あの家に暮らす四人の女 (中公文庫 み 51-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066014

感想・レビュー・書評

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  • なんとも…感情移入のし難い物語りでした。
    コレはもう、趣味嗜好、価値観、生き方のズレ。
    恋愛でもホラーでもミステリーでも自分とかけ離れたところにある物語なら素直に楽しめるのに、コレは近い…近すぎる。
    隣の家の話かな?ってくらい近い。
    だから反発してしまう…そんな感じ。
    ただの捻くれ者やないかい笑

    先祖が生んだ財産で生計を立てる母と刺繍を生業とする娘が暮らす老朽化の進んだ広いお屋敷。
    そこにともに暮らす血縁のない保険会社勤めの2人の女。
    これは気ままで楽しそう♪
    確かに4人の暮らしは気ままで楽しそうに見えるけど、山田さんとか神田くんとか本条とか…登場人物としての男性陣の扱いが雑。
    無理矢理、男性を遠のけて女4人の楽しい暮らしに仕立て上げてるという感じがしてならない。

    ストーリーは面白いのにエピソードにいちいちつまづいてしまう。
    山田さんにこそこそする理由ってある?
    鍵のかかった部屋に家主に内緒で入るってどうなの?
    本気で本条に困ってないよね?
    といろんな違和感があって疲れました^^;
    きっとホントはほのぼのする本なんだろうなぁと思うのだけど…。捻くれ者でごめんなさい。

    2021年9月4日

    • さてさてさん
      なつこさん、こんにちは。
      私も直近でこの作品読みました。
      私はこの作品は、しをんさんのエッセイの延長線上の世界観の作品だと理解して読んだ...
      なつこさん、こんにちは。
      私も直近でこの作品読みました。
      私はこの作品は、しをんさんのエッセイの延長線上の世界観の作品だと理解して読んだので、もう痛快だったらなんでもごじゃれ、と割り切って読んでしまいました。もっと弾けてほしい!という感じです。
      でも、これはエッセイじゃないですし、小説と考えると、なつこさんの書かれている三つの”?はおっしゃる通りだと思います。全くもって同感です。
      とてもなるほど…と感じてしまってコメントさせていただきました。
      ありがとうございます!
      2021/09/04
  • 三浦しをん「あの家に暮らす四人の女」(2015年7月単行本、2018年6月文庫本)。
    南阿佐ヶ谷の善福寺川近くの150坪もある古い洋館に暮らす4人の女達の春から夏にかけて起こった様々な出来事の物語。キャラクターが全く違う4人の起こす騒動、ゆるゆるした展開に本が進まず、睡魔に襲われながら読んでいると、いきなり殺人事件を思わすミイラが出てきたり、それが河童のミイラであったりして、なんなんだこの物語はと馬鹿らしくなったりもしながらこれをどう収めるのかと興味津々になったりもしながら嵌まっていくのだ。

    登場人物はまずこの洋館の持主である①牧田鶴代(70歳近い)、裕福な名家に生まれ、謹厳実直、自由奔放な性格で左翼活動家らしき男と結婚するが娘が生まれて愛想を尽かしほどなく離婚、家を追い出して一人で娘を育てる。
    その一人娘の②牧田佐知(37歳)、刺繍作家で自宅で刺繍教室を開いている。この物語の主人公だろうと思われる。
    5年前に渋谷で待ち合わせた人と人違いで知り合い、牧田家に同居することになった同い年の③谷山雪乃(37歳)、西新宿の保険会社で働いている。住んでいた古いアパートの水漏れで困っているところを佐知に誘われて洋館の2階の一室の住人となる。
    その後雪乃の会社の後輩で佐知の刺繍教室の生徒でもあった④上野多恵美(27歳)がストーカーと化した元彼から身を隠すため4人目の住人となる。こうして同居することになった4人の女達の六つのエピソードを交えた物語が語られるのだ。

    実はこの館にはもう一人の住人がいる。鶴代の祖父が洋館を建てた時に納屋兼書斎として作った表門近くに作った離れに作男兼執事のような存在の男が夫婦と子供の3人で住み始め、以来60年あまり経ち、夫婦はとうに亡くなったがその子供が住み続けた。
    その子供⑤山田一郎も80歳になっていたが、今も守衛小屋と呼んでいるその離れに一人住んで二人を守っていると勝手に自負している。
    山田一郎は若い時も貿易会社に勤めながら守衛小屋から出勤、帰宅する生活を定年まで続け、定年までは2万円の家賃、定年後は1万円の家賃を払いながら、庭仕事や大工仕事などやって二人を守るという使命感にずっと燃えている変わった人間だ。
    居候とも使用人とも家族とも違う微妙な立ち位置なのだが、これが最近のエピソードの中でも結構活躍するので80歳とは思えない、自身でお目付け役を任じているようなバイタリティーの持主なのだ。

