グローバル・グリーン・ニューディール: 2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140818107

作品紹介・あらすじ

社会的責任投資の時代へ――。『限界費用ゼロ社会』の著者が示す新世界のビジョン!
再生可能エネルギー技術の急速な発展と、危機的状況にある気候変動問題。現在は化石燃料エネルギー関連資産が過大評価される「カーボンバブル」の時代であり、その崩壊はもはや確定的な事実である。いまこそ、1930年代アメリカの「ニューディール」に匹敵する経済政策の大転換、「グリーン・ニューディール」――すなわち経済インフラの脱炭素化、グリーン経済部門における雇用創出等――が必要なのだ。過去20年にわたりEUおよび中国でゼロ炭素社会への移行に向けて助言を行ってきた著者が、新たな経済社会へのロードマップを示す!

感想・レビュー・書評

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  • 【概要】
    著者のジェレミー・リフキンは、メルケル政権のドイツでインダストリー4.0の提言にコンサルタントしてり関わり、『限界費用ゼロ社会』の著者としても知られる。すでに2014年のその著作の中で、太陽光などの自然エネルギーが限界費用ゼロで入手可能となり、将来有望なエネルギー源として化石燃料を置き換える可能性についても言及をしていた。
    本書は、それから5年(原著は2019年)、『ゼロ』の中では多くの限界費用ゼロの事例のひとつであった自然エネルギーについて、化石燃料社会からの転換に向けたグリーン・ニューディールを論じたものである。

    本当のところはどうなのか、というのは調べないといけないが、自然エネルギーも随分と技術革新と価格破壊があり、リフキンはいまにも化石燃料に頼らずに電力供給を得ることも可能だという立場を取る。

    「太陽光と風力だけでは出力が変動するため、電力を安定供給するには、この先何十年にもわたって従来の化石燃料によるバックアップが必要だという話をよく聞くが、これはもはや一種の都市伝説と化している。おおむね天然ガス業界が広めているのだが、そんなことはまったくない。電池による蓄電も燃料電池用水素の貯蔵も急速にコストが下がっており、太陽光・風力発電の出力の変動を補うバックアップを容易に提供できる」

    そのための社会実装の実現のためには、技術開発とインフラへの初期投資が必要になってくるので、その国家レベルでの事業をグリーン・「ニューディール」と呼び、大恐慌のニューディール政策と同じく、お金が落ちる構造を政府主導で行うべしというのがこの本に流れる一本の柱である。

    その中心となるアイデアとして面白いのは第6章のエネルギーサービス企業(ESCO)による電力供給の仕組みだ。すでに実施されている自治体もあるようだが、これがグリーン・ニューディールにおける鍵のひとつとなっている。全米50州で導入するのが目標らしく、インフラの「コモンズ」による統治を実現するための具体的な手段として丁寧な説明が続く。
    電気や水道などの公共インフラの完全民営化や市場化は色々と問題があり、一方で官製での非効率性を避けるためのパフォーマンス契約でESCO事業者を選定するとのこと。そのESCO事業者としては、名前を聞いたこともない新興企業もいますが、シーメンスやハネウェルなどの既存企業の名前もあるので、日本でESCOのような仕組みを作るのであれば、新規参入事業者としてどのような企業を考えるべきなのだろうか。

    【良い行いをして成功する】
    この辺りの仕組みづくりは、「良い行いをして成功する」(Doing well being good)ことができるように、インセンティブや税制、予算配分を調整するのが政府や自治体の役割といったところ(化石燃料が悪)。「道徳的・社会的に良いビジネスをすることと利益とは切り離す必要はないし、切り離してはならない・切り離すことは誤った二分法であり、実際には「良い行いをする」ことと利益の増大はイコールなのだ」という形にもっていかないといけない。企業年金などが投資先を選定するにあたって、グリーンかどうかによって選別するという形で、私企業がグリーンへの対応を行うようになるというのも、そういった流れのひとつなのかもしれない。

    「良い行いをして成功する」(Doing well being good)は、建国の父ベンジャミン・フランクリンの言葉で、こういうところにピューリタン的な倫理を持ってくるのは、アメリカらしいところ。マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』でも、フランクリンの逸話が理論構成上で非常に重要な役割を果たしていたが、資本経済の倫理の文脈でここでもフランクリンが取り上げられるのは深い納得感があった。

