天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816158

感想・レビュー・書評

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  • 2014年95冊目。

    30年間医療と旱魃対策活動をアフガニスタンで続けてきた医師が語る現実。
    日本から見る報道では語られない現実がここにある。

    「最大の安全保障は、武器ではなく、地元住民との信頼だ」

    と断言する著者は、地元住民の協力を引き出し、25キロに及ぶ用水路を敷き、砂漠をオアシスに変えた。
    空爆が止まない中、他の援助団体が撤退する中、現場で戦い続けた著者の言葉は重い。
    自然には敵わないという謙虚さの中で、それでもどう向き合っていくか、自然災害が尽きない日本が学ぶことは多いだろう。

  • 「一人で成り立つ自分はない。自分を見つめるだけの人間は滅ぶ。他者との関係において自分が成り立っている。」(ヤスパース)
    「自然から遊離するバベルの塔は倒れる。人も自然の一部である。」

  • 人の誠意が形になると
    このようになる

    中村哲さんの 存在そのものに
    人間の叡智というものを
    感じてしまう

    地球人というものがあるとするなら
    きっと
    中村哲さんのような方の
    ことを言うのだろう

  • 本当にこんな事が世界で起きている(;^_^A
    本当に誰が何の為に戦争するのか きっと上に立つ人は価値を国益を理由とした金銭で持っているようでその欲望が大きいから人の命は軽いのでしょう 自分が手を出す事も無いのですから!

  • 筆者中村哲氏を支援するペシャワール会の存在を知ったのは、伊藤和也氏の誘拐殺人事件がキッカケでした。
    報道を聞いた時は「なぜその場所に邦人が滞在してたのか?」と疑問に思ったのだけれど、その後亡くなった伊藤氏をクローズアップしたNHKの番組を見て、彼がなぜアフガニスタンに居たのか、どういう活動を続けていたのかを知るに至り、最初の疑問が氷解した記憶がある。
    その番組中に、伊藤氏の事件の後、邦人スタッフを全員帰国させ(というナレーター)に被る様に、黙々と一人ユンボ(ショベルローダー)を運転する中村哲氏の姿がとても印象に残った。その後に、中村氏が医者であると知ってすごく驚いた。医者としてアフガニスタン(正しくはパキスタンのペシャワール)に赴任しただろう中村氏が、なぜ重機を駆って用水路建設をするに至ったのか、農業試験場を運営するに至ったのか(亡くなった伊藤氏はここの技術者として、現地に合った食物栽培を実地研究していた)強く興味を引かれたのでした。
    2013年に発売したこの本には、ワタシが興味を引かれた事が全部判る内容でした。久し振りに読む時に前のめりになって読み切った本でした。
    本書は、中村氏の生い立ちから始まる。そうして、医者になりペシャワールに赴任するまでの、その布石を読み手は俯瞰して知る事が出来る。
    赴任してからの癩病治療に邁進した件、隣接してるアフガニスタンの無医村地区への医療所開業を計画する件、大旱魃に対応する為数多くの井戸を掘り続け、食物物資を配給した件、地下水の減少と旱魃続きの抜本的解決を目指しての用水路建設と枯れ地の復活を目指した件が、ロシア軍との戦闘とアメリカの介入、911テロからのアメリカの報復攻撃、テロ討伐作戦の煽り、国際に注目を受け支援が増えることによるまさかの弊害と、平行して語られている。
    その中で、中村氏の視線の確かさを強く感じられた。それは、傷ついた所だけを治療するのではなく、そうなる原因を少しでも取り除こう、という予防の観点にあると思う。充分な薬や設備がない現地での苦肉の策とも言えるかもしれない。でも、その姿勢があればこその、癩病治療を通してサンダル工房設立であり、水や食べ物があれば直せる病気治療を通しての井戸堀りであり、食糧配給であり、その先の用水路建設なのである。
    結果として、アフガニスタンの人々の元々あった生活、自給自足の農業生活、日々の安定、安定の先にある平和な日々…一番の支援になっているのだなぁ…と心打たれた。

    丁度、この本を読んでる最中に日本で初めてIPCC総会(国連の気候変動に関する政府間パネル)が開かれてるニュースがあった。
    アフガニスタンの旱魃の原因には、間違いなく気候変動が一因にあると考えられている……。このまま世界ぐるみで対策努力をしないと、アフガニスタンのような水不足、水災害発生はなくなるどころではない……。。
    今までになく、気候変動・温暖化対策に対して真面目に考える自分がいました。

    そうそう、本書の中で胸熱くなるのは、中村氏の活動資金が総てペシャワールの会を通して集められる寄付で成り立っている、ということ。地下水のように面には決して見えない中で、数多くのいろいろな形での支援者がいる、利益からじゃなく、まごころで動く人が、まだまだいるんだな…ということを心強く思いました。

    本当に読んで良かったです。

  • 「日本の良心 アフガンで」評者:宮田律(現代イスラム研究センター理事長) 北海道新聞
    http://www5.hokkaido-np.co.jp/books/new/3.html

    NHK出版のPR
    「困っている人がいたら手を差し伸べる
    ――それは普通のことです。

    1984年よりパキスタン、アフガニスタンで支援活動を続ける医師・中村哲。治療のために現地へ赴いた日本人の医者が、なぜ1600本もの井戸を掘り、25.5キロにもおよぶ用水路を拓くに至ったのか?「天」(自然)と「縁」(人間)をキーワードに、その数奇な半生をつづった著者初の自伝。」

  • 以前からその活動が気になっていた人。この本は現地での水路つくりの話が中心で、もう少し、今の現地の普通の人たちの暮らしの様子とか読みたかったかな…
    しかし、必要に迫られてとはいえ、工学を勉強したわけでない人が砂漠に水路をつくりあげてしまうなんて、情熱の持つ力とは、なんとすごいのでしょうか。

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著者プロフィール

1946年(昭和21年)福岡県生まれ。医師。PMS(平和医療団・日本)総院長/ペシャワール会現地代表。
九州大学医学部卒業。日本国内の病院勤務を経て、84年にパキスタンのペシャワールに赴任。以来、ハンセン病を中心とした貧困層の診療に携わる。87年よりアフガニスタン難民のための医療チームを結成し、山岳無医地区での診療を開始。91年よりアフガニスタン東部山岳地帯に三つの診療所を開設し、98年にはペシャワールにPMS基地病院を設立。2000年からは診療活動と同時に、大干ばつに見舞われたアフガニスタン国内の水源確保のために井戸掘削とカレーズ(地下水路)の復旧を行う。03年、「緑の大地計画」に着手、ナンガラハル州に全長27キロメートルに及ぶ灌漑用水路を建設。その後も砂嵐や洪水と闘いながら沙漠化した農地を復旧した。マグサイサイ賞「平和と国際理解部門」、福岡アジア文化賞大賞など受賞多数。19年10月にはアフガニスタン政府から名誉市民証を授与される。
2019年12月4日、アフガニスタンのジャララバードで凶弾に倒れる。
著書:『ペシャワールにて』『ダラエ・ヌールへの道』『医者 井戸を掘る』『医は国境を越えて』『医者、用水路を拓く』(以上、石風社)、『天、共に在り』『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』(以上、NHK出版)、『アフガン・緑の大地計画』(PMS&ペシャワール会)、『希望の一滴』(西日本新聞社)など。

「2023年 『中村哲 思索と行動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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