- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140884515
作品紹介・あらすじ
ウクライナ危機、イスラム国、スコットランド問題…世界はどこに向かうのか?戦争の時代は繰り返されるのか?「資本主義と帝国主義」「ナショナリズム」「キリスト教とイスラム」の3つのテーマを立て、現在の世界を読み解くうえで必須の歴史的出来事を厳選、明快に解説!激動の国際情勢を見通すための世界史のレッスン。
感想・レビュー・書評
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元外務省でロシアを担当していたので反米的な主張はまぁ仕方ないのかなと思いますが、中国をスルーしているあたりに著者の思想的なものが入りすぎてる印象を受けました。その点がちょっと残念な本だなという感想です。
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【本の目標】歴史を過去との類比によって捉える力を磨く。最終目標は「戦争を回避する」こと。
(学校の勉強としての世界史の極意ではありません)
【結論】現在は「新帝国主義」であり、第1次世界大戦の前状況に近づいている。
私たちは「複数の歴史」があることを認識し、「見えない世界」へのセンスを磨く必要がある。
【概要】
① (過去)
資本主義が進むと国家と結び付き、金融資本が牛耳るようになる。蓄えられた金融資本は外国へ投資され、多国籍企業が生まれる。こうして経済的な強国が弱国を植民地的支配をしていく。帝国主義が生まれる。
帝国主義間の対立は世界大戦へ帰結する。
①'(現在)
ソ連(共産主義)崩壊により資本主義のブレーキがなくなった。資本主義が加速し、格差も拡大している中で新帝国主義が生まれている。
中国やアメリカなどの国際的強者の対立が始まっている。
②(過去)
百年戦争などにより中央集権が進む中で宗教改革が起こり、宗教より国家への帰属意識が強くなった。さらに、フランス革命とナポレオンによりナショナリズムによって強くなったフランスを各国が目の当たりにした。
国民国家は帝国主義下で国家の強化や格差で生まれた精神的な空白を埋めるためにナショナリズムを利用した。
ナショナリズムによる民族的対立が第1次世界大戦のバルカン半島の火種や昨今のウクライナ問題などへ繋がっている。
②'新帝国主義の基でアメリカが持つ合理主義が台頭している。そのため、格差の中で精神的な空白が生まれ、スコットランドやアイルランド、ウクライナ、沖縄など民族意識が高揚に端を発する問題が増えている。
一方でISなどイスラム過激派は精神的な空白を宗教的に乗り越えようとして原理主義のばらまきを行っている。
これらの問題はバルカン半島のように火種として各地で燻ることになる。
【どうしていく?】
日本としてはイギリスのように世界は多視点から見る必要があり、世界史は複数あることを徹底的に教えていく必要がある。
【その他】
恐慌が起こるサイクル(著者的に有力な説)
①モノが売れる ②労働力が求められる ③賃金が上昇 ④人件費が利益を圧迫 ⑤恐慌が起きる ⑥イノベーションで回復する
イスラム過激派の正体
①イスラム教は大きくスンニ派とシーア派がある
②スンニ派の中にハンバリー学派がある
③ハンバリー学派の中にワッハーブ派がある
④イスラム過激派は全てワッハーブ派である
つまり、イスラム過激派は極一部の小さな派閥にすぎない。それをイスラムやスンニ派のような大きなくくりで危険であるかのように扱ってはいけない。
マルクスの考える資本主義では賃金は三つの要素から決まると考える。
①労働者が生活する費用 ②労働者が家族を養う費用 ③労働者が自分を教育する費用
会社の利益に対して①~③以上の物は払う必要性がない。
サラリーマンの給料はなかなかあがらず、資本家が利益の分配を受けてさらに儲かる。
投資家が資本主義のルールの中ではどうしても強くなる。
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著名な歴史学者、民俗学者らの主張をつなぎ合わせるかたちで国際社会の紛争や経済、宗教上の問題・課題を読み解く一冊。世界史で学んだ過去やニュースで取り上げられる表層の事象が本書の解きほぐす土台、骨組みの上で起こっていると理解できる。
