屋根裏博物館の事件簿 (中公文庫 さ 81-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 80
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122069893

作品紹介・あらすじ

渋沢栄一の孫・敬三が作った私設博物館で蒐集、研究されている新たな学問「日本民俗学」。山形の奇妙な婚礼絵馬、南伊豆の不穏な正月行事を調査するのは、幼い頃、敬三に拾われた記憶喪失の少女・あづみ。相棒の林常彦とともにこの博物館に持ち込まれる謎を解く中で、自身の封印された記憶が蘇る――。文庫書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 民俗学をもとにしたミステリー。渋沢敬三や網野善彦という実在した人物が出てくるが、主人公の美少女高校生のあずみと学芸員の林常彦はフィクションだろう。なんかこの二人に心情移入が出来なくて、親しみが湧かないんだよなあ。夢で真相が分かるというのもぶっ飛んでるというか、荒唐無稽だ。いかにも昭和を時代背景にしている民俗学のネタだが、結構えぐいねえ。ほんまにそんなことあるかいなという感じもあるよ。

  • 渋沢栄一の孫・敬三が作った施設博物館「屋根裏博物館」自体は実在することに感動しました。

    婚礼絵馬や不穏な正月行事などの調査を通じて成長する記憶喪失の少女あづみ。

    昭和30年代が舞台ですが、あまり古い感じがしませんでした。

  • 民俗学ミステリーですがちょっと深掘りが足りないかなぁ。事件の裏事情を主人公が夢にみることで解決してしまうのは、ちょっとミステリーとしては反則な感じがします。

  • 民俗学に関わるような問題を通して、少女が成長していく物語として楽しめた。
    地方の風習などが登場してその由来や謎を探るが、それは綺麗なお話とは限らず悲しい由来や過去があったりする。
    それを少女や周りの大人はどう受け止めて、どう活かしていくのか、という点がこの本の面白い所と感じた。

    一方で謎を解明するミステリとしてはイマイチだった。
    風習やそれにまつわる話は遥か過去のことであり、その発端の全てを明らかにすることは不可能なため、いささか現実離れした形で詳細が明らかにされる。
    その点はかなり賛否が分かれることかと思う。

  • 最近多い民俗学系のミステリ。謎そのものにあまりツイストがなく、大体見当が付いてしまうのが難。少し食い足りない感じ。レギュラーキャラクターは、いい人のバイプレーヤーには味があって良いのだけれど地味。ヒロインはちょっと難しい。

  • 昭和三十年代を舞台にした民俗学ミステリ。
    某絵馬の話やあることで財を成す話は(過度なネタバレ防止のため具体的な名詞や説明は割愛)自分も何かの本で読んだことがあった話だったので、知っている民俗学ネタが登場して興奮しつつも、こういう話にしてくるかと驚きもした。
    しかも、基本的にどの話も後味が決して良くはない。
    後の話になればなるほど後味の悪さが際立ってくると言う。
    民俗学は、人の営みや文化を観察する学問でもある。
    綺麗なものばかりが見えるだけではない。
    そこが面白くもあり、怖いところでもある。

    そもそも主人公のあづみ自身が壮絶な過去持ち。
    これは後半明らかになるが、やはり決して明るく優しい話ではない。
    それでも気になってぐいぐい読み進めてしまったのは、読みやすい文体だったのと、彼女のお兄さん的存在である常彦さんの貢献が大きいと思う。
    彼自身も決して本人の性格その通りの人生を送ってきた人ではないのだが……(穏やかな人生ではなかった)
    残酷な現実や真実を目の前にしても、ずっと寄りそってくれる彼がいたことは、本当にありがたかった。
    あづみの嫉妬や葛藤の元にもなりがちではあったが。
    そこからあづみ自身が成長していくのも良かった。
    彼女はまだ16歳。
    今後どう生きていくか、今回の経験はこの先絶対生きるはず。

    民俗学の調査では解明しきれなかった真実は、あづみの夢で分かるという、ちょっとファンタジー要素はあるが、自力の調査で「そこ」まで辿り着いたご褒美的ムービーみたいな扱いで、知らなくても大丈夫だけれど、読者的にはありがたい仕様だったと思う。
    大勢には影響がなく、人物の内面を掘り下げる感じの夢になるので。
    普通、オカルト扱いされている(実際はオカルトばかりではないのだが、どうにもそういうイメージが先行しがち。特にこの時代)民俗学でこういうファンタジー要素を持ってこられると興ざめになりそうだが、この話では匙加減が絶妙だったと思う。
    ただ夢で明かされる人の内面は狂気に近いものもあるけれど……

    民俗学好きなら、食いつきのいい作品だと思う。
    また人の闇や狂気の話もあるので、勝手ながら横溝正史の世界観にも通じるものがあるなと思いつつ読んだ。
    でも、常彦さんのお蔭で、まったり読めたり癒される部分もあって、何とも奥行きのある話だったと思う。

  • 渋沢敬三が開設したアチック・ミューゼアムを舞台に、渋沢や網野善彦ら実在した人物と、架空の人物である主人公たちが活躍する民俗学ミステリー。昭和30年代の高度経済成長の裏面と表面、都市のお祭り騒ぎの一方で貧困に喘ぐ地域の格差に焦点をあてており、民俗学という学問そのものが当時志していたテーマが本作のテーマにもなっているのが見事です。

  • #読了 #澤見彰 #中公文庫

  • 前のめりに成長しようともがいて、逆に自分の駄目な所露呈しちゃってるあづみの成長も楽しいんだけど、様々な事件を通して語られる貧困の辛さ、貧富の格差が胸に迫る。

  • 渋沢栄一の孫・敬三に拾われた女学生のあづみが、相棒の林常彦と古い因習にとらわれた人間の闇を追う「民俗学」ミステリ開幕! 文庫書き下ろし。

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著者プロフィール

1978年生まれ。埼玉県出身。2005年「KAPPA-ONE登竜門」より『時を編む者』でデビュー。以来、ファンタジー小説や時代伝奇を執筆。近年は積極的に時代小説を手がける。著作に、『ヤマユリワラシ―遠野供養絵異聞―』『けものよろず診療お助け録』『屋根裏博物館の事件簿』など。本書は熱血師匠と筆子の交流を描いた傑作人情小説。

「2023年 『走れ走れ走れ 鬼千世先生と子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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