子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885239

感想・レビュー・書評

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  • 親になる前に読んでおきたい1冊。
    子供は先天的な障害(自閉症やADHD)をもつこともあるが、後天的な障害をもつことも多く、それはたいてい親によるマルトリートメント(強者の大人による弱者の子供への虐待、威嚇、罵倒、無視、放っておく等)によって引き起こされる。本書はその部分にスポットを当てて論じる。
    特に子供の前での夫婦喧嘩は子供の脳をかなり萎縮させる行為だそうで、気をつけなければならないと感じた。

  • 新聞で目にして気になった本。

    親の不適切な養育(マルトリートメント)により子どもの脳が変形してしまうという話。
    脳科学的にも、データが出てしまっているのね。

    虐待とまではいかずとも、子どもに対して、よくないこと言っちゃったなとかしちゃったなっていうことは誰しもあると思う。そして、それが子どもに及ぼす影響が大きいということをみんなもっとちゃんと知った方がいい。


    本書を読んで大きく感じたことが二つ。
    一つは、やっぱり日本って研究データが少ないなあということ。教育に関しても思うけど、生身のデータよりも大人たちの経験で語られることの方が多い。いやいや経験より、データくれよ。その点で、この本はいろいろなデータを示してくれているし、そういう視点から子どもたちを救おうとしているところにとても意義深さを感じました。

    もう一つは、自分も子ども(6か月)がいるのですが、知らず知らずのうちにマルトリートメントしてるのではとヒヤリとしました。ちょっとの間だけと思って、子どもが泣いてても待ってとか言っちゃったり、子どもの前で旦那に文句言ったり……虐待とまではいかなくても、子どもの脳に悪影響を与えかねない行為をすることのないように気を付けようと思いました。とりあえず旦那と子どもの前ではケンカしないようにしようと約束しました。

    傷つきやすい子どもの脳ではありますが、適切なケアを行えば修復もしやすいということで、その点には希望が見いだせる一冊でした。

  • 子どもの対する不適切な養育(育て方や接し方)が子どもの脳を傷つけ、学習意欲の低下や非行、うつなどの精神疾患を引き起こすことが、最近の(というか長年のかも?)研究からわかってきたとのこと。

    以前からも同様のことは言われていましたがそれは、身体的な虐待やネグレクトのみをさしているようなイメージがありましたが、親が自覚しない精神的・心理的な虐待でも同様もしくはそれ以上の傷つけ方をしているかも・・・ということが書かれてあり、真っ青になりました。

    親が自覚しづらい虐待・・・というか不適切な養育にはこんなものも含まれるとのこと。思い当たる方もいるのではないでしょうか。私はあります。だから青くなりました。

    ・子どもの失敗を頭ごなしにしかりつける。
    ・「ぐっずり眠っているから」と下の子を寝かせたまま、下の子を一人にして上の子の幼稚園のお迎えに行く。
    ・子どもの前で夫婦げんか
    ・上の子と下の子の勉強やスポーツの出来などを比較する。
    ・できなかったテストの点を本人の前で他人に話す(本人の尊厳を傷つける行為となるそう)。

    こういう話が出てくると気になるのが、
    ・どんな行為が不適切な養育(著書ではこれを「マルトリートメント」と言っています)にあたるのか
    ・子どもに対するそのような行為が子どもの脳に与える影響がいかほどのものか
    ・子どもが受けた脳の傷は治るのか。治し方は。年齢を重ねるごとに難しくなるのか。まだ間に合うのか。
    といったところでしょうか。

    本書にはそれらの答えとさまざまなヒントが書かれています。

    そして最後にちらっと触れてありましたが、ケアの必要があるのは子どもだけではなく、親に対するケアの必要性についても書かれています。こういう本は、親側から見るとつい「自分が責められている」という感覚になりがちですが、そんな心配はしないで一度手に取っていただけるといいと思います。

    私も読了後、大いに反省。

  • 子どもに対する不適切な関わり方が、子どもの脳そのものを変えてしまうという事実に衝撃を受けた。子どもへの不適切な関わりといえば「虐待」というキーワードがまず浮かぶが、本書では、より広い概念として「マルトリートメント」という言葉が使われている。このマルトリートメントには、言葉による脅し、威嚇、罵倒、あるいは無視する、放っておくなどの行為のほか、子どもの前で繰り広げられる激しい夫婦げんかも含まれている。本書では、それらの行為が行われたときに、子どもの脳にどのような影響があるのかを明らかにするとともに、そういったマルトリートメントを受けた子ども、そして加害者側である大人に対してどのような対処や療法が必要なのかが具体例とともに紹介されている。子どもたちを助けるとともに、親(をはじめとする養育者)を助けることが重要であるという著者の意見に強く賛成したい。