    そして鶴代の元夫で佐知の父親である⑥神田幸夫(結婚していた時は牧田幸夫)、学生時代はエセ左翼活動家であった幸夫にお嬢様だった鶴代が惚れて一緒になったが、仕事もせずに骨董品集めに奔走し、極め付きは佐知が産まれた時も地方へ出かけていて、誕生祝いに河童のミイラを鶴代に送ってきたことだ。迷うことなく鶴代は幸夫を追い出し離婚した。それ以降夫婦の寝室は河童のミイラと共に鍵をかけられて37年間も「開かずの間」となった。

    離婚後も幸夫はストーカーの如く近くにアパートを借りて佐知の成長を見ていたが、佐知が小学2年生の時に心臓麻痺で急死する。ところが肉体は朽ちても魂は成仏せず地上に残り、ずっと牧田家の洋館で鶴代と佐知を見守り続けてきたというのだ。
    このミイラが37年後に大騒動をもたらすのだが、「開かずの間」からミイラが出てきた時は、この小説は何処へ行くのだろう、ホラーかと思ったらコメディへ向かい、そしてミステリーから心霊ものへ行き、最後は家族愛に行き着くという展開にはもう付いていけないのだ。

    あと一人重要な役割で登場するのが、⑦梶さんという内装業者で刺繍が大好きなイケメン職人で、洋館の壁紙の張り替えに来た時に佐知が恋をしてしまうのだが、既婚者だという嘘の情報に惑わされて一旦は諦める。後で独身者だとわかって、梶さんの気持ちはわからないままだが、佐知の気持ちは高まったようだ。
    そして雷雨の夜に盗賊の侵入事件があったりして佐知が危ない場面があるのだが、助けたのは山田一郎でもなく、梶さんでもなく、幸夫の霊が河童のミイラに入って助けるという訳のわからないストーリーに唖然としてしまうのだ。

    最後は女4人で洋館の庭でスイカを食べながら花火をして、平和で幸せな場面を演出したところで、山田を呼びに行き、ますます絵に描いたような幸せなエンディングにはほのぼのとしてしまう自分がいて、この先に各々の幸せな未来が見えて来そうなことに何か感動してしまうのだ。

  • この小説のジャンルはなんだろう
    とにかく電車の中で読んではダメな本
    ふいに笑わせられる

    この4人の関係がちょっと羨ましい
    笑いっぱなしと思ったら
    ラストはきゅーっとなりました
    よいお話し
    楽しかった

  •  刺繍作家の佐知と母の鶴代、そこにひょんなことから転がり込んだ雪乃と多恵美、四人が暮らす一つ屋根の下のお話。

     三浦しをんさんと言えば、古風かつ王道な語り口で物語を展開しつつ、ちょっとした仕掛けを絶やさない、そんな作品群を想像しますが、今回の仕掛けはかなりトリッキーでした。
     ネタバレになるので控えますが、小説の「人称」って矛盾を常にはらんでいるんですよね。だからこそ、誰かへの手紙の形を取ったり、日記風にしてみたりと作家さんたちの工夫が伺える部分でもあったりします(そのあたりのことは、同じく三浦さんの『マナーはいらない 小説の書きかた講座』にも記載されています)。今作はそのあたりの仕掛けが面白かったです。
     しかし、この仕掛けがある意味では「人を選ぶ」ところかな、とも同時に感じました。こういうテイストを好まない方もいるかもしれませんね……。
     物語は初春~夏のあたりを描いているのですが、さすがの筆致で雨の音やら運針する佐知の手元が見えるようでした。
     主たる登場人物である四人の女性は『細雪』に登場する姉妹を踏襲したものとなっており、そのあたり詳しい方が読めばもっと楽しめるのかもしれません(私はこの作品読了時は未読)。
     日常をゆるやかに綴っている物語なので、物足りないと感じる方はいるかもしれませんが、個人的にはこんな風にワイワイ言いながらゆるーく共同生活してみたいな、という感想を持ちました。
     とにかく、花火のシーンが楽しそうでした。

