中国の論理 - 歴史から解き明かす (中公新書 2392)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121023926

感想・レビュー・書評

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  • 非常にわかりやすい。

    中国の立場から歴史をひもといてみれば、現在の中国の有りようがよくわかる。

    西洋的尺度で見ると、中国は巨大なガラパゴスであって、現在でもそれは色濃く残っている。

  • 隣国中国の「論理」を理解するためには、歴史に学ばなければならないが、日本人の中国に対する歴史認識には心許ない部分がある。本書は中国の「論理」を、謎の国・中国の「史学」(儒教と史書という大枠)、社会と政治(士と庶の分別)、世界観と世界秩序(天下と華夷)という視角から定位を試み、そして「近代の到来」、「「革命」の世紀」と直近の歴史を分析する。

    Ⅰ〜Ⅲ章が基礎編、Ⅳ章、Ⅴ章が応用編と言っても良いだろう。コンパクトかつ平易にまとまっていて学ぶところが多い。とくに近代に入って「西洋の衝撃」を受けてからの中国知識人の「附会(こじつけ)」の論理は、康有為 → 梁啓超 → 陳独秀へと明快に整理されており、わかりやすかった。

  • 日本が嫌いなのに、爆買いするといった中国人の思考の「矛盾」の理由を説明するということをうたっているのだが、自分はあまり理解できなかった。のっぺりと儒教を中心にした中国思想史を説明されて「というわけなんです」と言われてもと……。テーマが絞れていなくて、著者がいちばん得意で言いたいことに終始している気がする。

  • 中国人が何を考えているのか、本書は長い歴史から教えてくれる。いかに中国人(主に漢民族)が儒教に従って行動しているのかが分かる。これは王朝が代わっても、現在の中華人民共和国になっても行動の指針は変わっていない。ということは、中国人が持っている中華思想のもとに世界の中心であることを目指している。昨今の東シナ海の人工島や尖閣の問題で中国が一歩も退かないのは大昔から引き継がれている行動指針があるからだろう。これは国が明確な目標を持っているともいえる。一方、日本はどうだろうか。5年後の日本の姿を想像できる人はほとんどいないのではないだろうか。中国は100年先まで見据えた国家の計画を実行に移しているのではないだろうか。ここは中国の優れたところだと思う。隣国を知り、良いところは真似、悪いところは正せばいいのではないかと思う。

  • ただの歴史書。

  • 最近読んだ中国関係の本で最も面白かった。

  • 中国の伝統的な歴史観国家観そして知識に対する捉え方を最初のイントロダクションで簡潔にまとめてくださり、その後これらの考え方が中国国民ネイションステートの創設にあたりどのような役割を果たしたのか、あるいは障害となったのかをわかりやすく解説してくださっている。
    特に日本の和製漢語による新しい中国語(白話運動)への影響と、イデオロギーを正当化するための歴史観についての説明が非常に興味深かった。個人的に岡本先生のファンの1人であるので今回の著作もイチオシ。

  • 著者の岡本隆司氏は、中国近代史を専門とする歴史学者。
    我々日本人にとって一見不可解な中国(人)の思考・発言・行動に通底している論理について、「いわゆる理屈のこね方・論理のパターンは、一朝一夕にはできあがらない。時間をかけて身に染みついた、いわば歴史的な所産である。目前にあらわれる言動から観察するより、論理の形成過程にそって考えるほうが、中国の謎の理解にたどりつく捷径になると信じる」と述べる著者が、歴史的なアプローチによって考察したものである。そうした意味では、社会・政治・国際関係の根底にある考え方を軸に見た、中国の古代から現代までの通史にもなっている。
    著者は、その根本を貫いているものを以下のような二元構造の論理であるとする。
    ◆時間観念(歴史認識)においては、“正しい”方法・筋道に従った政権授受の経過・系譜を示す「正統」と、そうではない「僭偽」の二元構造。政権授受の“正しい”方法・道筋とは、「天」から「天下」を治めるよう「命」を受ける、即ち「天命」を受けることであるが、事実上は、勝ち残った者が政権を握ることになって、「天命」得たことになる。その「正統」を記録し後世に伝えるものが「史書」・「史学」であり、実情からかけ離れたものであったとしても、それを用いてでしか、歴史事実を認識・考察・記述できないのが中国の歴史の論理なのである。
    ◆社会構成においては、エリートである「士(=官)」と非エリートである「庶(=民)」の二層構造であり、その二層を分けるのは儒教が最も重視する「礼」の有無である。科挙の制度はこの構造を強めるものではあったが、両者それぞれの内容、互いの距離・関係は時代によって必ずしも同じではなかった。
    ◆世界秩序(空間認識)においては、「華」(=中、中華、中国、華夏)と「夷」(=蛮、戎、狄、外夷、四夷、四裔、蛮夷、夷狄)の二重構造。もともとは単なる土俗的・習俗的な自他認識・差別意識に過ぎなかったものを、理論・倫理的に自他を納得させる動機から、「礼」の有無という儒教の教義を持ち込んで分別したと考えられる。
    そして、そうした「中国の論理」は、19世紀に西洋近代に直面したことにより、まず「世界秩序」の論理において相克と破綻をきたし、抗日戦争における総動員体制の中、「社会構成」も徐々に崩れ始めたとはいえ、長い歴史が培ってきた「中国の論理」は依然維持され、我々はかくて今も、中国の「歴史認識」や「空間認識」と向き合わざるを得ないと結んでいる。
    地理的に近く歴史的なつながりも強いにもかかわらず、理解し難い「中国(人)の論理」を解き明かした良書である。
    (2016年9月了)

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=8029

  • 同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛盾がそのまま現実となる。それはなぜか――。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。

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著者プロフィール

1965年、京都市に生まれる。現在、京都府立大学文学部教授。著書、『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞)、『中国経済史』(編著、名古屋大学出版会、2013年)、『出使日記の時代』(共著、名古屋大学出版会、2014年)、『宗主権の世界史』(編著、名古屋大学出版会、2014年)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会、2017年、アジア・太平洋賞特別賞、樫山純三賞)ほか

「2021年 『交隣と東アジア 近世から近代へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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