- Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122054509
感想・レビュー・書評
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はじめて読んだ作品、『ジョン・マン』が面白く、続けて読んだ『あかね空』も読み応えがあった、山本一力。その勢いのままに、文庫版が出ていたこの作品も、読んでみることにしました。
舞台は1830年代、天保年間から始まります。
今の千葉県の勝山に、菜の花を作る農家の三番目の子供として生まれた女の子、二三(ふみ)が主人公です。
豊かではないながらも、勝山の自然の中で伸び伸びと育った二三。
しかし五歳の時に、深川で菜種油を扱う大店に、跡取りの養女としてもらわれることになって・・・という始まり。
江戸で暮らすようになった彼女が、1860年代の幕末にかけて起こった出来事に翻弄されながらも、強い心を持って生きていく様が、描かれています。
読んでいてまず感じたのが、幕末という時代の江戸は、地震や大火事といった大きな災害が、続けて起こったのだなあ、ということ。
そして諸外国からの干渉を受けて揺れる幕府の治世の下で、江戸に住む人々がどのような影響を受けたのかを、庶民目線で実感することが出来ました。
「油」という題材で、このような作品を書くことが出来るのですね。
後にかかれた『ジョン・マン』に通じる世界を、感じました。
他にも多くの作品を発表している作家さんなので、興味をもったものから読んでみることにします。
『あかね空』山本一力
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/416767002X
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いい作品なのだが。かなり冗長かな
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山本一力さんの江戸時代女性の半生記は大好き。
また一力さんの描く女性は本当にできた人が多い。
自分には真似できない主人公の人物像なだけに憧れを持っていつも読んでいる感じ。
周囲の人のためを思って動いていると、それは自分に返ってくる。
情けは人のためならず。
江戸時代の義理人情も結構好きだったりします。 -
「三日続いた暴風雨は畑に容赦のない爪あとを残して去って行った。ところが、菜の花の緑色の茎は、土にしっかりと根を張り、葉は一枚もちぎれておらず、元気に朝日を浴びている。」という序章が、すぐ波乱万丈の人生を前向きに生きる主人公「二三」の姿そのものとなっているのに気付く。
5歳で深川の大店へ養女に迎えられた農家の娘が、困難に立ち向かい、実母に教わった「絶品のてんぷら」は人々をうならせる。爽快な人情時代小説。山本一力作品に共通するひたむきな生き方の形。
ただ、欲を言えばもう少し終章を膨らませて欲しかった。「おかね」が急にでてくるのも違和感がある。ハッピーエンドを望んでいる訳ではないがもう少しホッとさせて欲しい。
いい作家だが、もう一つ何か足りない気がする。
昔読んだ直木賞「あかね空」や「八つ花ごよみ」などをもう一度読み返してみたい。 -
もともとは新聞連載された作品なのでしょうか、もっとコンパクトに展開できたはずのお話にやや贅肉が目に付いてしまいます。もちろんお約束の「苦境に負けずに立ち向かう」登場人物には勇気づけられますが、人情時代小説の魅力を教えてくれた作者なので期待が高かった分物足りない読後感が残ります。
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和製版「風と共に去りぬ」?!
タラの農園と菜の花畑の違いはあるけど、主人公の女性が苦難に立ち向かう姿はどことなく似てるかも。
物語の前半が丁寧に書かれていて、後半は詰め込みすぎの感があるのがちょっと残念。 -
88 4/7-4/9
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房総勝山から江戸に養女にもらわれた二三。
大火事で、地震と火事で、住む町が平べったくなる
いろいろな災難にあっても前をむいて歩き続ける彼女を見ていると
今の日本、被災された方々に重なるところがあると感じる。
一面の菜の花畑 から始まり
一面の菜の花畑 で終わる
やや お利口さん過ぎるとも思うけれど、
彼女のように前向きに生きて行きたい