一杯のおいしい紅茶-ジョージ・オーウェルのエッセイ (中公文庫 オ 3-1)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122069299

作品紹介・あらすじ

鋭利で辛辣、政治一辺倒――

そんなオーウェルのイメージは

本書を読めば心地よく裏切られる



「人間はぬくもりと、交際と、余暇と、

慰安と、安全を必要とするのである」



自然に親しむ心を、困窮生活の悲哀を、

暖炉の火やイギリス的な食べ物、

失われゆく庶民的なことごとへの愛着を記して、

作家の意外な素顔を映す上質の随筆集



文庫化に当たり「『動物農場』ウクライナ版への序文」を収録

感想・レビュー・書評

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  • 女子栄養大学図書館OPAC▼https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000068886

  • J.オーウェルというと1984年と動物農場のイメージしかなく、生活のために書評や短文エッセイを書いていたとは知らなかった。
    文化や自然に関してあくまで保守的な態度である点、産業主義的な娯楽や全体主義に関しては批判的である点、洞察力に優れている点はイメージ通りだが、あの理知的な文章で食器洗いに毒付いているのには笑った。先進的技術憎しではなく、あくまでそれによって社会に齎される負の影響に懸念を抱いていたのだということがよく分かる。
    また、オーウェルの書物・文章への美学と拘りを知ることができた。
    彼が風刺した未来の只中であっても、「一杯のおいしい紅茶」を楽しむ心の余裕は持ちたいものだと思う。

  • 津村記久子『苦手からはじめる作文教室』でおすすめの本として紹介されていたので購入したもの。読んだばかりの荒川洋治『文庫の読書』でもとりあげられていて期待が高まる。

  • イギリス文学に興味を持って手に取った。
    彼の書く文章はこれが初めて。とはいえ、これを最初になって良かったと後で思えると思いたい。
    紅茶へのこだわり、理想のパブといった人となりから始まり、書くことに対する考え、文章から読み取る背景や解釈は学ことが多い。
    ちなみに、家事に対する見解は今も昔も変わらないなぁと思った。食洗機ができて、手洗いの煩雑さは解消されたけど、本質的な問題はまだまだ解決しなければならないことはまだありそう。

  • 紅茶へのこだわり、未来予想、作家志望の人へのメッセージまで、盛りだくさんのエッセイ36編。
    『動物農場』の著者の少しプライベートな(?)一面も知れて、面白かったです。
    また、私も物事に対してもっと真剣に向き合い、意見を持とうと思いました。

  • 2023.2.14市立図書館
    図書館の「紅茶とコーヒーに関する本」の特設コーナーでふと手にとった。何年か前に新聞の読書面でみつけた紹介記事を切り抜いて読んだことがある気がする。しかも文庫化に当たり「『動物農場』ウクライナ版への序文」が収録されているとある。2020年夏といえば、クリミアですでに揉めてはいたが、まだロシアが攻め入る前だけれど、どうして1947年に書かれたその文章が文庫化するときにあえて収められたのだろう? それで気になって借りた。

    「動物農場」と「1984年」で名高いオーウェルのB面、エッセイを集めた本。そのオーウェルが第二次大戦後まもなく50年も生きないうちに亡くなっていたとは。

    それはともかく、エッセイは創作とはうってかわって、個人のこだわりをユーモラスに開陳して気楽に読ませる文章でおもしろい。後半の文学に関する文章も、よみながらあれこれ考えさせられた。

    最後に収録されたウクライナ版「動物農場」への序文は、手際よい自己紹介とこの物語を書いた経緯が説明されており、当時ソ連邦下にあったウクライナの人々は「動物農場」を読みながらなにを思ったのだろうと考えるよすがになった。

  • ジョージ・オーウェル という人の印象がずいぶん変わりました。

  • 言わずと知れた『動物農場』『1984年』の著者、ジョージ・オーウェルのエッセイ!どんな人なのかと思ったら、回顧主義者のちょっとメンドクサイおっさんで、食器洗いに苦心している庶民的なところもあり、全文通して真面目な文体なのにめっちゃ面白い人だった(interestingというよりfunny)!

    第2部の『ジュラ島便り』はジョージ・オーウェルが知人にあてた書簡をとりまとめたものなのだけど、この時に、あの『1984年』を書いていたんだなぁ、と思うと不思議な感じです。この手紙を書いた2、3年後には亡くなってるんですよね。人生は短い。

    もし、ジョージ・オーウェルが現代に蘇ったら、私なら間違いなく、いの一番に彼に食洗機を見せる!!

  •  ジョージ・オーウェル(1903~1950)は激動の時代を生きた作家です。「一杯のおいしい紅茶」を淹れる、そんな日常の営為にこそオーウェルが守ろうとしたものがあったのだと思います。
    K.J.先生

  • 津村紀久子さんの「苦手から始める作文教室」の中で、紹介されていたので、すぐ本屋で買って読みました。「動物農場」「1984年」など、全体主義に対する反体制の強い作品のイメージがある著者の柔らかな目線で、綴られる随筆集です。紅茶の淹れ方や、クリケットのことなど、日常で思うことをありのままエッセイとして描いているので、とても読みやすかったです。著者のイメージが180度変わりました。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョージ・オーウェルの作品

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