- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121025661
作品紹介・あらすじ
海の覇権をめぐって各国は鎬を削ってきた。世界を股にかけた大英帝国、資源を制したアメリカ、国際ルールへの挑戦を試みる中国……。
本書は400年にも及ぶ歴史を地政学などの視点を駆使して描く試みだ。そこからは、日本がなすべき海洋秩序の模索や課題も見えてくる。
感想・レビュー・書評
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地球表面積の7割を占める海洋の国際的利用はここ4百年の歴史です。大航海時代に始まり、捕鯨業の発達、アメリカの海洋覇権の確立と歴史を辿り、海洋秩序のルールづくりが模索されるのは20世紀も後半になってからのことです。そして、それはアメリカを秩序に組み入れる交渉史そのものでした。今、中国は南シナ海・東シナ海で覇権を確立しようとしており、海洋秩序に挑戦している状況です。戦争をしないで領土を収奪する手法を開発した中国は、尖閣を含む南西諸島をサラミスライス&キャベツ戦略で手中に納めようとしており、一切ためらいはありません。中国サイドを論じる第5章の緊迫感に続く、日本サイドを論じた第6章が心許ない。
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海洋地政学なんて全く興味がなかったけども、ラジオでいさみさんのお話を耳にして(スエズ運河に関してのコメント)、わかりやすい上に大変面白い内容だったため、そこで紹介されていた本書を購入。
結果大当たりで、内容に引き込まれてあっという間に読了してしまった。
海洋の歴史を振り返る序盤は楽しく拝読していたけれど、海洋覇権を目指して中国が台頭してくると、不安な気持ちになってしまった。
国際ルール対中国ルールの鍔迫り合いが起こらないように、国際法の必要性と正当性を広く世界と共有し確認し続けなければならないことがよく理解できた。
国防費や基地についても別な視点が持てるようになり、日々目にするニュースも理解度が深まったように思う。
他にもいさみさんの著書や参考にされていた文献など読んでみたい。 -
【世界的な規模で長期の複雑な交渉や利害調整、そして最終的には各国の妥協の末に、現在の海洋秩序が誕生してきたと考えてよい】(文中より引用)
主にイギリスやアメリカといった大国に主導されながら、いかにして近現代の海洋秩序が成立してきたかを概観した作品。著者は、『世界を動かす海賊』などの著作で知られる竹田いさみ。
描き方によっては茫漠としてしまいそうな広大なテーマを、見事に約250ページに収めこんだ力作。時にコラム的な話題で読者を巧みに海の世界に誘いながら、海洋から見た世界史を丁寧に著述してくれています。
新書のお手本のような一冊☆5つ -
良書だと思います。
海の地政学ということで、海に関する歴史、条約、政治について書かれています。
本書を読むと、海を巡る諸問題が、国家が権益を求める姿勢と直結していることがよくわかります。
【第1章】
イギリスた海上の覇権を取っていく話です。スペイン・ポルトガルの支配を脱却し、オランダの勢いを削ぐために、航海法を制定し、東インド会社を設立して、保護主義に傾倒していく姿が描かれています。一方で、自らが覇権を握った後は、自由航行を標榜するという、イギリスらしい二面性も描かれています。
石炭補給のため、世界各地の港湾とその周辺地域を植民地にしていった話しや、電信網を整備して、情報を握っていた話しなどは、とても興味深かったです。
【第2章】
捕鯨とアメリカ、という話です。ペリー来航が捕鯨目的ということは、読む前から知っていましたが、深く理解することができました。
【第3章】
海洋覇権の掌握へ向かうアメリカということで、パナマ運河の開設、ウィルソン大統領の14箇条、ロンドン軍縮会議、そして太平洋戦争での犠牲と話が進んでいきます。ここで語られているのは、第一次世界大戦後、疲弊したヨーロッパの海軍力が相対的に落ちていく中で、アメリカが気にしていたのが日本の海軍力であったということです。
【第4章】
第二次世界大戦後、国連海洋法条約締結までの流れと、海洋法を構成する基本概念(領海、接続水域、EE Z、大陸棚)などを解説しています。また、海底油田を中心とした資源開発という観点が、交易や交戦という戦前までの長い歴史の中での主題に加えて登場してきていることを示しています。
【第5章】
中国を取り上げています。中国の領海法の問題点(周辺海域の島々の領有宣言、無害通航権を認めない姿勢、領海と接続水域の一体化)を指摘しつつ、ここ30年の中国の動きを概説した後、今後発生しうる問題点(海洋国土構想(領海・接続水域・EEZの一体化)、海外港湾管理というか租借地化、東シナ海における海洋進出)を指摘しています。
【第6章】
最後は日本の海上保安庁について記しています。一般的な概念(海上における警察権の行使組織)は分かっていましたが、具体的なことはあまり知らなかったので、色々と知れました。 -
15世紀大航海時代のスペイン、ポルトガルの海洋進出に始まる海の覇権の歴史。欧州の覇権争いから抜きん出た大英帝国、19世紀の捕鯨の時代にはアメリカが海の覇権を狙い、開国前後の日本への影響に触れている。瞠目すべきは、1982年に制定された「国連海洋法条約」に挑戦する中国の海洋戦略である。独自の国内法「領海法」掲げて、周辺海域の島々を領有すると宣言していることにある。海洋ルール(秩序)を無視し、国際関係に不協和音を奏でる中国の三つの戦略(①世論戦➁心理戦③法律戦)を目の当たりに見せつけられた。(N図書館蔵書)
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[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
この本は地政学というタイトルこそついているものの、一般的な地政学の本とは内容が異なっている。
この本では現在は一般的になっている海の権利がどのように確立してきたのかをはじめから説明している。
はじめはスペイン、ポルトガル、イギリス、オランダが海を制することで覇権国家となった歴史から始める覇権国家がアメリカへと移った歴史を解説している。
次に現在の海に関する国際ルールがどのような内容でどのように成立してきたのかを解説している。
最後に国際ルールに対し、自国のルールで挑戦している中国と日本の置かれた立場についてを解説している。
本書は単に海だけの内容ではなく、海をめぐり国家間がどのように動いてきたのかを解説する内容にんっている。 -
新書で読める海洋史。
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歴史からみても、海洋における権益は多くの国家が欲するものである。その具体例について、本書は英、米、中の目線から解説する。黒船は日本近海の鯨を捕まえる目的で来航したのは知らなかった。
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大航海時代のスペイン・ポルトガルから、オランダ・イギリス~イギリス~アメリカと移り変わる覇権争いを分かりやすく説明してくれる一冊。
途中の章で捕鯨が出てきて捕鯨?と思ったが、石炭から石油にエネルギーの主役が交替する間に鯨油の時代があったのだな。
扱っているテーマの幅が広く、公海や領海の定義の移り変わりや国連海洋法条約の位置付けなどが分かりやすく説明されている。