  • 文体やオチ(仕掛け?)には賛否両論ありそうだなと思いつつ、男性不在の洋館で暮らす女性たちの考えや今日に至るまでの歩みはすごく馴染みがあって親しみやすい。マニアックなエピソードも交えての軽妙な語りに一気読みでした。

  • 谷崎潤一郎の『細雪』をベースに、谷崎の没後50年に当たる2015年の企画として委嘱され、書かれた小説だという。
    恥ずかしながら、細雪を読んだことがありません…

    杉並の古い洋館に暮らす、牧田母娘。
    昔はかなりの土地持ちだったらしく、敷地は広い。
    働いたことのないお嬢様で、庭の菜園と、たまに伊勢丹に行くことが趣味の牧田鶴代は70代らしい。
    その娘、刺繍作家の佐知はほぼ引きこもりで刺繍に集中し、次第に身なりに気を使わず、男の影もない37歳。
    彼女の名誉のために付け足せば、ちゃんと老後のためを考えて、必死で仕事をしているのである。
    刺繍を“女の手慰み”“趣味の延長”などと考える輩は許すまじ。
    鶴代の夫、つまり佐知の父は出て行ったということしか分からず、父の不在が佐知の心にそこはかとない頼りなさと影を落としている。
    佐知の友人・雪乃は同い年。アパートの水漏れで、佐知の提案で牧田家に避難し、そのまま住まう。
    多恵美は雪乃の会社の後輩で、10歳年下の27歳。
    ストーカーの元彼に悩まされ、雪乃の勧めで牧田家に住むようになる。

    こまごました事件を抱えながらも、いや、ミイラや強盗、思考するカラスの意志の集合体など、かなりエキセントリックなエピソードを抱えながらも、なぜか「日常」と言いきれてしまうようなゆるい日々が展開される。
    血のつながらない、「家族」の形態もさまざまあれど、寂しみを感じない関係は何だろう、と語られる。
    それを見守りながら、少しの寂しみを味わっているものが、距離を置いて「あの家」と言っているのだと、最後に分かる。

    なんだか退屈だなあ…と思いながら読み進んだが、急に心に染みてくる。
    どのあたりで界面活性剤が注入されたのかしら。
    たとえば桔梗なんかの閉じたつぼみの中で、先の見えない微かな、ほんの微かな不安が膨らんで膨らんで、ポンっとはじけて新しい空気の中にさらされた様な、新鮮さを感じるラスト。
    古い家にも新しい風が吹いている。


    ドラマ化のお話が進んでいるらしいけれど、とりあえず山田さんは小林稔侍さんがいいなあ…と思います。

  • 杉並の古い洋館には四人の女が住んでいます。母子と娘の友達の二人。敷地の掘建小屋には80歳を超えた老人。細雪を三浦シオン流にしたようです。ファンタジーの要素もはいり、題名のわけがわかります。

  • なかなか読書に取りかかれない中でどうにか手に取った一冊。読み始めればとても読みやすい。三浦しをん版平成細雪。
    しをんさんの描く登場人物は一見ごくごく普通の人でとても自然にそこで生活しているのにどこか可笑しみのあるところがある。
    元々住んでいた母娘の元に事情が重なり同居している4人の女性(プラス1人とアルファ)のお話。淡々とした日常がありながら、妙齢の女性の実感のこもった会話や気持ち、母娘のやりとりに共感を覚えたりする。
    そんな生活の中で小さなトラブルと大きな事件が起こる(それがちょっと笑える事態)ファンタジーの要素もある。浮世離れ感とファンタジー要素はありながら描かれている心情はリアルを感じた物語であった。

  • 現代版「細雪」。姉妹ではないが名前ももじってあり暮らしぶりが淡々とつづられる。女性4人の物語ってよくある気がするのだけれど、個性が分かりやすいのかなあ。前半は余りに波乱がないので中々読み進められなかった。
    後半になると、カラス、ミイラ、幽霊、梶さんの登場により日常話から不思議な話、少しの恋話へ転換していく。

    年老いていく一人の未来に希望は持てないけど、不安ばかり気にしていても仕方ない。気楽に行こう。でも何となく周りに誰かいたらいいよね。佐知と雪乃の二人の中年女性の肩の
    力が抜いて行こうとする生き方、有りなのだと思います。

