大統領とハリウッド-アメリカ政治と映画の百年 (中公新書 2527)
- 中央公論新社 (2019年2月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121025272
作品紹介・あらすじ
1915年に公開された『国民の創生』を皮切りに、ハリウッド映画はアメリカ大統領を描き続けてきた。架空の大統領には人々の不満や希望が投影される一方、現実の大統領たちはF・D・ローズヴェルトからケネディ、レーガンと代を重ねるにつれ、ハリウッド流のイメージ戦略を採用するようになる。大統領を軸に政治と映画の相互作用を読み解き、トランプ大統領に揺れるアメリカの本質に迫る。
感想・レビュー・書評
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h10-図書館2019.7.13 期限7/27 読了7/24 返却7/25
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大統領に話をしぼって。読みおわってから同志社の村田先生だって気づいた。
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第1章 聳え立つリンカーン
第2章 「赤狩り」を乗り越えて
第3章 「英雄」から「敵役」へ―大統領イメージの転落
第4章 「銀幕の大統領」―レーガンとその時代
第5章 冷戦後の混迷
第6章 二一世紀の大統領とハリウッド―9・11から11・9へ
終章 大統領とハリウッドは「離婚」するのか
著者:村田晃嗣(1964-、神戸市、国際政治学) -
題名の通り、アメリカ政治とハリウッドの関係史であり、「セレブ政治」の流れの中で、ハリウッドと大統領の距離感が描かれている。ハリウッド自体は歴史的経緯もあり、リベラルよりである中、商売自体は別との印象か。トランプはどうなるのだろうか? あと、著者の映画知識にはただただ脱帽。
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個人的に興味あるテーマの書籍。最後までグイグイと引き込まれた。ハリウッド映画と政治(大統領制)の関連の歴史約100年を手際よく整理されていて、最新の映画「バイス」まで紹介されている。第6章における、レーガンとトランプが「アメリカを再び偉大にする」というキャッチフレーズ自体は共通しているものの、その違いがいかに大きなものであるかという解説や、終章における「反ブッシュ感情がオバマ登場の助産婦であったように、否それ以上に、オバマが体現する多様性やエリート主義への反発がトランプをホワイトハウスに招き入れた」という部分は興味深く読んだ。アメリカ政治とハリウッド映画の関係性についての入門書としてお勧め。巻末の年表も有益。
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東2法経図・6F開架:B1/5/2527/K
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アメリカの政治に特に詳しいわけでもなく、映画にもそれほど興味を持たずに生きてきた私のような人間でも、引っかかる箇所は多数ありました。映画が好きな人なら、もっと楽しく読めると思います。
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リンカーン以降の、単なる政治史でも映画史でもない、両者が絡み合った歴史だ。やはり20世紀後半以降が、時代も映画も馴染みがあるので読んでいて面白い。
『スター・ウォーズ』のような勧善懲悪「フィール・グッド・ムーヴィー」にすら、ゲリラ戦にベトナム戦争を、邪悪な銀河皇帝にニクソンを投影しているという。ニクソンは、国際的な文脈では米中接近やベトナム戦争終結、またドル切り下げなど大きなことを成し遂げたイメージだ。しかし一般の米国人からのイメージを体現しているだろう映画の中では、邪悪な本人像と暗い時代の記号として、ハリウッドは憎悪しつつも多用してきたそうだ。フォードやカーターと比べ、存在感があったという点ではよかったのかどうか。
一人で一つの章を取っているのは、著者が別にこれだけで一冊書いているレーガンだ。レーガン自身が映画に描かれることはほとんどなかったが、レーガン自身が「銀幕の大統領」を演じていたという。
政治史の文脈では、FDR以来、強いリーダーシップや超党派精神を前提とする現代大統領制だったが、クリントン時代のスキャンダルで威信や道義性が地に落ちたことで、ポスト現代大統領制が語られるようになったと著者は分析している。
なお、レーガンも使ったGo ahead, make my dayのセリフは、厳密には71年の『ダーティハリー』ではなく、83年の『4』だろう。