国際情勢の専門家として信頼する佐藤優さんが15年の出版当時、クリミア編入したロシアと、米国に現在も脈々と続く合理主義信奉のパワーバランスが第一次世界大戦直前に酷似していると本書で指摘(92%辺り)しているのが印象に残った。20年現在も米中間の対立が紛争に発展する可能性について警笛を鳴らしている。 -
世界史はひとつではない。勝者から描いた歴史。敗者から描かれた歴史。そこにある事実をどのように捉えるか。相手の立場に立って考えるという想像力があれば最後の手段の戦争もなくすことが出来たのかもしれない。
宗教的な結び付きよりも民族的な繋がりが言われる時代。イギリスのブレグジットでヨーロッパが分断されていく時代。中国が経済的にも政治的にも巨大な力を得る時代。何だかんだで大変な世の中になってきたと思うけど、大きな歴史の流れで見たら決して楽な時代はないのだと思いました。 -
民族やナショナリズムの発生過程について、これまでの見方を覆す斬新な視点が提供されていて勉強になった。
民族は自然発生的に生じるものではないが、かと言って人工的に作られるものでもない。そこにはエトニが必要で、エトニの形成には共通語の存在が重要な役割を果たしている。これ以外にも3大宗教や資本主義の理について多くを学ぶことができた。
しかし本書の主題である、アナロジーによる歴史の把握はよく理解できなかった。歴史はsroryであり、『大きな物語』で捉える重要性は解る。ただ著者の主張は、2008年を境に新帝国主義の時代に入ったと言うものだが、米ソ冷戦時代を含めて大航海時代から常に帝国主義が続いているように思える。著者の定義によれば、帝国主義とは独占資本と国家が結託して経済支配力を地理的に広げていくことだが、こんなことはいつの時代もあったのでは?別に2008年になって急に再開したものじゃないと思う。
よく解らん。 -
現在の世界で何が起こっているのか、「資本主義と帝国主義」「民族とナショナリズム」「キリスト教とイスラム」の3つの視点を使って、過去の類似のケースと類比的に結びつけることによってそれを解き明かそうとの試みです。今までの歴史の何故について、いまいちど勉強し直せるほか、他の視点から見た歴史の存在もあり、それも知ることの必要性も学ぶことができます。
今の世界を知るために、何を勉強したら良いのか、その起点を知ることができます。 -
ビジネスパーソンの基礎教養の一つは世界史。
それは強力な武器になると。過去に起きたことのアナロジー(類比)によって、現在の出来事を考えるセンスが必要でたり、これをアナロジカルな視点で世界史を読み解くということ。
神学部出身の筆者ならではの、目に見えない神学的な考え方を取り入れ、それによって、現在起きているウクライナやスコットランドなどの独立の動きなども体系的に整理していて、目に鱗のはなしばかりであった。
新帝国主義なるものが、今の世の中を激動の時代に変える可能性があることを、どれだけの現代人が知っているのであろうか。
もっとたくさんのひとにこの本を読んでもらい、今起きている、一つ一つの出来事にそれぞれ向き合ってもらいたい。 -
ここ最近の佐藤優さんの本の出版スピードがすごいですね。
池上さんの共著や手島さんの共著も気になりつつも、「世界史の・・」とタイトルにあったので、まずはこの本を読んでみました。
イスラム国やウクライナ情勢、スコットランドの独立運動など、現在の世界情勢への理解を助けるために知っておきたい世界史の話を宗教(特にキリスト教とイスラム)、ナショナリズム、資本主義と帝国主義の3つのテーマで書かれています。
佐藤氏は現在を「アナロジー的視点」で見ることが大事と言います。アナロジーとは「類比」。
で、この本は世界史を通して「アナロジー的視点」で今を見る訓練をする本だとのこと。今が歴史で言うどの状況に似ているのかを冷静に見極め、何をすべきかを考えるためのきっかけになる本です。
巻末には佐藤さんなりの答えがバッチリ書かれていたので、最後をパラパラめくらないで最初からじっくり読むことをお勧めします。
また、3つのテーマについてさらに深く勉強できるように文献紹介も載っています。これでさらに読みたい本が増えてしまうのよねwww -
資本主義と帝国主義、ナショナリズム、キリスト教とイスラム等我々が知っておくべきことを豊富な知識と、高い見地から解説してくれている。読んでおくべき本。
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『知の巨人が選んだ世界の名著200』★3