ベトナムの世界史: 中華世界から東南アジア世界へ

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130230452

作品紹介・あらすじ

国際社会に飛躍するベトナム。冷戦構造が崩壊した今、ベトナムはいかなる世界に自らを定位しようとしているのだろうか。そのナショナル・アイデンティティの展開を、世界史の流れの中において考える。

感想・レビュー・書評

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  • 地域史

  • 本書の意味する「世界史」には2通りあるという。1つは、歴史的に見て、ベトナムが自らをどのような世界の一員と見なしていたのか、つまりは、「ベトナムにとっての世界」の歴史的考察という意味。2つは、そのようなベトナムの歴史の歩みに、それぞれの時期の、人類普遍的な世界史的課題がどのように浮き彫りになっているのかを考える、つまりは、ベトナムを素材とした「世界史」という意味である。
    高校世界史におけるベトナムは、とくに前近代において他の東南アジア諸国とは違う扱いがなされている。とくに李朝、陳朝、黎朝、西山朝、阮朝といったベトナム北部の諸王朝は中国史という柱の周辺国家という位置づけという印象が強い。それもそのはずで、そもそも“東南アジア”という概念が第2次世界大戦のころに登場したものであり、前近代東南アジアはインドの影響を強く受けているとしても(世界史教科書では「インド化」という言葉で表現されている)、本来多様・多元的な世界である。
    本書の中心はフランスによる植民地化以降が大半を占めるが、その中でもベトナムはベトナム自身で「ベトナム版小中華主義」とも言える世界観を形成してきた。ベトナムの主要民族は“キン(京)族”であり「ベトナム人」の大半を占めるが、その他に山岳少数民族が存在している。またインドシナ半島にはベトナムの他にカンボジアやラオスといった国も存在している。この「キン族と山岳少数民族」「ベトナムとラオス・カンボジア」といった相対化や利用、克服がベトナムという国家形成の鍵となっていく。本書は、ベトナムを題材として、西洋列強の支配下に置かれた経験の持ついわゆる被支配国が、西洋列強の付属、対立としてのみ語られうる存在なのではなく、主体的に語ることのできる歴史を持つ存在であることを再確認させてくれる。

  • 大学受験の世界史ではベトナム史だけで相当な問題が作れる。
    1995年といえばクリントンがベトナムと国交正常化した頃だ。ベトナムは地域国家、覇権国家といろいろな歴史を辿ってきた。
    ベトナム戦争は日本を共産化から守るためにアメリカは必死になったのだ。ドミノ理論で最後に共産化のコマとして倒れるのが日本だから。冷戦時代とは今思うと一体なんだったのだろうか。

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著者プロフィール

古田元夫(ふるた・もとお)1949年生まれ。東京大学名誉教授。日越大学学長。
専門 ベトナム現代史
主要著書 『歴史としてのベトナム戦争』(大月書店、1991年)、『ドイモイの誕生:ベトナムにおける改革路線の形成過程』(青木書店、2009年)、『ベトナムの世界史――中華世界から東南アジア世界へ』(増補新装版)(東京大学出版会、2015年)など。

「2021年 『ベトナム戦争の最激戦地中部高原の友人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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