    【地球温暖化】
    結局、どこまで地球温暖化を危機だと思うかというのがひとつの分岐点となる。少し前までは、温暖化懐疑派も一方の側での主流派を形成していたように思うが、最近は温暖化によるカタストロフィが正しいかどうかの確証にはいまだ疑問の余地があるかもしれないものの、少なくとも否定できないというのが「PC的にも」大半の主流の立場になっている。ただ、想定されるその影響の程度や時期は様々で、そこの違いにおいて、経済とのバランスを考慮した異なる態度があって議論になっているのだろう。リフキンも、「いくつもあるグリーン・ニューディールのストーリーラインをまとめて、首尾一貫した経済的・哲学的な物語へと高める必要がある」と言っているが、社会的なコンセンサスの変化(違う分野ですが、例えばこの何年かで起きた性的マイノリティに対する社会的受容の変化のような変化)が必要で、そのためのストーリーが必要なのかもしれない。ただ少なくとも、カタストロフィの否定ができず、実地での検証ができない以上、また保守的にグリーンを世界は頑張る方に張ることが必要となるだろう。

    最近話題の『人新世の「資本主義」』では、著者の斎藤氏は、今すぐには脱成長を始めないとダメというようなところまで行っている。同書では、リフキンの名前を挙げて、グリーン・ニューディールでは根源的に問題である成長をあきらめきれておらず、手ぬるくて後悔すると指弾されている。ただし、リフキンは、「甘い言葉で社会のグリーン化を語り、グリーン・ニューディールによって今までどおりの生活様式が守れるかのように言う人がいたら、決して信用してはいけない」と書いているのだが。なお、少し科学的に気候変動に興味があるのであれば、『チェンジング・ブルー』が個人的にはお勧め。

    【中国】
    少し意外に思ったのは、中国とEUの関係の評価である。コンサルタントとして、メルケル政権のドイツでインダストリー4.0作成の知恵袋だったことがあったのに加えて、中国の指導者とも関係が深かったリフキンが、「スマート・ヨーロッパ」と「中国インターネット・プラス」の計画の類似性に言及している。すでにEUが中国の最大の貿易相手国であり、中国はEUにとっての第二位の貿易相手国で、いずれ第一位になるとも書かれており、世界経済の中で、米欧の間での強く太い絆が、米中関係の動きとともに少し変わってきているのかもしれない。
    脱炭素の構想についても、中国の「一帯一路」構想を圧倒的にリードしているとリフキンは高く評価する。以前、上海から北京に向かう新幹線からずらーっと大量の風力発電装置が並んでいるのを見て、中国が本気出すとすごいんだろうなと思ったのを覚えている。中国は、PM2.5がありグリーン後進国というイメージがあったのだが、おそらく大気汚染改善の強い必要性もあって、かなりのスピードで技術開発と導入が進んでいるのではという認識を持つことができた。そういえば、中国製造2025でもグリーン製造や省エネ・新エネといったワードがある。その結果としてか、本書でも中国が、「安くて効率的な太陽光・風力発電技術で世界のトップに立ち、その技術を世界中に輸出しはじめた」とある。風力は置いておいて、太陽光の分野では日本が先頭に立って欲しかったところ。

    一方で、本に書かれている話ではないが、電気が安いから、中国でブロックチェーンのマイニングをがんがんやっていたという話もあり、どういうことなんだろうな、とは思う。

    【日本】
    米国での投資は、複数年間にわたり9兆2,000億ドルという日本のGDPを超える巨額費用に上ると言及し、その財源として富裕層への課税や軍事予算削減などが挙げられる。日本でもカーボンニュートラルという話が出てきているが、同じことをやろうとすると当然財源をどうするの問題が出てくる。もちろん、「ニューディール」なので、投下した資本以上の雇用とGDPを生むことになっているのだが、先立つものがないと回転が始まらない。また、そのときに長期で投資回収する既存電力会社の資産がどうなるのか(本書では座礁資産と呼んでいる)も問題となる。移行期間にはLNG火力発電も必要になり、その投資とリスクを誰負担するのかというのも課題だ。
    どうなっているのかは、読みやすさは期待できない政府関連のサイトを見て回ることが必要だろう。

    なお、カーボンニュートラルという観点で、原子力についてのまともな論考がないのは気になるところ。本の中では、常に「化石燃料と原子力」というセットで同一視されて出てきます。脱炭素の観点では違うものなので、リフキンは敢えて議論を避けているように見えます。(一か所、原発建設費が高いので経済的に合わないと言っているところはありますが)

