もののけの日本史-死霊、幽霊、妖怪の1000年 (中公新書)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026194

作品紹介・あらすじ

モノノケは、古代・中世において、正体不明の死霊を指した。病気や死をもたらす恐ろしい存在で、貴族たちを悩ませた。近世に入ると幽霊や妖怪と混同され、怪談や図案入りの玩具などで親しまれるようになる。近代以降、根拠がないものとして否定されつつも、怪異は根強い人気を博し人びとの興味をひきつけてやまない。本書は、モノノケの系譜をたどりながら、日本人の死生観、霊魂観に迫る

感想・レビュー・書評

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  • SUNDAY LIBRARY:本郷 和人・評『もののけの日本史』小山聡子・著 - 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20210112/org/00m/040/013000d

    小山 聡子 | 研究室紹介 | 学部学科 | 二松学舎大学
    https://www.nishogakusha-u.ac.jp/gakubugakka/faculty/kokubun/koyama.html

    もののけの日本史|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2020/11/102619.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      日本人の霊魂観―幽霊と「モノノケ」の系譜をたどる | nippon.com
      https://www.nippon.com/ja/japan-...
      日本人の霊魂観―幽霊と「モノノケ」の系譜をたどる | nippon.com
      https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g02176/
      2022/09/01
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【日本宗教史学者 小山聡子さんインタビュー】病原からエンターテイメントへ―「モノノケ」の1000年史|SOBANI
      https://soba...
      【日本宗教史学者 小山聡子さんインタビュー】病原からエンターテイメントへ―「モノノケ」の1000年史|SOBANI
      https://sobani.net/articles/mononoke-sennenshi
      2023/03/10
  • 遥か昔、恐ろしい存在であった「もののけ」が時代の移り変わりの
    中で、どう変容していったかを豊富な史料から解き明かす。
    序章 畏怖の始まり
    第一章 震撼する貴族たちー古代
    第二章 いかに退治するかー中世
    第三章 祟らない幽霊ー中世
    第四章 娯楽の対象へー近世
    第五章 西洋との出会いー近代
    終章 モノノケ像の転換ー現代
    主要参考文献、古文書・古記録の幽霊一覧有り。
    もののけ、モノノケ、物の気。
    古代は得体の知れない死霊の気が病気や死をもたらす存在でした。
    天皇や貴族は、僧や陰陽師の調伏や供養に頼っておりました。
    時代が経るにつれて「もののけ」は変容していきます。
    調伏を行う者や手段の変容・・・双六や囲碁、将棋が用いられたり、
    依代となる者がいたり、庶民には山伏や巫女、民間陰陽師が
    行ったりしますが、中世以降は医学の発展が関わってきます。
    幽霊と怨霊の区別が曖昧になっていき、
    近世では死霊の存在が懐疑的になり、また平和な世、
    刺激を求める対象になり、娯楽に取り込まれていきます。
    かつて怪異だった妖怪や化け物は草双紙で視覚化し、
    モノノケも、妖怪や幽霊、化け物との区別が明確でなくなります。
    近代、文明開化と西洋の影響に翻弄され、衰退し、或いは注目。
    現代、小説や漫画で描かれる姿は自然の中に追いやられます。
    そして、人間との対立と共生。『もののけ姫』も登場。
    様々なイメージとキャラクター化により、人に近づく存在に。
    物の気、物の怪、モノノケ。
    日本人の近辺にいたモノは、かつての畏怖の対象から、
    時代の変遷と共に、ヒトの精神、世情等の様々な変化を経て、
    ヒトに寄り添うまえに至るという、その変化の面白さを、
    教えてくれる内容でした。

  • 冒頭、藤原道長の「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」を引用し、著者はこう言う。「これほどまでに栄華を極めた道長は、周囲の貴族から怨みや嫉みも大いに買っている自覚があった。その上、病気がちで精神的にも脆弱だったこともあり、非常にモノノケを恐れていたのである」(「まえがき」より)。はてさてあの道長がそんなものを怖がっていたとは?と古代史に詳しくない私などは思ってしまうのだが、古代の人びとにとって人間の体を抜け出した霊魂(元に戻る場合は「生き霊」、元の体に戻らなければ「死霊」であり、いずれも「モノノケ」[物気])は主として病気をもたらすものとして恐れられていたらしい。道長自身の『御堂関白記』には怖がりすぎてあまりモノノケについて書かれていないらしいが、同時代の貴族の古記録(藤原実資『小右記』など)にはそう記されているとのこと。しかもそのモノノケ退治を自分自身でやることもあったとは、道長のイメージもだいぶ変わってこようというものである。また『小右記』に登場する油瓶の形になったモノノケの話はおそろしくもありおそろしくもなしであるが、一般に「鬼」の形に近似することも多かったモノノケがさまざまな姿を取って描かれていることも面白い(pp.68-75)。

    日本人の死生観、霊魂観がやがて中世、近世、近代、そして現代に至るまでどのように変わって来たのかをちゃんとした歴史学の立場(要するに文献史学の立場)から繙いていく本書は、著者の専門分野が中世ということもあって、古代の終わりから中世を扱う第1章から第3章までが圧倒的に面白く読ませる。とくにモノノケを調伏する方法などを詳しく辿った第2章などは知らないことだらけで非常に面白かった。上段でも述べたが、頭の中で考えたことではなく、そうした具体性の中にこそ死生観や霊魂観が現れてくるのであろう。その点、第4章で近世の平田篤胤がモノノケ調伏を法師どもの謀略とする(p.185)のは、まさに「近代的」すぎてつまらないとも言えよう。

