人口と日本経済 - 長寿、イノベーション、経済成長 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023889

感想・レビュー・書評

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  • 筆者の立ち位置はケインズ主義+シュンペーター主義的な折衷的な位置におり、有効重要創出のためには技術革新が不可欠であり、そのために人口一人あたりの生産性を高めることで経済成長は可能であるとする。

    ここまでは至極当然なのだが、どうも最後の方で迷走が始まる。なぜか江戸時代の生活の話や、反知性主義への反論など本来の「人口成長と経済成長」という観点から急遽思想的な話に突入し、わかりやすい経済学の本が、二流の思想本になりはててしまっている。

    反知性主義や反成長主義に対しての反論したくなる気持ちはまだしも、その反論があまり拙い。

  • 日本において進行する超高齢化と人口減少問題については、毎日のように新聞紙上にて論ぜられ、それにより国家の増大する一方の歳出に対する懸念は論を俟たない状況です。

    筆者は、昭和期の高度経済成長が、労働人口の増加ではなく、生産性の向上により実現されたことを、GDP伸び率と人口伸び率の差を示して指摘し、人口減少社会でも生産性を向上させることにより経済成長を達成できると説きます。

    中国製造2025やドイツのインダストリー4.0等、製造業でのイノベーションを喚起する国家的取り組みが世界的にも大きく注目されている中、日本では特定の業種(例えば自動車)で、革新的取組への意欲(自動運転、電動化など)が見られますが、それはグローバルな競争への対処であって、独自性に乏しいような気もします。

    グローバルなシュンペーター型競争市場で頭角を現す企業が出現することにより、更なる経済成長を達成する期待はあるものの、一方で日本では企業が現金をため込み健全なリスクテイクが行われていない状況があります。

    労働力不足を補うための外国人単純労働者の受入れが叫ばれていますが、停滞する日本企業をグローバルな市場へと連携させる外国人プロ経営者の招聘、というのも状況の打開への起爆剤となるかもしれません。

  • 本書は日本経済への悲観論に対して、主にシュンペーターのイノベーション(新結合)を中心にした解決を紹介しているように見えた。

    オビに「悲観論を乗り越える」とあるが、「悲観論」を「(能動的)ニヒリズム」と読み替えたほうがわかりやすいと思う。なぜなら「悲観論」のもう一端は「楽観論」となってしまうので。楽観論という語句が与えるフワフワした印象は、本書による「日本経済の悲観論への批判」という性格を表していないと感じる。

    また本書全体を見ると、結びの4章では、副題にある通り「長寿、イノベーション、経済成長」について著者の主張が明確に書かれているものの、新書サイズという点で割り引いてもかなり物足りない結論に感じる。

    本書を雑にまとめると「単に経済成長という数値を高めることを目的としたばかりに、マルサス、アダム・スミス的に捉えすぎて悲観的にならざるを得ない状況だが、様々な数字から見ると先細りという帰結に限定することはできない。また経済成長について視点を転じるためにスチュアート・ミル、マンデヴィル、とくにシュンペーターの視点からも捉える必要があるのではないか」という感じか。
    ベタといえばベタな内容。

  • 【由来】
    ・週刊ダイヤモンドの新年号で、2016年の経済書ベストを発表してて、本書は堂々の第1位。しかも人口なので、これは読まないわけにはいかんでしょということで読んでみた。

    【期待したもの】


    【要約】
    ・経済成長ゼロでもいいじゃん、みたいな話もあるけど、雇用の劣化を招くので、やはり経済成長は必要。
    (先進国の)経済成長は人口で決まるものではなく、イノベーションによる。再配分なんて二の次。

    【ノート】
    ・主旨は、(先進国の)経済成長は人口で決まるものではなく、イノベーションによるということ(P89)。人口が少なくても「大人の紙オムツ」のようにイノベーションを起こして市場を創出すれば経済成長はできるということ。

    ・スウェーデンの「クヌート・ヴィクセル」による「最適な人口」(P46)。一人あたりの平均的な福祉の水準を大にする人口。それ以上増えると平均的な福祉の水準が下がってしまうような人口の水準。

    ・感想としてはイマイチでした。イノベーションの例が「大人の紙オムツ」って辺りに、著者の年齢的制約を感じるというのは別にしても、統計資料をもとに説明した後に出てくる結論に、論理的な接合を感じられなかった。人口学の歴史の概説にも統計の説明にも文句はないし、主張したいことにもそれほど異論はないけど、両者はつながってないですよね?という感じ。いっつも帯に文句を付けてしまうが、「経済学の答えはNOです」ではなく「(ある)経済学者の答えはNOです」でしょ。
     なお、もう一つ、違和感を感じた例を。著者がイノベーションの例としてイノベーションの例としてスターバックスを挙げてる(P77)のだけど、これでつぶれた町の喫茶店多数なんだろうから「市場の創出」ではなく単なるゼロサムでの取り合いじゃないんでしょうか?(創出した側面もあるけど)

    ・また、本書では、ピケティの「格差拡大を是正するために再配分が大事」という主張は、今や肯定する人が少ないと記述している(P88)が、そうなのか?決めつけが過ぎるような気がする。それに「生産性より分配の問題なのだ!」という意見(お師様)の方が自分には説得力がある。