    【所感】
    読み物として面白い本かどうかと言われると、正直決してさくさく読める面白い本というものではない。大事な話なので読みました、というところ。日本のカーボンニュートラルがどの程度までのことを言わんとしているのかで、日本社会への影響は大きく違ってくる。電力会社との関係もあるのかと思いますし。

    ---
    『限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』(ジェレミー・リフキン)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/414081687
    『人新世の「資本論」』(斎藤幸平)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4087211355

  • 地球温暖化対策の専門家による、脱炭素促進の話。著者は第三次産業革命と呼んでいるが、エネルギーを化石燃料から再生可能エネルギーに替えていく事業の進展状況と、アメリカ政府は反対しているものの、アメリカでも投資家や経済界では、環境関連に大きな投資が行われている実態を説明している。温暖化対策は待ったなしであるとの情勢もあるのだが、実際、EUや中国を始め、多くの地域では再生可能エネルギーへの転換が驚くべき速さで進んでいる。アメリカは遅れているが、もしバイデンが大統領になれば、大きく転換する可能性もあるし、その場合、日本は取り残されることとなる。とかく日本人は、自分たちは省エネや環境対策では世界をリードしていると勘違いしているが、脱炭素には全く向かう気配がない。規制緩和と意識改革が急務であろう。
    知識を深めるにはいい文献ではあったと思うが、内容は発散していてまとまりがなく、読みにくい。

    「(グリーン・ニューディール)企業部門には何兆ドルもの座礁資産が生じ、改革の努力を怠っている産油国が影響を受けるのは必至である一方、進展するエネルギーシフトのスピードに気づかない投資家たちは、何兆ドルもの資産を危機にさらすことになる(座礁資産とは、需要の下落によって地下に埋蔵されたままになる化石燃料のみならず、パイプラインや海洋プラットフォーム、貯蔵施設、発電所、予備発電装置、石油化学処理施設および化石燃料文化と密接に結びついた業種の資産など、放棄されるあらゆる資産を含む)」p14
    「ゼロ炭素の第三次産業革命の拡大を意欲的に進める国の政府は、時代を先取りするのに対し、市場原理に従って進もうとせず、崩壊しつつある20世紀の化石燃料文化にしがみつく政府は低迷を余儀なくされる」p15
    「シェアリングによって、人類が使う資源の量をはるかに小さくできるだけでなく、使わなくなったものを他人に譲ることでCO2の排出量を大幅に減らすこともできる」p25
    「共有型経済は18世紀と19世紀に資本主義と社会主義が出現して以来、世界の舞台に登場する初めての新しい経済システムなのである」p25
    「(第三次産業革命のインフラ)それにかかる固定費は極めて低く、限界費用はほぼゼロに近い。スマートフォンとインターネット接続さえあれば、誰でも瞬時にビッグデータや、何百万ものビジネスが集合するグローバルネットワークとそのウェブサイトにアクセスできる」p44
    「(スマートシティ化)計画から実際のインフラ整備にいたるプロセスのあらゆる段階に、深い市民参加を組み込むことが重要だ。これはトロントのスマートシティ計画の失敗から学ぶべき重要な教訓である」p53
    「(若い世代の改革者)怒りに燃え、決意とモチベーションを持った彼らは、あれやこれやできない理由を並べたり、現実的にならなければと主張する人たちには耳を貸さない。この先なすべき大仕事にとって、現実的であることがどれほど非現実的で不十分かは明白なのだから」p57
    「(20-20-20方式)2020年までにエネルギー効率を20%高め、温室効果ガスの排出を1990年対比で20%削減するとともに、再生可能エネルギーによる発電量を20%にまで増大することを義務付けるもの(欧州で提唱)」p58
    「すべての建造物に先進的なメーターその他デジタル装置を設置し、送電網を現在のサーボ機構(自動制御装置)からデジタル接続に転換することにより、地域内の複数の場所で発電された自然エネルギーによる電気を、送電網に流すことが可能になる」p70
    「現在、原子力発電施設の建設と運転にかかる均等化発電原価(LCOE)はメガワットあたり112ドルだが、風力発電は29ドル、実用規模の太陽光発電は40ドルである」p84
    「(反対者の疑念)太陽光・風力発電が2017年の世界の全発電量のわずか3%しか占めていないのに、化石燃料文明が終わりに近づいていることなどありえるのか」p129
    「ヨーロッパは2017年、全電力の15%が太陽光と風力で発電され、同じ年、アメリカは8%、中国は6%、インドは5%、アフリカは2%、中東は1%以下で、世界の平均は6%であった。日本は6%」p131
    「中国はほどなくヨーロッパを追い抜いて、安くて効率的な太陽光・風力発電技術で世界のトップに立ち、その技術を世界中に輸出し始めた。2016年にスタートした第13次五か年計画では、国内にも目を向け、国内市場で安価な太陽光・風力発電技術を大量に生産、販売、実施するようになった」p140
    「人類はグローカル(グローバル+ローカル)で、相互にデジタル的につながったグリーンな世界へと向かっている。目下、その先頭を走っているのはEUと中国である」p252

