- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120055867
作品紹介・あらすじ
曾祖父が謀反に連座したことから、馬氏は長く官位から遠ざかっていた。王莽の世になってようやく官位を得た兄たちはそれぞれ家を出て、末子の馬援は家主となるが、ひょんなことから追われる身になってしまう。北地へ逃げた馬援は牧場経営を始め、成功を収めるものの、王莽への反乱軍が各地で蜂起、新たな政権が乱立する戦国の世に、馬援も巻き込まれてゆく。光武帝・劉秀のもとで後漢統一のために力を尽くした武将・馬援の若き日々を描く。
感想・レビュー・書評
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馬援も後半生の劉秀に使えて以降は有名だが前半生はほぼ知られていない……それを掘り起こし丁寧に物語にした作者の力量は流石と言うしかない!
非常に面白い作品でした(^^)/ -
光武帝・劉秀のもとで、後漢統一のために力を尽くした馬援の若き日々を描く
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英雄と言うと豪胆な人物という印象があるけど、本当の英雄はこの馬援のような、民の為に自分の力を尽くす人のことを言うのでしょう。争ったり、競ったりするのが嫌いな人間を本当に勇気づけてくれます。
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昔の作品の方が好きだな。
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光武帝(劉秀)下の将軍の馬援を描く中国歴史小説。
「草原の風」で光武帝を描いているが、「呉漢」や本作の様に外から見た方が、光武帝のすごさがわかるような気がします。
「呉漢」に続いて後漢名臣伝という感じです。
それにしても同じ時代を描くのに主人公によって視点が変わる引出の多さには驚きますし、資料も無いような馬援の若い時代が清々しくに描かれていて、主人公の公平な性格も気持ちよく読むことができました。
劉秀に臣従してからは急ぎ足ですが、「矍鑠」の褒辞のもとになったエピソードはもう少し詳細に描いてほしかったし、妻子についてもう少し深掘りしてほしかったです。
特に後漢の第2代明帝の皇后となった娘について気になります。
それでも、久しぶりの古代中国に十分堪能しました。 -
2023.03.12
宮城谷先生のファンとしては期待値が高すぎたのか、読後感は正直いまひとう。
馬援は結局何がしたかったのかが読み取れなかったからでしょう。
勉強とか全部放りだすことが許されたのは、「おぼっちゃま」だったから「末っ子」だったからでしょ。という皮肉な見方から離れられなかった。
そして、最後は劉秀について兵を率いる、官位は受けるって、浅薄な言い方だけど、結局、自分も立身出世主義者だったんでしょ。みたいな意地悪な気持ちから離れられない。 -
優秀な兄達のもとで生まれ育ち、早々に学問の道を諦めた主人公、馬援は、牧畜に青春を懸けた。
平等に重きをおき、広く慕われた彼は、やがて光武帝へと仕えるまでになる。
戦争や軍事に関心はないが、人ではなく動物と心を通わせることで成長していった馬援に親近感を抱き、読み進めた。古代中国をあつかった物語にしては読みやすく、特に前半の牧畜の部分や農民たちの想いを掬い取る部分は、農家である自分には自分ごととして読めた。
三国志の前の時代、さらに混沌を極める戦乱の時代の話なので、男くさい展開かと予想していたが、3分の1を残してようやく明確な主人を選ぶ(年は40代になった頃)馬援。軍功や昇進に関心がなく、人々の暮らしや動物たちを心から好いているのが伝わってきた。
なんとなく、中国における優秀な人というのは、論語をしっかり勉強したお堅い人のことをいうイメージだった。だが、こういう本を読んで思うのは、しっかり勉強した上で、大きな局面で自分をしっかり持った行動をできる人をいうのだろうと思った。これだけ大きな国で、天下に関わろうとするとき、学問の力だけではどうにもならないことが必ずある。馬援はそれを牛馬から習い、身につけたからこそ、運命が彼を巻き込み始めたときに迷わず進めたのだろう。
私が酪農を経験する前なら、馬援の前半の物語は綺麗事に聞こえたかもしれないが、動物を養う人間はこうなるよなあと納得するおもいだった。生き物という言葉の通じないものに向き合って始めて学べる謙虚さがある。 -
宮城谷昌光氏はファン作家の一人だ。中国の時代小説は多彩な人物が登場し夢中になって読み耽る癖がついていると我ながら驚いてしまう。もう一人北方謙三氏もファンの一人でもある。本書の主人公は又思わぬ方向に人生が変わり嬉しくなっちゃうな