  • この本にあるように、子どもの時に過度なマルトリートメント(虐待)を受けるとトラウマが残るそうで、これも私は配偶者を見て激しく同意です。
    この本の中で、このように傷ついた子どもの心を支えるための「指示的精神療法」が次のように紹介されています(P116~P117)。
    ・情緒的に安定させる
    ・「トラウマの記憶とそれに対する反応(感情)」という一連の負のパターンを解消させる
    ・トラウマとなった過去の出来事を客観的にとらえ直す
    ・安全で良好な社会関係、対人関係を築く
    ・回復的な情緒体験を蓄積させる(こころを穏やかに保てるような体験を増やしていく)
    もっとも安心できる相手に自分の気持ち(今のことも昔のことも含めて)を正直に話し、それを受け止めてもらうことができれば、そして自分の気持ちに沿った行動ができれば(周囲のサポートがあれば)、たとえ子どもの時に傷ついた心であったとしても、自分の人生を生きることができるようになっていくと私は思います。

  • 義理の実家の状況がまさにこういう感じなので読んでみました。
    もう子供は大人になってしまっていますが、、
    なんとかしたいので、ヒントになります。

    @@@@@

    自分の生い立ち、実家のことも振り返りました。
    両親はごく普通の人たちで、嫌な性格というわけでもなく、むしろ非常に常識的で善良な市民です。勤勉に働き、よく育ててくれたとは思っています。
    それでも、時代のせいか、マルトリートメントがいっぱいありました。

    両親が嫌いです。軽蔑しています。
    気持ち悪いので目を合わせなくないです。
    私が人と目を合わせて愛想よく会話できるようになったのは大人になってからです。
    両親に甘えたくない(心底気持ち悪い)ので昔は人に甘えるのが下手でした。
    彼らと関わりたくありません。

    就職してすぐ一人暮らしをはじめ、
    しばらくはストレスで歯軋りが治りませんでした。

    友達で”両親のことが大好き””尊敬してる”という子たちがとても羨ましかった。

    きっと、どちらが悪いわけでもない。
    ただ、私と両親は合わなかった、それだけ。

    @@@@@

    虐待まではいかないマルトリートメントは世の中に溢れている。
    私だけが特別、育ててくれた親を嫌いな、恩知らずで、冷たい、そんな軽蔑すべき人間というわけではない。
    自分の気持ちを整理することができました。

  • 親からの虐待=マルトリートメントで、子供の脳は萎縮するというのが、衝撃的だった。

    虐待と言っても、身体的なものだけでなく、暴言により子供を傷つける心理的なものもあるので、日頃の言動に気をつけなければと思った。

  • 脳科学から見るマルトリートメント(不適切な養育)による子どもの脳への影響について提唱されてる本。

    『(身体的)虐待』は心の殺人という理解が増えて、社会の認識で絶対やってはいけないこととなってる中で、『(心理的)虐待』とは何を指すのかどこまでがあたり、どのような影響があるのかも不透明。虐待という言葉を使うと身体的虐待のイメージが付きまとい、我が家は違うという風に問題視してもらえないと考え、"マルトリートメント"という海外でも使われてる表現で話は進められていく。

    そのマルトリートメント、実はどの親にもはっとすることはあるんでないのか?という話。

    そしてマルトリートメントがどのように子どもの脳に影響があるかわかってきたよという話。

  • マルトリートメント(不適切な養育)
    体罰はもちろん、子どものプライドを傷つける言葉を浴びせてしまうと、脳が変形する。

    脳のMRI画像で事の重大さを伝えていて、思わず「うわっ」と言ってしまった。

    P133 レジリエンス に関するところを読んでいて感じた事。
    人の関係性の中で、論理的に話が通じる相手ならば納得できるだろうけど、感情的に恐怖を持ち出して解決してきた関係性においては、論理では解決できない。

    高次の視点から問題を捉え直す必要がありそう。

  • 子育て世代だけでなく、全ての人に勧めたい。
    虐待を受けた子どもの脳はどのように傷付きその後の人生に影響を及ぼすのか。被害者だけでなく加害者支援もしていくことの重要性。傷付いた子どもの脳の回復過程。全てが勉強になった。科学的根拠もわかりやすく示されていてとても読みやすい。

著者プロフィール

小児精神科医。医学博士。福井大学子どものこころの発達研究センター教授。熊本大学医学部医学科修了。同大学大学院小児発達学分野准教授を経て、2011年6月より現職。福井大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長兼任。2009─2011年および2017─2019年に日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループ共同研究日本側代表を務める。著書に『子どもの脳を傷つける親たち』(NHK出版新書)、『新版 いやされない傷』(診断と治療社)、共著に『虐待が脳を変える─脳科学者からのメッセージ』(新曜社)などがある。

「2019年 『親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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