  • 最近はやりの環境問題について。
    ファッションでもサステナブルはもう切り離せない考えだし、
    SDGsは町中でよく目にする。
    また自然災害の規模も年々大きくなってきているのは肌感でも感じる。
    無限を前提とした資本主義からの脱却の一つとして環境に配慮したアプローチが必要ということだと思う。

    この本で、知らなかった世界の動きが分った。
    し、想像以上に限界は近いし、マクロでは動きが進んでいるのだと感じた。

    COP21(2015年パリ会議)において
    仮に気候変動を踏まえてグローバルに2度の気温上昇を抑えたとしたら、
    座礁資産(投資時点の想定よりもはやく気候変動リスクによる政策変化や市場環境の変化の影響を受けて、
    投資利益を得ることができなくなる資産)が100兆ドルにのぼるという衝撃的なレポートがcitiグループから発表されているよう。
    座礁資産化リスクを踏まえると、一刻もはやく、投資先を変更したほうがよさそう。だし、
    実際は投資家などは投資を避け始めてる。
    世銀グループは2019年から石油・ガスの上流事業への投資をやめた。
    欧州投資銀行(EIB)も2021年の終わりには 発電を含む石油・ガス関連事業への投資を停止。
    日本ではLNGへの投資を増やし、その間に自然エネルギーへの置き換えを考えているよう。

    EUでは気候変動に対してかなりアクティブに動いてる。
    2007年にドイツがEUの欧州議長になっていたこともあり、
    EUで「2020年までにEU全土で利用されるエネルギーの自然エネルギーが占める割合を20%にする」という目標を設定し、
    EIT(市場価格よりも高く自然エネルギーを買う制度)を保証した。
    またすでにEITも廃止されてきてる。それくらい供給が進んできている。
    また創造的破壊は成長率と全体市場の成長率との差分に依存しているとし、
    全体エネルギーの需要速度とその再生エネルギーの成長率を比較すると
    2025年くらいには創造的破壊が起こり、
    石油などの既存エネルギーに対しての需要が下がっていくと。
    そのとき全電力のだいたい15%くらいを再生エネルギーで占めるらしい。
    また蓄電池の研究も大幅に進んでいることもあって、
    創造的破壊の実現可能性が高まっている。
    それによって化石燃料をベースにした電力会社などが倒産するほどの座礁資産が発生する。

    石油依存のエネルギーからの脱却の手段として、掲げているのが、
    スマートグリッド(効率的な再生エネルギーの創出、蓄電池、制御システム、
    データ収集基盤、利用と貯蔵をデータ分析によって自動的に最適化する)。
    スマートグリッドへの変換のためにはインフラへの投資が必要。
    だが、日本では、政府支出のインフラ支出が少ない。
    高齢化社会により社会保障費が大きくなってきているから。
    そこでコンカッション(資産は国のまま、サービス提供を民間が行う状態)がある。
    それにより、インフラ投資の選択肢を投資家に増やし、それをもとにスマートグリッドへの転換を行う。
    ただ、この場合、インフラが経済市場論理に依存しないかが心配。

    スマートグリッドの導入にはローカル(市民)の力が必要だと。
    自然エネルギーはどこでも創出できるから。
    そこで市民でピアアセンブリーを組んで、市場論理だけでスマートグリッドを運営されないように監視する必要がある。
    グーグルがカナダ・トロントで失敗したスマートシティ計画みたいにならないようにするのが大事。

