猫に時間の流れる (中公文庫 ほ 12-6)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122041790

感想・レビュー・書評

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  • “猫は人間の話しているのを聞いている…深刻な話なのか気楽な話なのかというような話の内容の帯びている色合いあるいは気分のようなものは聞いている”“猫は「わかっているのと同じだけわかっていない」”<br>
    保坂さんさすがです。イカす。

  • 保坂さんで猫に時間の流れるが一番好き。キャットナップはよくわからないから車に入れといてたまに読もう。
    猫が知らないところで生きてるのと死んでいるのに意味の違いはないとか。死んだ人間が残すわからなさは動物の場合には生きているあいだも常にあるとか。
    あとがきまで読んでてたのしい。

  • 保坂和志「猫に時間の流れる」 http://www.chuko.co.jp/bunko/2003/03/204179.html … 読んだ、よかった!読むたび思うけどこの人すごい。同じアパートの住人と野良猫で一編(表題作)と病院敷地内の野良猫20匹の去勢に乗り出す一編(キャットナップ)。個人と世界の関わり方を小説で示した哲学本(つづく


    ここでも進行は平坦で目の前の事象だけ描写し会話で世界観を提示する。神の視点を用いない。この人は猫を良く判っているなあ。野良として死ぬのも運命。かわいそうという気持ちのなんと安直で無責任ななことか。同情は自己満足でしかなく対象のためではないことを理解できない人が多すぎる(おわり

  • 猫に時間の流れるとキャットナップの2作。
    猫に時間の流れるは猫を中心にした話、キャットナップも猫はたくさん出てくるが、人間もよくでてくる。
    全体的に登場人物が気楽というかゆるいというかそんな感じで個人的にとても好き。

  • あたしは猫を飼っていて、だけどそんなに猫が大好き、というわけではない。人には猫を可愛がっているとかいわれなくはないけれど、いわゆる世間の猫好きとは自分は違うように思っていて、ただそう言うよりはもう無条件に好き好き大好き、と言った方が生きやすい。だからあまり人には言ったことがなかった。

    自分の飼い猫の世話をするのと、その辺にいる猫をなんでもかんでも可愛がるのとは、少なくともあたしにとっては天と地ほどに違っているのだ。

    だから猫好きの書いた本は読んだことないし、読む気もしなかった。この本だって多分、決して手にしなかったろう。もしあたしの本ソムリエがこういわなかったら。

    「この本、あなたは読んだ方がいい気がする」

    面白かったよ、でも、猫好きだったよね、でもない。放り投げるようにあたしに無造作に与えられたその言葉が気になって、つい手にしてしまったのだ。

    ソムリエがあたしの猫への思想をわかっていたとは思わない。ところがこの本はことごとく、あたしの想像を超えた猫本だった。


    「猫をちゃんとかわいがっている飼い主だったら多少の差はあっても猫の経験することを整然としたものにしようとしているはずで、複雑にしようとしない。叱りつけるような態度でほめたりしないし、楽しい時間は楽しい時間、静かな時間は静かな時間という風に区別する。」

    そうなんだ。あたしが猫と暮らすようになって思ったことそれは、言葉が通じないこの小さいものたちには、常に一貫した態度で臨まないと何も理解されないこと、伝えるには態度、それも極めて明快でクリアでないと学んでくれないイコール苦労が自分に返ってくる、と言うことだった。

    あたしはもともと、ものすごく自分ルールを持っている人で、相手も同じに理解するのだと思い込んでいたから人付き合いは下手くそだ。でもあたしが少しでも相手を斟酌できるようになったのは、猫のおかげとしかいいようがない。

    あたし以上に周りを気にせず、ダメと言われたことをか理解するけれどあえてそれをするひねくれもの。気紛れであたしのことなんかこれっぽっちも気にしない、あたしの同居人。

    あたしは奴らにとってはご飯の運び屋に過ぎなくて、でもあたしはそれでも仕方ないと思ってる。海を眺めるみたいに猫の仕草を楽しみ、たまに撫でる、その対価としてそのくらい、問題ない。

    この本はそんなあたしに、ぴったりだ。何も押し付けずに何もあたしに求めない。猫を好きになれともいわない。

    猫には哲学も、あるんだな。

    そんな本。

  • 2作収録しているのですけど、両方とも非常に好きです。「キャットナップ」に関してはよい天気の日に日向ぼっこしながら読むのに非常に向いているというか、もう何度も読んでいるのですが、そのシチュエーションていうのは大体よい天気の昼間というだけのことです。先日、相棒さんとひょんなことから本の話になり(最近、相棒さんは漱石の「こころ」を読んだり、読書傾向が明らかに変わってきたこともあり)、「保坂さんて、苦労したことない人だと思うんだけど。本質的に。きっと「大変だ」「つらい」とか言っててもいつだって誰かが助けてくれたりして生きてきた人みたいに思う」というようなことを言っていた。確かに保坂さんの作品は物事に対する基本的な姿勢がとても楽観的であるが、それを(作者自身に対する)そういう受け止めに飛躍するというのはどうかなぁと思いながら話を聞いていた。それだけの話です。結構、そこからいろいろと考えたりもしたんだけど、それはまたいつか。(06/4/10)

著者プロフィール

1956年、山梨県に生まれる。小説家。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2018年『ハレルヤ』所収の「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。主な著書に、『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。

「2022年 『DEATHか裸(ら)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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