金曜日の本 (中公文庫 よ 39-7)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122070097

作品紹介・あらすじ

いかにも面白そうな本よりも、誰も読みそうにない本に、

自分にとっての「面白い」が隠れている。

ぼくの思う「金曜日の本」は、いつでもそんな本だ。

心意気は、宝探しである。



本をめぐる断章と、

著者自身の少年時代を綴るエッセイ。



書き下ろし「九人のおじさん」を特別収録!

感想・レビュー・書評

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  • 「無口」で「いつも本を読んでいた」吉田篤弘さんの小さい頃の随想。
    感性豊かに、本や音楽に関することも織り交ぜて、懐かしい記憶が綴られていた。
    吉田さんの描く小説そのものの世界がそこにあって、読み始めたら止まらなくなってしまった。

    仕事が終わった金曜日は、「放課後」のようで、心おきなく本が読める。
    本は読むことももちろん大事だけれど、その前に自分ひとりで選ぶことが重要だったそうです。誰も気づいていない「宝探し」をするように。

    父でも兄でもない、たくさんのおじさんやいとこたちは、子どもにとって憧れの存在だったのかもしれません。
    実話をこんなにまあるく優しく書けるなんて、やっぱり素晴らしいです。
    お話の達人なんだなぁと思う。

  • 読友さんのレビュー「吉田さんの描く小説そのものの世界がそこにあって」に惹かれて一気に読みました。ありがとうございます!
    吉田篤弘さん…本を読むのが好きなだけでなく、小学生の頃から壁新聞や小冊子を作っていたんですね〜。おじさん、おばさん、いとこ達とのエピソード、どれもが小さな宝物のよう。

  • 祝文庫化!
    『金曜日の本』 吉田篤弘著 : 書評 : 本よみうり堂 : エンタメ・文化 : ニュース : 読売新聞オンライン
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20180213-OYT8T50103/

    金曜日の本|単行本|中央公論新社
    http://www.chuko.co.jp/tanko/2017/11/005021.html

    金曜日の本 吉田 篤弘(著/文) - 中央公論新社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784122070097

  • 淡々とした文章なのに、温かいのが不思議。
    吉田篤弘さんは、いつもそう。

    10歳以上年齢が違うのに、なぜか懐かしさに涙が出そうになった。

    たくさんの素敵なおじ様たち。
    子どもの頃に出会う大人って、自分が大人になっても影響されているな、と思うし、昔から好きなものはやはりずっと好きな気がする。

    昔を思い出して、幸せな気持ちになった1冊でした。

    余談
    そういえば私も金曜日生まれ。
    読み終えたのが木曜日なのが悔やまれる。

  • 吉田篤弘さんの少年時代のエッセイ。
    夢の中のような穏やかで不思議な世界観で、読んでいて心地が良い。
    挿絵も可愛くて、なんだか童話を読んでいるような気持ちになる。

    ⚫「仕事が終わった。今日は金曜日。午後六時である。明日あさっては休み で、特にこれといって用事もない。つまり、今夜から日曜の夜まで、心お きなく本が読める。
    まずは食料と飲みものを確保し、ロッカーに預けて手ぶらで本屋に行く。 身も心も手ぶらになる。何の情報も要らない。誰かが推薦しているとか、 映画化されているとか、そんなことは知らない。
    知らない方がいい。子供のころ、学校の図書室で本を選んでいたときの気分に戻りたい。あ、これ を読みたい、と思った本を立ち読みし、面白そうだったら、迷わず手に入れる。そんなふうに、ただ自分の好きな本を読んで、それで本が好きになった。」

    ⚫本には「読む時間」の前に「選ぶ時間」がある。もしかすると、読んでいるときと同じくらい選ぶ時間を愉しんできたかもしれない。


    確かに、本は選ぶ時間も楽しいんだよなぁ!


  • 図書室で静かに語り続ける本たち、本を読むことは未来との約束、選ぶ時間の愉しさ。印象に残ったところはたくさんあるけれど、自分で書き出すとなぜか軽く感じるなあ。吉田さんの文章が心地よい理由が少しわかった。解説が岸本佐知子さんなのも個人的に嬉しかった〜

  • 自分にとっては親世代が懐かしむ世界だった。
    でも、読んでいくうちに自分もほっこり懐かしい気持ちになる。そんな可愛らしい短編集でした。

  • 前半は著者の自伝的エッセイのようなもの。いつもと同じ語り口のせいか、小説としても読めてしまう。幼いころの読書体験、好きだった本、レコード、そして両親、親戚のおじさんたちや近所の友達、昭和の東京の風景が浮かび上がってきます。

    短編小説「窮鼠、夜を往く」も収録。哲学的だけれど可愛い小品。金曜日の夜に、さあ今夜から土日は好きな本を読んですごすぞ、というわくわくする気持ち、読むことと、書くことへの愛情が詰まった1冊でした。


    ※収録
    路地裏の猿/架空バス/夕方の手品師/舞台袖/ポータブル・レコード・プレーヤー/蛇口とヘビイチゴ/ブレーキのない自転車/赤鉛筆/ピザを水平に持って帰ること/枕の下のラジオ/ファーストミット/夜中に観た映画/空中一回転/変電所と東京タワー/金曜日の本/窮鼠、夜を往く/九人のおじさん/あとがきのような話のつづき/解説:岸本佐知子

  • 「忘れかけていたこと」

    吉田さんの本を読むと、不思議と昔のことを思い出す。

    彼のどの作品を読んでもそうなのだけれど、
    本作は特にそれが印象的に、私の心に残っている。

    金曜日の本。はて、なんのことやら。

    そう思いつつ読み始めて、
    気がついたら日付が変わっていて、
    そして、昔のことをぽろぽろと思い出して。

    なんだか不思議だなと。

    彼が回顧する物語はみんなどこか懐かしくて、
    私はその場にいないのに、まだ生まれてすらないのに、
    その様子がありありと、
    でもどこかおぼろげに浮かんでくる。

    それが頭の中で勝手に自分の思い出に変わっていて、
    あぁ、そういえばこんなことあったなーって。



    金曜日の本。

    さて、
    私にとってのその本は、いったい何だったのだろう。
    また読み返すときに一冊くらいは、思い浮かんでくれたらいいなぁ。

    じゃあまた、金曜日に。

  • 物語との出会いは不思議で、どうして吉田篤弘を知ったのか思い出せないけれど、なぜかAmazonのお気に入りリストに入っていて偶然買った一冊が月とコーヒーだった。

    それから大好きな作家さんのひとりになって、その気持ちは吉田篤弘を読むたびに、きらきら光って強くなっていく。

    本作も、とてもすてきな一冊。
    金曜日、仕事終わりにそっと開いて、物語のなかに入っていきたい。

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著者プロフィール

1962年、東京生まれ。小説を執筆しつつ、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作、装丁の仕事を続けている。2001年講談社出版文化賞・ブックデザイン賞受賞。『つむじ風食堂とぼく』『雲と鉛筆』 (いずれもちくまプリマー新書)、『つむじ風食堂の夜』(ちくま文庫)、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『モナリザの背中』(中公文庫)など著書多数。

「2022年 『物語のあるところ 月舟町ダイアローグ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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