    日銀が環境変動オペを行おうとしたり、
    今現在日本で取り組まれている環境配慮する動きをきちんとこれからウォッチしていきたいと感じた。
    なぜなら、この本では日本が一つも出てこなかったから。
    それくらい環境に対しての日本のプレゼンスは世界において弱いのだと感じた。

  • 私の関心は、炭素税の使い方。主にアメリカの話だが、本著では、地球温暖化による金周りの事が良くわかる。目新しい発見があるかというと微妙だが、化石燃料を巡る座礁資産問題からダイベストメント、ファンドの動きまで。代替エネルギーの技術論よりも経済面に重きを置いた本として有難い。

    当分の間、新しいエネルギー部門に年間およそ3兆5000億ドルの新規投資を行う必要があるという国際エネルギー機関。ファンドマネージャーの89%は、こうした転換による投資リスクが今後5年間にIOCの評価に大きく影響するとの見方。半数はすでに大規模な埋蔵量を有する約200社の石炭、石油、天然ガス企業からダイベストしている。当然、市場は期待値やリスクを見て、動き始めているという事だ。

    また、アメリカの年金基金は総額41兆3000億ドルで世界の投資資本の最大部分を占めている。この運用に際し、座礁資産を抱える化石燃料を産業に投資し続ければ労働者の退職年金を失いかねない懸念があり、アメリカの年金基金も率先してダイベストメントを進め始めている。引き上げた金をどうする?

    発展途上国にグリーン銀行を設立。第三次産業革命のスマートインフラへの転換を促進しようと、グリーン・ニューディールが全世界にアピール。このグリーン銀行が、公的年金基金や民間年金基金とグリーンインフラ構築を結ぶ仲介役となっていく。

    世の中のお金は化石燃料から、再生可能エネルギーに流れていくのは必然の流れだが、座礁資産の問題やこの事も含む、旧エネルギーに取り残される事で更に深刻化する貧困層の救済が必要。ここで炭素税。低所得層の家庭がエネルギー代の値上がり分を上回る程の還付金として分配するという政策だ。また、グリーンニューディールのインフラ構築資金に充てられる。

    富の再分配に炭素税が用いられる。カーボンニュートラルが齎す人類の平等化補正なんて、本当に実現するのだろうか。

  • 前半のビジョンを語るところは面白いが、後半の実現方策を語るところは前のめりになりすぎて鼻白む。研究者ではなく評論家兼ロビーイスト。

  • 第三次産業革命をグリーン・ニューディールと定義し、グリーン電力と、IoTによる効率化によって、脱炭素エコノミーを目指すことが必要としている。インフラ整備のための資金には、社会責任投資を指標として年金基金などを活用することで賄う。

    自然エネルギーを限界費用ゼロ・エネルギーとしているが、それはエネルギー源のみに適用されるものであり、設備の製造・廃棄といったライフサイクル全体で考えたときの費用については考察されていない。ベースロード電源の不在は蓄電池によって賄える可能性もあるが、これについても製造のための資源・エネルギーの確保については未検討。EUと中国が蜜月のときに書かれた内容であるので、地政学的なリスクについても過小評価されている。全体的にナイーブな議論である印象を受ける。

  • #科学道100冊/つながる地球

    金沢大学附属図書館所在情報
    ▼▼▼▼▼
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB29779989?caller=xc-search

  • 科学道100冊 2021 テーマ「つながる地球」の本
    【配架場所】 図・2F開架
    【請求記号】 519||RI
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/457693

  • 要はインフラ、そうなんだけど、そうなんだけどです。

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著者プロフィール

文明評論家。経済動向財団代表。欧州委員会、メルケル独首相をはじめ、世界各国の首脳・政府高官のアドバイザーを務めるほか、TIRコンサルティング・グループ代表として協働型コモンズのためのIoTインフラ造りに寄与する。ペンシルヴェニア大学ウォートンスクールの経営幹部教育プログラムの上級講師。『エントロピーの法則』(祥伝社)、『水素エコノミー』『ヨーロピアン・ドリーム』『限界費用ゼロ社会』(以上NHK出版)、『エイジ・オブ・アクセス』(集英社)、『第三次産業革命』(インターシフト)などの著書が世界的ベストセラーとなる。『ヨーロピアン・ドリーム(The European Dream)』はCorine International Book Prize受賞。広い視野と鋭い洞察力で経済・社会を分析し、未来構想を提示する手腕は世界中から高い評価を得る。

「2020年 『グローバル・グリーン・ニューディール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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