ドン・キホーテの旅: 神に抗う遍歴の騎士 (中公新書 1672)
- 中央公論新社 (2002年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121016720
作品紹介・あらすじ
ドン・キホーテといえば、風車に突進するあの騎士かと、誰もがイメージを浮かべることができる。本書は、作品の全体と細部を丹念に読み解きながら、われらが遍歴の騎士の魅力に新たな光を投げかけるものである。従者サンチョ・パンサはもちろん、イエス・キリスト、芭蕉、フーテンの寅さんらを招き、この、人間の想像力が生みだした最高の果実をより深く味わおうというのである。愉快で斬新なドン・キホーテ入門の決定版。
感想・レビュー・書評
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「ドン・キホーテ連続読書会」に参加します!3年掛かりで読む企画です。興味ある方ぜひ一緒にどうでしょう!!
こちらは第0回テーマ本でした。
ドン・キホーテは子供の頃に簡易版を読みましたが、結構暴力的で、老人子供をボカボカボカっとやっちまうので、ちょっと嫌だなあ…と思っていました。しかし世界文学者たちからは大変評判が高いので、気にはなっていました。
こちらの本は、スペイン語翻訳者牛島信明によるドン・キホーテ解説本です。
まず「ドン・キホーテ」とは、スペインのラ・マンチャ地方の郷士アロンソ・キハーノは、騎士道物語を読みすぎて物語と現実の区別がつかなくなり、自らを「遍歴の騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」と名乗り、近所の農夫サンチョ・パンサをお供にして冒険の旅に出る」というお話。しかしやることなすこと頓珍漢、ただの風車を「巨大な怪物だ!」と古臭い刀で挑みかかっては投げ飛ばされるというトンチキっぷり。周りはこの狂った爺さん、という扱い。
発表当時、なかなかの人気を得たのは良いのですが、贋作続編が出回ってしまったので、作者が続編で主人公を死なせて終わりにしました。現在でこそ文学の基本のような扱いですが、発表当時は受け入れられ楽しまれつつ、真面目な本扱いではなかったようです。
子供向け簡易版でも作者のシビアさ皮肉さは感じられましたが、作者セルバンテスの人生や境遇もなかなかドラマチック(この時代なら当たり前なのかもしれないけど)、さらに女性との関係はグロテスクでもあり、そのような生活が「ドン・キホーテ」の皮肉さに出ているのかもしれません。
また、当時は珍しかったであろう文学手法も使われています。
老人が主人公ということ
続編では、正編の後に「ドン・キホーテの素晴らしき冒険談」が出版され、世界的にも読まれているとされている。つまりメタフィクション手法
聖書をパロディにする。イエス・キリストを彷彿とさせる描写により、狂人ドン・キホーテと神の子イエスとを同様に並べて見せる。
ドン・キホーテの絵や像といえば必ず一緒にいるのがサンチョ・パンサ。このサンチョ・パンサもとはある意味バディものの元祖といえるのでは?
こちらの本では、牛島信明はドン・キホーテをフーテンの寅さん、松尾芭蕉とも重ねています。特殊な人のようで身近な人ということです。
名前は有名だけどなかなか全部読もうという決意が難しい「ドン・キホーテ」、では読書の旅に行ってきます!(連続読書会興味ある方はご一報ください。主催者さんにお伝えします)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
RQ:『ドン・キホーテ』のどこがおもしろいの?
以下構成とまとめ
1.作者サルバンテスと『ドン・キホーテ』の関係
2.『ドン・キホーテ』の構造
3.騎士ドン・キホーテのキャラクター論
詳細は以下
http://critique.hatenablog.com/entry/2015/04/26/201254 -
ドン・キホーテやサンチョ・パンサという言葉は知っていても、物語の詳細は知らないのが大多数ではないだろうか。といっても、古典文学であるし読むのはちょっと…。というわけで時代背景や物語の背景の解説を知る上でも良い解説書だ。
セルベンテスのドン・キホーテの出版は1605年とのこと。この年代というだけでも原著はちょっと読めないですね…。
出版当時は、たんなる空想物語であり、機知に富んだ文体が受けただけであったらしい。しかし、その評価が一変するのはその後だ。ドン・キホーテに描かれる情熱(あるいは狂気)に呈する解釈が変わっていった。解釈がふくらんでいくのも名作であるが故なのだろう。 -
ドン・キホーテについての文学論が縦横無尽に展開されている。
体系立っていない、というプレモダンにしてポストモダンな小説の筆致は、本書にも活かされている。キリスト、芭蕉、寅さんとの比較だ。とても興味深い。フェミニズムの視点も新鮮。
絶版なのが、惜しまれる。 -
ドン・キホーテのすごさがわかる。
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岩波版訳者の人が著者。また読み返したくなる。フォークナーが毎年読んでたという話があった。そういう読み方もいいなあとか思うも、もう少しそっとしておきたい気分。