異形のものたち: 絵画のなかの「怪」を読む (NHK出版新書 651)
- NHK出版 (2021年4月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140886519
作品紹介・あらすじ
我々は、何に魅入られ 何を恐れてきたのか――?
人獣、モンスター、天使と悪魔、妖精、異様な建造物から魑魅魍魎まで――。
一見して奇異で不穏、そしてメッセージ性に富む「異形のもの」の美術作品は、
画家の「書きたい」という意志をも凌ぐ「見たい」という大きな需要によって支えられてきた。
それら絵画はなぜ描かれ、なぜ鑑賞者に長く熱く支持されてきたのか。
神への畏れ、異性への恐怖、淫欲と虚栄、人間本性への疑義、薄れゆく信仰心……
描かれた怪の中に人間の本質を読む、「怖い絵」シリーズ著者待望の最新刊!
感想・レビュー・書評
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はじめに「「それまで気づかなかった新たな美」「怪の中に人間の本質を見出し」と著者は書いている。観る方としてはそうだが、画家たちは、どうかなあ。ほとんどの画家は、そんなことは考えずに、心から楽しんで描いているような気がする。ボスやブリューゲル、アルチンボルドなんて、特にそうだよ、絶対に。
①人獣ー人魚、セイレーン、ハルピュイア、ケンタウロス、魚面人間
②蛇ーイブをそそのかした蛇、ラミア、メドゥーサ、大海蛇、ミッドガルト蛇、ヒュドラ、エリクトニウス
③悪魔と天使ー尻に顔のある悪魔、聖アントニウスを誘惑した悪魔、反逆天使、レッドドラゴン、疫病をもたらす悪魔、聖痕を与えるビームを出す天使、顔しかない天使、巨大天使、傷つけられた天使
④キメラーキマイラ、ケルベロス、スフィンクス、一角獣、グリフィン
⑤ただならぬ気配ーフリードリヒ「ブナの森の修道院」、セガンティーニ「悪しき母たち」、ベックリン、ギーガー「死の島」ピラネージ「牢獄Ⅶ跳橋」、エッシャー「滝」、エル・グレコ「トレド眺望」、ハンマースホイ「室内」、ホッパー「線路脇の家」
⑥妖精・魔女ーグノーム、妖精、リチャード・ダッド「お伽の樵の入神の一撃」=「フェアリー・フェラーの神業」(クイーンの曲名)、サバト、国を破壊する聖女にして魔女(モッサ「エル」)
⑦魑魅魍魎-ルドン「キュクロプス」、フュースリ「夢魔」、ブロンツィーノ「愛の寓意」、ボス「快楽の園 地獄」、ブリューゲル「反逆天使の堕落」
ホッパーの絵がヒッチコックのサイコのインスピレーションのもとになったというのには驚いた。勿論、クイーンの曲もね。ハンマースホイの絵にただならぬ気配を感じ取るとは、なるほどねえ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
果物や野菜の寄せ絵で有名な
アルチンボルトの
「水」
ぎゃー これはめっちゃ怖い!!
果物や野菜の時は
ギリギリ可愛さがありましたが
これはグロいです
勇気のある方だけ みてください
異形のものが書かれた背景から
紹介される各絵の簡単なポイントが
載せられていて とても見やすく面白いです -
古今東西、描かれてきた、異形のものたちの姿。
「書きたい」と「見たい」を中心に絵を読み解いてゆく。
第一章 人獣 第二章 蛇 第三章 悪魔と天使
第四章 キメラ 第五章 ただならぬ気配
第六章 妖精・魔女 第七章 魑魅魍魎
本書に登場した主な画家の一覧有り。
それは画家の突飛な想像力の産物であり、技術の結晶。
されど、噂のものを書いてみたい、見てみたいの欲の供給と需要。
信仰や地位の誇示、或いは裸体を書きたい&見たいの欲もある。
そんな異形の数々を各章のテーマ毎に読み解いていく。
乗馬の姿が人馬一体となってケンタウロスとか、
遥か昔の神話や伝聞に登場するモノたちとか、
不確実な存在は、大いに想像力を刺激し、異形のものを
生み出しています。時代や環境によって変容していることも。
廃墟に異形を感じる絵画は、過剰な量の異形のものたちよりも、
畏怖の度合いが高く、虚無の感覚が背筋を寒くします。
あの映画やあの曲の原点である絵があるのも、良かった。
ただ、今回は持論をかなり前面に押し出してる感じが漂います。
文中の説明に合わせて、絵の一部を拡大したり、
矢印で示すのは分かり易くて良かったけれど、
1枚の絵を見開きで見せるのは、ページの狭間の真ん中の部分が
埋没して見にくい。新書サイズというのも、難点です。 -
異形。普通と違った怪しいすがた・かたち。
今まで読んできた「怖い絵」は決して見るからに怖いものではなく、その実情を知ると怖かったというものが多かったですが、「異形の絵画」はそのものが「怪」です。
ファンタジーというか。
あまり好きではない分野です。
日本ではアニメやゲームに影響与えているようだし
最後に中野さんもおっしゃっていますが
女の子より男の子のほうが好むみたい。
昆虫やバルタン星人に熱中する女の子は少数派だし。
そんな中、クイーンの『フェアリー・フェラーの神技』がその絵にインスピレーションを受けて作られたという
ダッドの『お伽の樵の入神の一撃』には惹かれました!
(原題は同じ)
こまごまとした絵を見ながら
「いままでも中野さんの本を読んで、たいてい一番にブリューゲルの絵を見たいと思ったのは、細々していたからだったなー」
と思って読み進めていたら、なんとこの本でも
真打はブリューゲル!
『半逆天使の堕落』ベルギーにあります。
見てみたいなあ。 -
安定して面白い。
んだけど、アニメ絵とか女性画家にちょっと偏見が見え隠れするのが寂しかったです。キャッチーなことを書こうとして逆に古い価値観が出てしまってるような。
異形絵って今のラノベみたいで楽しいなあと思いました。 -
見たことのない絵もあって面白かった。
しかし、あまりにグロい絵は何処に飾られていたのだろう?本で観るなら良いけれど。
人間は美しいものだけではなく、色々なモノを見たがるものかもしれない。 -
安定して面白いんだけど、結構いろんなところで見る画が多いかなぁ。エスプリは控えめ。
ワッツとモッサが良い。もっと見たいんだけど、両者とも寡作なんだろうか。 -
主に14世紀〜16世紀、18〜20世紀の奇想・幻想絵画を取り上げ、描かれている実在しない生物・魔物・幽霊・怪物などの描写を細く読み解いていく内容。なるほど、と思うことも多く面白いのだが、新書の大きさの中で、壁一面のようなサイズの絵画の紹介をするには限界がある、とも思った。