世界の歴史 (21) (中公文庫 S 22-21)

  • 中央公論新社
3.53
  • (1)
  • (8)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 105
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050198

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • NDC209
    目次
    第1部 啓蒙のかがり火、民衆のめざめ(ジェファソンの私邸から;植民地建設の息吹き;植民地社会の多様化;英本国に抗議する人びと;独立へ、内部革命へ ほか)
    第2部 革命の嵐がヨーロッパをつつむとき(大西洋の両岸を革命の波が洗う;一七八九年の燃える夏;絶対王政が頑迷だったのか;渦巻く出来事―三部会から憲法制定へ;革命の軟着陸は可能か ほか)

  • アメリカ独立革命とフランス革命を扱う。「アメリカ」というものがどのように誕生したのか? きっかけはどこにあったのか? そして、そこに含まれる独立の要素と革命の要素についても取り扱う。フランス革命を扱った部分はまさに入門とも言える優れた概説。そして、当時の人々の目線でその展開が追われている。現代を生きる私たちはフランス革命の推移を知っているけれど、当時の人はそれを知らずにその時代を生きていたという当然の視点である。大西洋を挟んだ相互の繋がりも1部・2部ともに触れられている。入門としておさえておきたい一冊。

  • フランス革命を知るために図書館で借りたけど、アメリカの独立史も興味深かった。
    アメリカの連邦制は植民地時代に各都市がそれぞれ異なる統治だったためなのだと知ることができたよ。それが現在まで続いているのだから、よく出来たシステムだね。
    フランス革命は明治維新とは比べ物にならないほど流血が多かったみたいだね。明治維新と異なり、参考にできそうな事がほとんどなかったのが原因だろうか?フランス革命と違って、明治維新の立役者達は下級とはいえ武士だったからその辺に違いが出たのかな。
    ナポレオンの登場は共和制を脅威に感じた周辺諸国からの侵攻に対抗するためだったのは初めって知ったよ。その結果、血縁による統治が行われそうになったのはいいのだろうかと思ったが、国民の財産、土地の保有を認めていた辺りで妥協できたのだろうか。

  • 世界に衝撃をあたえ、近代市民社会のゆく手を切り開いた二つの革命は、どのように完遂されたのか。思想の推移、社会の激変、ゆれ動く民衆の姿を克明に描写し、神話化された栄光と理想だけでなく、現実との矛盾や葛藤も明らかにする。

  • 良いシリーズなので何度も目を通している。が、アメリカ理解について、決定的に足りない視点が一つだけある。アメリカにおける「宗教」の重要性がそっくり抜け落ちているのだ。

    例えば、「大覚醒」についての記述は非常に淡白なもので、その重要性についてほとんど吟味していない。本シリーズは「通史」が目的なので考察の重要度は低くてもいいかもしれないが、これはあんまりだ。
    人々の間で宗教的熱狂が起きることが「アメリカ」がアメリカたるゆえんであり、現在においてもキー概念であることは中公新書の『アメリカの宗教右派』で指摘されているとおり。なぜ未だにダーウィニズムへの拒絶がまかり通る強力な層が存在しているのか。その力はどれほどのものであり、どこから来て、どのような影響をアメリカ社会にもたらし続けるのか。

    この問いの大元が「大覚醒」にある。「大覚醒」がヨーロッパを切断し、アメリカナイゼーションの口火を切ったのではないのか。本書にはただ「熱狂」として片づけられていた大覚醒であるが、しかし、その発生と広がり方には多くのアメリカ的な特徴がある。他の誰に言われるのではなく、「私」の判断で神と向き合うという自己吟味。誰でも覚醒に至ることができるという平等主義。人々の自由で自発的な団体の形成などである。つまり大覚醒とはまったくアメリカ独自の運動であり、一般大衆を駆動原としたアメリカ化運動であったのではないか。

    「もし大覚醒がなかったら、アメリカのキリスト教は「旧世界」のキリスト教を移植したままのものとなっていたであろうし、そうなればアメリカ文化も政治も経済も外交も今とはまったく異なった姿になったことであろう。」(森本. 2009)

    実際には「大覚醒」こそがアメリカ独立を準備し、ひいてはアメリカの特異性(平等主義、自発的結社、自己吟味、反知性主義etc)を準備した。そのことを見落としている、日本のアメリカ学の一端がよくみえてしまう一冊。

  • アメリカの独立までとその後の苦闘、またアメリカの独立がフランスの革命に与えた影響など相関関係。

    (北)アメリカ大陸は初期、環境と先住民とのせめぎ合いが続いた。食糧は先住民からトウモロコシの栽培を教わってしのいだ。また、ゲリラ的な先住民の攻撃に備えてミニットマンという部隊が発達するなど[p33]、フィリップ王戦争の集結まで過酷な戦いが続いた(決して欧州側が有利であったわけではない)。このミニットマンやゲリラ戦法は英国軍との戦いで生かされることになるだろう[p128]。

    その後、英国本国が「有効なる怠慢」政策をとるなど重商主義的な規制があまり厳格でなかったこともあり[p42]経済的に非従属的に発展し得た。これにより、エリート層が植民地総督に依存する必要がなくなり(脱/非パトロネージ[p75])、次第に本国との関係は契約的なものになっていった。

    このような北アメリカ植民地の発展は、民衆の力も強め、しばしば反乱がおき、植民地政府が取り締まりきれないことも多かった。「民衆が一つの政治勢力として台頭」[p100]してきたのである。独立は結果であって、当初から目的であったわけではなく[p98]、このような抗議運動のダイナミズムの結果であった。

    独立までの戦いと同じかそれ以上に、独立後も過酷であった。諸州がどのようにまとまるか、それぞれの利害の対立や財政の問題を乗り越えなければ諸外国からの干渉を許すことになるだろう[イギリスの思惑[p157]、各州の単独で実施した関税での軋轢[p168]など]。戦後の財政危機、それにともなう反乱(シェイズの反乱[p162]など)を経て、ようやく合衆国憲法が批准[p183]。しかし僅差だったために定着するか不安。これは現代でもアメリカの政治思想が論争を通じて生み出されることにつながってゆくだろう[p181]。

    その後、リパブリカン(共和派、ジェファソン) とフェデラリスト(連邦派、ハミルトン)の対立構造[p191]や内部対立、英国との再戦など[p230]を経て、国としてまとまっていく。すんなりと「独立します」「はい、わかりました」とはいかない葛藤。

    フランス革命の壮絶さ、悲惨さは圧倒的で、教科書でも比較的多くのページを費やされることが納得できる。それ以前には王政に従属していた人々が手探りで政府を運営していくための犠牲だとしても、権力の中央の人々がこれほど死ぬというのは異様[p378]。最後には革命家と呼べるようなひとびとはみんな処刑されて[テルミドールの反動、以後p397]、軍部の力が増した。そのなかでナポレオンが頭角をあらわし、総裁政府を倒し[p420]、独裁体制を築いた。

    また、このフランス革命の衝撃はアメリカの民主化をより促進させもした[p205]。まさに18世紀の末から19世紀の初頭にかけてのこの時代は「革命の波に洗われ」たのである[p240]。

  • 革命と一言で表せても、その中身は非常に複雑なせめぎあいであることが分かります。


  • アメリカへの植民値化、独立のことを知ることができてうれしい!

    ト、2009.8.11

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

第ニ巻編著者。

「2005年 『変貌するアメリカ太平洋世界(全6巻)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

五十嵐武士の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×