ぼくが愛したゴウスト (中公文庫 う 25-4)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050600

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  • 「ぼくは十一歳の夏まではぼんやりと生きていた。」

    初めて、少年が一人でコンサートに行ったときからだった。帰り道に駅で人身事故を目撃してから,世界はどこか違っていた。この不思議な世界、少年はどこへ向かうのか。残酷で理不尽な世界に立ち向かう少年の物語。

    「心がない人たちに、心を期待しても、無駄です。」

    タイトルを見て、誤解しないようにあらかじめ説明しておくと、少年が幽霊と友情を育むような物語でもないし、少年時代を懐かしむような物語でもない。“心"という曖昧で証明困難な存在について考えさせられるお話。

    物語は大きな起伏は少なく、ただ、ゆらゆらと漂う。この、どこに行き着くのか予測不可能な展開に引き込まれます。何より少年らしい感受性の豊かさと透き通った純粋さが心を打つ。物語の設定や結末も含めて、こういう世界観、僕は好きです。

    僕たちは相手の心を直接知ることはできないけど、相手にも自分と同じ心があると思っている。けど自分以外のものに心があることをどうやって証明できるのか。“心"っていったいなんなんだろう。この作品はきっと万人受けする内容ではないと思います。けど、僕はこの作品に出会えてよかったと”心”から思います。

    この作品を読んで、僕と同じようにこの作品を気に入ってもらえる人がいたらいいな、とうれしいです。

  • 観察する者と観察される者。
    信じていた世界は簡単に覆されるし裏切られる。
    その世界はとても残酷で理不尽で儚くて美しいように感じる。
    私たちの目に見えるものなんて何の確証もなく不安定なものであると思った。

  • 27:これは……めっちゃ好きなんだけど、中盤の野球のシーンがあまりに幸せすぎて、逆に不安を感じてしまって、うあ〜! と転げまわりたい気分でした。どこかずれた世界の中で、自分だけが「正気」なのだとしたら、そして、目に映る世界がすべてゆめまぼろしなのだとしたら。ゆめまぼろしを生み出しているのは、その「正気」、自分そのものでしかない、と。決してハッピーエンドではなく、むしろ後味悪い系だと思うのですが、ただそれだけではなく、ずっしりとした読後感は打海作品ならではだと思います。

  • きっとこの世界は誰かのゴウストなんたろう。

  • 人生初。1人でコンサートに行く羽目になった翔太。
    その帰り道、駅で人身事故に遭遇。
    自宅に戻った翔太だが、いつもの家族なのに何かが違う。
    漂う腐卵臭。パラレルワールドに迷いこんだ翔太は・・・
    何かのきっかけでパラレルワールドに紛れ込むって話は
    よくあるとは思うんだけど、どうやらそういうSFチックな
    話とはちょっと違うようです。
    元の世界と、こちらの世界で決定的に違うのが
    心の存在だったりする。
    ネタバレになるから詳しく書けないけど、結末が
    予想外でした。考えると怖いなぁ~。
    文章が読みやすいので、一気に読めます。

  • 途中、とても残酷な物語だと思って読み進むのがイヤになったけど、思いがけないラストがとてもよかった。
    翔太のぽわんとした子どもらしさのかなかに、すっとのびた強さがラストに向かって際立っていき。ほんとうに最後が良かった。

  • ほかの打海文三の作品同様、これも「過酷で、理不尽な状況に投げ込まれた何者かが、必死で生き抜く話」だ。打海文三はいつだって、物事の本質を見抜く。意地悪く、容赦なく、
    「結局、お前がくよくよ悩んでいるのはこういうことではないか」と言ってくる。その指摘が的確であろうと、的外れであろうと僕は姿勢を正す。

    (『3652』伊坂幸太郎エッセイ集 p.136より)

  • タイトルや冒頭からは、この作品の魅力には気付かない、というのがよく分かる。

    結局のところ、問題は何一つ解決しない。
    しかし、この作品に関しては、解決しないことでより深い意味を持ってくる。

    非現実でありながら人間の真実に迫ろうとした作品というのも、なかなか。

  • 完全に伊坂経由で手に取りました。虚構と現実の狭間みたいな。伊坂も言ってたように結末は思いもよらない形でおお、そうなるのかと感心。ただのSFじゃないし単なる冒険譚でもない。カテゴリーに区分できないような本でした。ストーリーも面白くかつ解説が伊坂だなんて銀座のフレンチフルコースくらい贅沢でした。最高です。

  • 小学生が迷い込んだパラレルワールドの冒険物かと読んでた。中盤以降から心とはみたいな哲学的な話になり、終盤以降はなぜそうなる???みたいな小説。夢落ちでも、ハッピーエンドでもなく、解も与えられずモヤモヤ感が半端ない。幻想の中でだけでも生き続けられて、成長して恋もできている誰かを書きたかったのかな?

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著者プロフィール

1948年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。92年『灰姫鏡の国のスパイ』が第13回横溝正史賞優秀作を受賞し作家デビュー。2003年『ハルビン・カフェ』で第5回大藪春彦賞を受賞。07年10月逝去。

「2022年 『Memories of the never happened1 ロビンソンの家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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