三島由紀夫 石原慎太郎 全対話 (中公文庫 み 9-17)

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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122069121

作品紹介・あらすじ

一九五六年の「新人の季節」から六九年の「守るべきものの価値」まで、単行本・全集未収録の三編を含む全対話九編を初集成。戦後日本の二大スタア作家による競演。七〇年の「士道について」の公開状、石原のロングインタビューを併録する。文庫オリジナル。


■目次


【Ⅰ】


新人の季節/七年後の対話/天皇と現代日本の風土/守るべきものの価値


【Ⅱ】


モテルということ/新劇界を皮肉る


 *


作家の女性観と結婚観/「教養」は遠くなりにけり/あゝ結婚


【Ⅲ】


士道について――石原慎太郎氏への公開状(三島由紀夫)


政治と美について――三島由紀夫氏への返答(石原慎太郎)


【あとがきにかえて】


三島さん、懐かしい人(石原慎太郎)

感想・レビュー・書評

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  • 三島由紀夫と石原慎太郎はそれぞれ文学をやりながら
    スポーツをやり、俳優をやり、政治もやる
    いわばマルチタレントであった
    そういった自意識からこのふたりは
    文学とフィジカルの関係性、そこから生じる自分たちのスタイルを
    全人的なものと捉え
    その全人性が、古い価値観…いってみれば本音と建前の価値観に
    すれ違っているのだと考えた
    おそらく石原には、その考え方が真実だったのだろう
    しかし三島は結局
    現実を前にして自意識を持て余すひとりであった
    だから芸術の方法論ひとつとっても
    ある意味、人の評価を気にせず思うまま書いてる石原に対し
    三島はどうしても形式を気にしてしまう
    その差異はひょっとすると
    芥川と谷崎の「筋のない小説」論争を
    より本質的に推し進めたものだったかもしれない

    やがて石原が政治によって「私」の公的な拡大を試みるのに対し
    孤独だけが自由を保証すると確信したのであろう三島は
    しかしそのことに耐えかねてか
    天皇という美のイデアをシンボルとして「楯の会」を結成した

  • 今となっては「歴史…」というような感じの昭和20年代から昭和40年代に「一定の存在感を示して輝いた文化人」という感で在った2人の作家の肉声が記録されている感の内容だった。三島由紀夫の全集には、この種の雑誌等に掲載されたモノも多く収められているらしいが、本書には未収録だったモノも掲載されているのだという。
    「全集未収録のモノも入っている」というようなことは、後から「そうであるらしい」と知ったことで、如何でも構わない。自身では全集に眼を通しているのでも何でもないのだから、その収録の有無に関する情報は、自身にとっては然程大きな意味は持たない。「一定の存在感を示して輝いた文化人」という具合に1960年代頃を駆け抜けた人達の肉声というようなモノが、ストレートで、“原酒”的な状態で眼前に現れるのが好いのである。
    三島由紀夫と石原慎太郎の両者は互いに「注目の若き作家」ということで出会っている。三島由紀夫の若さが注目されていた頃、更に若い石原慎太郎が登場し、「雑誌に掲載された対談」としては「初めてなのか?」というように感じられたモノが本の最初の方に掲載されている。そこから彼らの様々な活動が話題になっている色々なモノが多々在って、昭和40年代の、三島由紀夫が命を絶ってしまった事件の少し前に「公開状」と称して互いの意見をぶつけ合ったというような辺りまで、実に多彩なモノが収められた一冊だ。モノが初出の時期は1956年から1969年までに及ぶという。
    三島由紀夫も石原慎太郎も、映画出演をすることをしていて、演劇の台本執筆、加えて台本作家として制作に関わった経緯、更に歌舞伎や能楽にも関わった経過が在って、その種の「表現」を巡って語らっているのだが、そういう辺りは凄く面白かった。
    そういう「表現」というように括り得ることに留まらず、実に多彩な内容の対談が収録されていて、その内容に少し驚く。「引き出しが多い」とか「奥底が深い」というように形容し得ると思うが、彼らは実に多くの話題を持っている。加えて、各々が20代、30代だった頃から年月を重ねているので、個人レベルで結婚したとか子どもが産れたというような「個人の人生の中での少し大きな出来事」を経験して行く訳だが、そういうような事柄を巡っても、「引き出しが多い」とか「奥底が深い」という具合に色々と論じ合っている辺りが凄く面白かった。
    2020年に登場した文庫本で、「2020年の出版物」として、時に「必要以上??」と思える程度に各方面への配慮というような感じになる昨今の基準で、如何したこうしたと言われそうな内容も在るかもしれない。(自身は然程気にしなかったが…)それでも、「昭和の年月と共に人生を歩んでいた」という三島由紀夫、少し年少の石原慎太郎という2人の大きな存在感を示した文化人の「肉声」は輝きを失っていないと思った。
    何かこの『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話』を“平成”をも突き抜けた“令和”の今日に読むと、「昭和中期」とでも呼ぶべき“時代”の空気感が甦るような気がしないでもない。

    非常に「愉しい読書」ということになった!!

  • 一九五六年の「新人の季節」から六九年の「守るべきものの価値」まで初収録三編を含む全九編。七〇年の士道をめぐる論争、石原のインタビューを併録する。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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