収しやすくするよう、虐げられた若い女性に読み手を限定しすぎないで、前半は女性としてのジェンダーを持つ立場で体験したことを淡々と書こうとしており、しなやかな知性と筆の柔軟さが伺える。反面、共感を訴える読者の閉鎖的な連帯感によってそうしたバランス感覚が薄れてしまうような脆弱さもあると思う。多様な読者の心を震わし蒙を啓くだけの文学的な立体感、視野の広さを持つには、こういうものなんだ、と1人で開き直る豪胆さが欠けているのではないか?
    罪を暴く、勧善懲悪の陳腐なテロップに頼る小説は得てして、画一的な読書感想を堅固にした、いわゆる信者の中でもてはやされる作品になりがちだが、本書が読書感想の中で後発的にそのような価値付けに貶められないかが一点のしみとなって残る。
    本書の感想は控えたい。

  • 55)日本て特に悪い意味で女性の事しか見ない国だよね。家父長制度が徹底してるっていうか。女性にそうさせている男性の存在は無視して女性だけを問題にして非難する事が当たり前になってる。そのシステム自体は絶対に問題視しない。もやもやした鬱陶しい霧のようなままの気持ちをあっという間に言語化してクリアにしてみせる様々な国の人達を驚嘆の目で見つめている。自分の考えや気持ちを言葉にする事に慣れているのだ。私は自分の意見や気持ちを口にする事を教育されてこなかったと日々痛感するようになった。思い返せば十代の頃から周囲の女の子と一緒にもやもや薄い霧の中で過ごし誰かはっきり意見を言う女の子がいるとみんな目を丸くしてうっすらと笑みを浮かべて横に流した。流す事だけ周りにうまく合わせる事だけ学んだ。
    63)日本社会は女性が楽をする事に快適に暮らす事に選びとる事になぜか厳しい目を向ける。
    166)本来人間に未熟な時など存在しない。その時々の本気があるだけ。
    190)沈黙が歩の安全領域だった。その方が安全に暮らせる確率が高いと判断したからそうしていただけだ。でも沈黙していても声を上げて抗議しても不利益を被るのは嫌な思いをするのはいつもこっちだ。
    195)人生って大げさだね。非正規ってお手伝いみたいなものでしょ?
    207)男性を立てるという表現はとても不思議だと思った。まるで男性は1人では立っていられない自立ができない骨と筋肉がぐにゃぐにゃの珍しい生き物のようだ。あまりにも女性のケアを必要としていたようなのでもしかしたら実際にそうだったのかもしれない。
    208)日本という国は空気という見えないものを何とかして読もうとする不思議な国でありながら世界に対しては全くというほど空気を読まない。あくまでも自国の中でお互いを縛り合い先進国というかつての栄光にしがみつき変化を良しとしなかった。
    215)世界で日本だけが取り残されようとも結婚する女性から名字を奪い家内という言葉どおり母親になった女性をそれまでの仕事や生活から引き剥がし家の中に閉じ込める。出産は病気ではないという無理やりな主張を続け保険の対象外にし陣痛の痛みを母親の愛の深さに紐付け女性に罪悪感を抱かせるよう社会通念を操作。ベビーカーの子供連れへの苛立ちと嫌悪感が噴出する子育てに理解のない社会を作り上げる。これでも産めるか産めるというならさらに産みにくくしてやる。隠された政策は概ね功を奏し出生率は確実に減り続けた。
    235)女が大統領になるくらいだったらあらゆる面で醜悪なおじさんを大国の大統領に据えて世界を危険に晒す方を選ぶように急病人の命を救うことよりも男の聖域である相撲の土俵に女が上がることの方が許せないように深刻な環境破壊よりもその事を真剣に訴える女の子の口調が気に入らないようにこのままきっとおじさんによって国が滅び世界が滅びる。おじさんによってみんな死ぬ。

  • う~ん。これを小説と呼んでいいのか?あまりに現実の芸能人や政界の人そのままが登場して、果たして相手とトラブルにならないかと心配してしまう。
     今の世の中が「おじさん」によっていいように操られているという着眼点は秀逸なのだが、だからこそ、最後まで「おじさん」がいない世界を丁寧に描いてほしかった。ただ文句を書きなぐっただけと言われても仕方ないかも。
    いずれにせよ、「おじさん」たちは読むと気分が悪くなるでしょうね。

  • 誰かに勝手な物語を付与して消費してしまっていることはある。これまで生きてきた中で、意識せずに傷つけたり、いってしまった後になぜ思ってもいないのにこんな意味のないことをと感じる様なこともあったりした。

    おじさんが消える というので一番気になったのは
    父親にとっては突然娘が消えてしまうということ?
    これは一大事な気がするんだけれど、我が子は見えるんだろうか。

    もう一つ不思議に思ったのは、名前のない子達が女子高生週間を学校の授業として行っていたこと。そういう授業は私の学校ではなかったと思うけれど、今の学校・海外の学校ではあるんだろうか?創作だからこれもあるとしたらということなんだろうか。

    表紙の題字がピンクなのは、スタンガンにかかっているんだろうか?
    女性の革命でピンクなら本の内容的に微妙な気もするけれど、そんなわけはないよな。

  • これを読んで、思わず最近話題になった
    「母親ならポテトサラダくらい作れ」「冷凍餃子は手抜き」問題を思い出した。
    この本と同じおじさん目線。

    私はAKB系アイドルにはまるで興味がないので、いまひとつピンとこない部分もあったが、作者の言わんとするところはひしひしと感じられた。

    しかし、くじ運最悪の日本が少子化加速させて国滅びる、の設定は面白すぎて笑ったけれど同時に鳥肌も。

    松田青子、すごい!

  • うーむ、正直よくわからなかった(笑)
    レビュー高評価だが・・・年代の違いか、私がおじさんか

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著者プロフィール

作家、翻訳家。著書に、小説『スタッキング可能』『英子の森』(河出書房新社)、『おばちゃんたちのいるところ』(中央公論新社)など。2019年、『ワイルドフラワーの見えない一年』(河出書房新社)収録の短篇「女が死ぬ」がシャーリィ・ジャクスン賞候補に。訳書に、カレン・ラッセル『狼少女たちの聖ルーシー寮』『レモン畑の吸血鬼』、アメリア・グレイ『AM/PM』(いずれも河出書房新社)など。

「2020年 『彼女の体とその他の断片』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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