    ・これで昨年の経済書No.1っておかしくない?と思ったが、著者は結構エラい先生らしい。「ダカラカー」。だったらつまらんぞ、週刊ダイヤモンド!(正確に言うと、選考は編集部じゃなくて大学の先生やアナリストによる投票結果らしいけど)

  • 新聞の書評で見て図書館に予約しました。全国紙やTVなどで紹介されると予約が殺到し随分待ちました。吉川洋 著「人口と日本経済」、2016.8発行です。大学の経済の授業を受けてるような気持で読みました(^-^) 平均寿命の急速な延びは、戦後日本の最大と言ってもいい成果とか。その理由として所得の増加、医学の進歩、皆保険(1961年)の3つを挙げていらっしゃいます。少子高齢化と人口減少は社会保障(費用)と経済活動に大きな問題を投げかけ、一方で過疎による市町村の消滅もと。ドイツは移民の受け入れを。日本はどうする?!

  • 漱石(の小説ではなく、よりマイナーと思われるエッセイ類)や老子、内藤湖南などが縦横無尽に引用され、昔風のインテリの著作という印象。こういう該博な「教養」を披瀝する人は、最近少なくなったなあ。
    内容が初歩的すぎるというレビューがあったが、一般向け新書ならそれで正しいだろう。門外漢の私などは、時に声を出して笑いながら、しごく楽しく読ませてもらった。
    「『イノベーション』の具体的提言がない」というのも、著者は起業家にあらず経済学者なのだから当然だろう。「過去の人類史において、人口の増減と経済成長はまったく比例していない」という事実を経済学的手法できっちりと立証してみせているのだから、自分の「仕事」はしっかりとこなしている。一般人が「なんとなく」で捉えていることをきちんと数字で説明する、それが学者と言われる人種の仕事だろう。
    強いて看板に偽りありと言うならば、人口と「日本」経済と言いながら、むしろ「世界」経済と言ったほうがふさわしいようなフィールドの広さだろうか。

    はたして「イノベーション」とやらが万能の秘薬のごとくすべてを解決するのか、それは私にはわからない。だが、すでに若い女性が減りまくっている日本において、人口減少は「必ず来る未来」である。それを恐れたり、嘆いたりできる段階はもう過ぎたのだ。ならば動機は何であれ(著者のような楽観論か、あるいは真逆の悲観論に由来するかを問わず)、昨今の我が国に横溢する「来たらどうしよう…」ではなく、「どのように迎えるか」に思考を切り替えるべきだろうとは思う。
    仮に一部論者が言うとおり「少子化が日本を滅ぼす」のだとしても、20年前に女児の出生を増やしておかなかった私たちに、もはやそれを避けうるすべは存在しないのだから。

    それにしても巻末の謝辞、「娘夫婦」なのに「隆志と桃子」という表記には驚かされた。愛娘がよその男の風下に立たされて平気なのかねえ…。

    2017/6/14読了

  • 現状世界第3位というGDP大国であり、経済成長せずに現状に甘んじることも一つの答えである。その上で、経済成長とは、何のためにあるのかを考えさせられた。

    今以上に生活が便利で豊かになることと、イノベーションによる経済成長は同義である。
    この先、超高齢化していく中で、より少ない若者が年寄りを支えていかなければならない。負担がかからないよう、若者が年寄りを支えずとも大丈夫なくらいに、年寄りが自立できるくらいには生活が便利で豊かになることが必要だ。
    故に、イノベーションによる経済成長を起こしていくことが必要なのである。

    個人的には、他の国の豊かさと比べても、日本は本当に生活水準が豊かであると思うので、これ以上豊かになりたいとまでは言わないが、現状の豊かさはせめて守っていきたいと思う。
    よって、筆者のいう通り、経済成長の果実を忘れて反経済成長になって、今以上に生活が不便になることは嫌だと思うので、国民の生活の豊かさを維持できるくらい程度での経済成長が必要であると思う。

    筆者は老人に対するサービスの向上によるイノベーションを提起していたが、年金暮らしの老人の一人当たりの消費は少ないなるので、財布の紐の固い彼らをターゲットとしたサービスは難しそうではあると思った。

  • 冗長的な解説。
    引用が多いのだが、その使い方が持論を補足するのではなく、紹介に止まっている。
    修士論文レベル。
    当たり前すぎる結論があんまりでは。

  • 人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか――。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」と答える。経済成長の鍵を握るのはイノベーションであり、日本が世界有数の長寿国であることこそチャンスなのだ。日本に蔓延する「人口減少ペシミズム(悲観論)」を排し、日本経済の本当の課題に迫る。

  • 筆者が本書で主張していることは、「人口減少・高齢化時代の中で経済成長を遂げるために必要なものはイノベーションである」という1点に尽きると思われる。

    人口減少については経済力が失われるという悲観的な議論になりがちであるが、著者はイノベーションによって経済成長は十分可能であるという見方をしている。

    ただし、イノベーションを起こせるかは企業次第であり、日本企業に対して注文も付けている。

    著者はマクロ経済学の専門家であるため、企業がどのようにしてイノベーションを起こすかまでは踏み込んでいない。企業家が考え、実践すべきことだろう。

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