菜種晴れ (中公文庫 や 49-1)

著者 :
  • 中央公論新社
3.37
  • (8)
  • (32)
  • (42)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 278
感想 : 29
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054509

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 菜種農家の家に生まれ、菜種油の問屋へ養女にいった一人の女性、二三の半生記。
    彼女はとても賢く、誠実に生きる姿は見ていて気持ちいい。
    でも、ここまで苦難が積み重なるとそこまでしなくても…と思ってしまう。
    この人の作品は登場人物が積み重ねてきたものを最後に崩してしまうことが多い気がする…。
    ラストはさわやかな希望のある描写だったけど、彼女がもっと具体的に幸せになる姿を見たかった気もする。
    そして天ぷらがとてつもなく食べたくなるので、そこも注意。

  • はじめて読んだ作品、『ジョン・マン』が面白く、続けて読んだ『あかね空』も読み応えがあった、山本一力。その勢いのままに、文庫版が出ていたこの作品も、読んでみることにしました。

    舞台は1830年代、天保年間から始まります。
    今の千葉県の勝山に、菜の花を作る農家の三番目の子供として生まれた女の子、二三(ふみ)が主人公です。

    豊かではないながらも、勝山の自然の中で伸び伸びと育った二三。
    しかし五歳の時に、深川で菜種油を扱う大店に、跡取りの養女としてもらわれることになって・・・という始まり。

    江戸で暮らすようになった彼女が、1860年代の幕末にかけて起こった出来事に翻弄されながらも、強い心を持って生きていく様が、描かれています。

    読んでいてまず感じたのが、幕末という時代の江戸は、地震や大火事といった大きな災害が、続けて起こったのだなあ、ということ。
    そして諸外国からの干渉を受けて揺れる幕府の治世の下で、江戸に住む人々がどのような影響を受けたのかを、庶民目線で実感することが出来ました。

    「油」という題材で、このような作品を書くことが出来るのですね。
    後にかかれた『ジョン・マン』に通じる世界を、感じました。

    他にも多くの作品を発表している作家さんなので、興味をもったものから読んでみることにします。

    『あかね空』山本一力
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/416767002X
     
     .

  • 菜種農家に生まれた少女の、激動の30数年間。
    まっすぐに生きる人々に襲い掛かる、数々の災難。辛すぎる。
    実の両親、養父母、手習いの師匠、料理の師匠から教わる、人生の教訓が素晴らしい。
    でも、もっと幸せな人生を読みたかったな。

    「しくじりをおかしたときは、言いわけを口にする前に詫びろ。
    口のなかで、もごもごと言っていないで、はっきりとした声で詫びろ。
    詫びの言葉を口にしている、自分にも伝わる。 詫びたことをしっかりと自分の身体に取り込んでおけば、同じ過ちをおかさずにすむ。」

    実父の言葉がしみました。

  • いい作品なのだが。かなり冗長かな

  • 山本一力さんの江戸時代女性の半生記は大好き。
    また一力さんの描く女性は本当にできた人が多い。

    自分には真似できない主人公の人物像なだけに憧れを持っていつも読んでいる感じ。

    周囲の人のためを思って動いていると、それは自分に返ってくる。
    情けは人のためならず。

    江戸時代の義理人情も結構好きだったりします。

  • 「三日続いた暴風雨は畑に容赦のない爪あとを残して去って行った。ところが、菜の花の緑色の茎は、土にしっかりと根を張り、葉は一枚もちぎれておらず、元気に朝日を浴びている。」という序章が、すぐ波乱万丈の人生を前向きに生きる主人公「二三」の姿そのものとなっているのに気付く。

    5歳で深川の大店へ養女に迎えられた農家の娘が、困難に立ち向かい、実母に教わった「絶品のてんぷら」は人々をうならせる。爽快な人情時代小説。山本一力作品に共通するひたむきな生き方の形。
    ただ、欲を言えばもう少し終章を膨らませて欲しかった。「おかね」が急にでてくるのも違和感がある。ハッピーエンドを望んでいる訳ではないがもう少しホッとさせて欲しい。
    いい作家だが、もう一つ何か足りない気がする。
    昔読んだ直木賞「あかね空」や「八つ花ごよみ」などをもう一度読み返してみたい。

  • もともとは新聞連載された作品なのでしょうか、もっとコンパクトに展開できたはずのお話にやや贅肉が目に付いてしまいます。もちろんお約束の「苦境に負けずに立ち向かう」登場人物には勇気づけられますが、人情時代小説の魅力を教えてくれた作者なので期待が高かった分物足りない読後感が残ります。

  • 和製版「風と共に去りぬ」?!
    タラの農園と菜の花畑の違いはあるけど、主人公の女性が苦難に立ち向かう姿はどことなく似てるかも。
    物語の前半が丁寧に書かれていて、後半は詰め込みすぎの感があるのがちょっと残念。

  • 88 4/7-4/9

  • 房総勝山から江戸に養女にもらわれた二三。
    大火事で、地震と火事で、住む町が平べったくなる
    いろいろな災難にあっても前をむいて歩き続ける彼女を見ていると
    今の日本、被災された方々に重なるところがあると感じる。
    一面の菜の花畑 から始まり 
    一面の菜の花畑 で終わる
    やや お利口さん過ぎるとも思うけれど、
    彼女のように前向きに生きて行きたい

著者プロフィール

1948年高知市生まれ。都立世田谷工業高校卒。旅行代理店、広告制作会社、コピーライター、航空関連の商社勤務等を経て、97年「蒼龍」でオール讀物新人賞を受賞。2002年『あかね空』で直木賞を受賞。江戸の下町人情を得意とし、時代小説界を牽引する人気作家の一人。著書多数。

「2023年 『草笛の音次郎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本一力の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×