    でも梶さんとのロマンスもうまくいけば良いと期待します。

  • 杉並区の古びた洋館に住まう老齢の母鶴代と、刺繍作家の佐知。友人の雪乃、その後輩の多恵美も加わり同居生活がスタートする。
    各々は孤独なようでも「ただいま」と言えば誰かが出迎える。
    同じ敷地に暮らす唯一の男性が山田老人と言うのもおもしろ哀しい。
    日々ドタバタと出来事が起こる中、静かに絆を強くして行く「家族」のストーリー。

    途中やや唐突に鴉が解説をはじめたり、佐知の亡父が語り出したり…のところは要らなかったかな…?とも思いつつ、そういった面々が見守っており、それぞれは孤独ではない、と言う意味合いだったのかな。

  • 時々ファンタジーが入ってくるけど、なかなかおもしろかった。女四人の思いに共感することもあった。たまには「夢見る馬鹿」になるのもいい。
    家族って、時に鬱陶しくてやかましくもある。しかし、おかえりとただいまのある空間にいることは、とても大きなことなんだなぁと思った。
    コメディタッチだけど、強く訴えるメッセージもある作品。

  • やっぱり最終的には女友達よねぇ…と思いながらもグラグラするお年頃の女性たち。

  • 表紙の雰囲気とは全く違うほのぼのとした物語でした。年老いた母親とその娘、友達とその後輩の奇妙な4人暮らし。その4人の掛け合いが堪らなく良かった。山田さんのキャラクターも良かったし、なんだかずっとこの4人と1人で仲良く暮らしていってほしいなぁと思った。
    文中にあった雪乃のセリフ、「男女のあいだに理解は成立しない」って正にその通りだと思った。
    自分には娘の誕生のお祝いに河童のミイラを買ったお父さんの気持ちがよくわかった。
    最後まで読んであの家に暮らすってタイトルの意味がわかった。

  • 僕には合わなかった。ただそれだけ。
    三浦しをんさんの作品で合わなかったのはこれだけ。

  • 生きるにあたり、人と人との繋がりは必須です。
    気づく、気づかない、目に見える、見えないは
    別にして、多くの人と繋がり、結果何かしらを得て
    、それにより支えられています。
    当たり前のことすぎて、案外忘れてしまいがちですが、
    それに気付けるのはとっても素敵な生き方です。

    あんまり、僕が読まないタイプの作家さんで、
    話が縦に続くのでなく、横に広がる展開に最初は戸惑いましたが、読み終わるとほっこりした気分になりました。

  • 善福寺川沿いの洋館に住んでいるのは母鶴代・娘の刺繍作家佐知、佐知の友人OLの雪乃、雪乃の後輩OL多恵美。
    女たちは日々を淡々と暮らす。
    家庭菜園でとれた野菜で鍋を囲み、春には花見に繰り出し。

    ギラギラしていない自然体の女ばかりで暮らすのは、こんなにも安らげるものなのか。
    といって男子を締め出しているわけではなく、それなりに恋の予感もあったり元カレのヒモ男に付きまとわれて迷惑してもいたり。
    そんな毎日をつづったお話なのですが、何が愉快って彼女たちのものごとの捉え方が面白い。
    こんなにクスクス笑いながら読んだ本は久しぶりでした。
    楽しい時間をありがとうございました。

  • 4人の女の視点であるのが基本だが、第三者の語り手が時々出てくるが毒気があって小気味好い。中盤以降に登場する新たな語り手が絶妙。タイトルがあの家、なのはそーゆーことか。と腹落ちするのも気持ちいい。

  • ふんわりとした日常生活の中に、ちょっと孤独感が漂っている女たちの共同生活。
    独身女性の心の機微を描く繊細な作品かと思いきや……。

    いきなりカラスの語りが始まったときは面食らったが、
    このあとに続く別の語り手の登場への前フリだったか?

    河童のミイラが動く場面では大爆笑!!
    こういうの書かせたらホント上手いなぁ(笑)

  • 笑った笑った。声に出して笑ってすっきりした!さすが三浦しをん先生だわ。愉快でしっとりしてて泣きながら笑える。最高のエンタメ。わたしもここに住みたいわ。あと、山田さんには長生きしてほしい。

  • 癖がある女性たち4人の家を描いた話で表紙に惹かれました。
    くすっと笑えて結婚していなくても子供を産んでいなくても生きていていいんだなと思える本でした。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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