  • まじめな研究書、というか研究結果を一般にも提供しようという目的で新書にしたのだと思います。新書なのでしょうがないと思いますが、図版が小さくて見にくいのが残念なところです。個人的に期待していた内容ではなかったですが、もののけがいつ出てきてどのようにして消えた・変容したかはわかりました。なぜそうなったのかは自分で考えろということですねはい。

  • 「もののけ」という言葉が何を意味し、どう使われてきたか
    を膨大な資料を基に通史的に記述した労作。古代日本書紀
    から現代もののけ姫までその視野は広くよくここまでまとめ
    あげたものだと感心するのだが、どことなく辞書の定義の
    問題に終わっている印象があり損をしていると思う。歴史
    全体を俯瞰したまとめと考察を一章別に設けてもよかったの
    ではないだろうか。参考文献と年表の充実も高ポイント。

  • (後で書きます。参考文献リストが非常に充実)

  • もののけ、奥が深い。

  • 「もののけ」という語の表す意味を通史で解説していく本。
    モノノケというと、妖怪やお化けという語とイコールである、という認識が現代では大半を占めていると思われますけど(実際、私も妖怪が漢語でモノノケが和語なのかな?ぐらいの認識しかなかった)、そもそも古代においてはモノノケとは物の気であり、人間に病や災いをもたらす物(=霊)の気であって、怪異そのものを指すのではなく、あくまで原因が判明しない悪い気配であり、原因は神や怨霊である可能性もあった、というのがまあ、語が違うんなら意味も違うわなと思い、なるほどという感じでした。(古代においては、幽霊という語もまた意味が異なり、死霊だけではなく、死者をも指す、など、幽霊、怨霊等の違いについても記載があった)
    その後、死霊を鬼とする中国の影響を受けモノノケは鬼の姿で表されるようになり、中世では憑いている神や怨霊自体をモノノケと呼ぶようになる。近世ではいよいよ妖怪と同一視されるようになり、現代においては戦後のゲゲゲの鬼太郎に登場するモノノケのように妖怪の一種として時代遅れの妖怪という扱いを受ける。
    興味深いなと思ったのは、モノノケの地位の零落は人々の信仰心の減少と結び付いており、平安時代はモノノケに対して本気で恐れ、調伏や加持祈祷等によって必死に抗おうとしていたのに対し、時代を下れば下るほど、モノノケや神等の目に見えぬものに対する恐れが薄れ、江戸には「ないものは金と化物」といった諺が現れるまでになるという部分で、江戸において怪談話や浮世絵が多く作られたのは信心からではなく(実在を信じているのであれば、平安時代のように恐れ、実際の対処に走る筈であるから)あくまで娯楽のためであるというところ。
    明治期には西洋からの影響を受け、現代においては映画「もののけ姫」以来、モノノケは森などの自然における守り神や精霊のような神秘的立ち位置を得、「妖怪ウォッチ」「夏目友人帳」等、モノノケを含む妖怪は人間の友人(やペット)としての親しいものとしての立ち位置を得ていく過程は納得のいくものでしたが、最後が少し駆け足だったなという印象です。
    逆に最初の古代におけるモノノケや霊の定義についてが冗長な部分があり、少し読みにくいところもあったな~という感想でした。

  • もののけ・幽霊・妖怪。現代ではこれらの語はほとんど区別なく用いられているけれど、語の歴史を遡っていくと、古代、中世、近世とそれぞれの時代で意味が異なることを豊富な史料を元に明らかにされていてもう圧巻!すごい…これがプロの研究者の仕事…(ごくり)

    中でも面白かったのは碁や双六がもののけの調伏に用いられたという箇所。

    私は大河ドラマが好きなので、今後大河で碁や双六をする場面があったら、そのシーンの意味を一層の広がりを持って観られそうです!

    著者も「はじめに」で書かれてますが、もののけ・幽霊・妖怪の差異について通史でまとめている論考はこれまでないようなので、そんな貴重な労作を初学者にも優しい新書で出してくださって、ただただありがたい気持ちです。

  • もののけと一口に言っても、色々と歴史的に見ると変わってきているんです
    新書という内容にも関わらず、膨大な資料のレビューをされている(ここらへんは中公は新書といえどさすがの重厚感)
    他方で、「モノノケ」にかかる歴史資料のレビュー的な要素が強く、あまりこの分野に精通していない自分からすると結構文献自体がわからず、非常に微細な差異をつらつらと説明していく感じになっていて「面白さ」という視点でいうと今ひとつな感じ。
    この分野を先行する学生さんが、自分の論文のとっかかりにする。
    とかそういう感じではすごく役立つ書籍だと思う。

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著者プロフィール

日本女子大学人間社会学部社会福祉学科教授。
障害児者施設3か所にて13年間勤務。ミシガン州立大学教育学部大学院リハビリテーションカウンセリング専攻修了(MA)。同志社大学社会学研究科社会福祉学専攻博士課程後期修了(Ph.D. 社会福祉学)。
[主な著書]
『援助論教育と物語――対人援助の「仕方」から「され方」へ』(生活書院、2014年、単著)、
『SOGIをめぐる法整備はいま――LGBTQが直面する法的な現状と課題』(LGBT法連合会編、かもがわ出版、2023年、共著)など。

「2024年 『演劇/ドラマの手法とソーシャルワーク教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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