- Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150102302
感想・レビュー・書評
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昔、ニートやフリーターの問題を考えているときに「徴兵制にして(もしくは志願制でも)期間後に正社員を約束する」ような制度でもできれば解決するんじゃねえの?とか思ったんですが、なんとなくそれに近いような本です。
「趣味」として最近読書を始めた自分ですが、この本でようやく50冊読みました。これからもゆるくですが続けていきたいものです。
いちばん最初、読書を始めるきっかけはSF小説を読みたいということでした。そしてSFといえばハインラインとディック、というイメージです。アシモフやクラークよりはハインラインとディック。
さらにハインラインの中でもメカ好き男の子、いやオタクの子は『宇宙の戦士』、女の子は『夏への扉』という感じがなんとなくしますね。ただの偏見でしょうか?女性で「『宇宙の戦士』がすごく好きなんです!」って人をあまり知らないんですよね。
この本は約500頁ほどあるので、読むのにものすごく時間がかかりました。昔、6割ぐらい読んでたんですが途中で飽きてしまって放り出しまして、今回いちから読み直し。
「宇宙戦争もの」ではあるんですが、戦闘描写は冒頭とラストバトルだけでほとんどありません。そういうのを期待して読むとがっかりするかも、そういう人は『エイリアン2』を観るといいと思います。
『フルメタルジャケット』前半にあるような訓練シーンに多くの頁が割かれていて成長物語にもなってます。あとはこの世界の兵役と市民権について。
1959年とベトナム戦争前なので『フルメタルジャケット』のように内省的ではなく、軍国主義的右翼的な内容と一般的には言われています。個人的なイデオロギーは抜きにして、戦闘描写よりもこの部分の方が面白かったです。
戦闘描写については少ないですが冒頭で「つかみ」になってて、構成的にはいまのアクション映画とまったく同じなところに感心しました。
ハインライン本人についてですが、この人は軍隊には入っていたものの前線に出て戦ってはいないんですよね。この点は大事なところかもしれないです。
書かれたのが1959年なので、先にも書いたように右傾的なのはベトナム戦争に至る東西冷戦の緊張が高まっていきつつある頃だから。
なので敵であるクモ型異星人は共産主義国家に対する脅威だそうですが、我々からすればアジア人なんじゃないのか?とも読めてしまいます。
というのは、主人公の乗る宇宙船ロジャー・ヤング号の名前の由来となったロジャー・W・ヤングは第二次大戦中に日本軍と戦って戦死した人なんです(作中に解説あり)。
しかし、最後に明かされる小説ならではの衝撃の事実は、主人公であるジョニーがフィリピン系だということでした。これがクモ型異星人はアジア人がモデルではない理由になるのか、それともハインラインのただのエクスキューズなのかはわかりませんが・・・。
主人公がラモン・マグサイサイ大統領を英雄視していますが、この人は抗日ゲリラかつ反共主義(つまりは親アメリカ)だったんですよね。このことからもハインラインの思想が読み取れます。
タイトルについて、『Starship Troops』ではなく『Starship Troopers』なのは生身ではなく機動歩兵を駆る騎兵だからか、もしくはWWIの塹壕戦におけるドイツのSturmtruppen=Stormtrooper(ストームトルーパー)からきているのかもしれません。
Sturmtruppenは日本語だと突撃歩兵と訳されますが、特攻隊とも言われます。矢野徹さんがハヤカワ版以前に訳したものは『宇宙の特攻兵』という邦題だったので、trooperの部分はこの突撃歩兵・特攻兵と矢野さんは訳したのではないかと。
たぶんその理由としては冒頭で引用される言葉がWWIの兵士のものだからで、ニュアンスとしては『宇宙の特攻兵』の方が正しいと思います。
最後に、有名な話ですがガンダムの元ネタになってる小説です。数年前に加藤直之さんご本人もこの経緯をTwitterで語られてました。
http://togetter.com/li/269928
http://togetter.com/li/272994
http://p.twipple.jp/3q1Rp
http://p.twipple.jp/WciE3
個人的に気付いた点は機動歩兵が飛行はできずにジャンプを繰り返す、というところ。
もうひとつ、終盤にニュータイプが出てきたのにはものすごくびっくりしました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「月は無慈悲な夜の女王」とともにガンダムの元ネタということで遅ればせながら読んでみた。
タイトルからもっと戦闘シーンの多い内容なのだろうと予想していたが、そうではなかった。
メインはむしろ主人公の青年が軍隊経験を通じて大人に成長していくその道のりであって、戦争は厳しい社会の暗喩として描かれていたように思う。
戦争シーンの生々しく過酷な描写が意図的に避けられているので肩透かしを食らった感のある読者もいるだろうが、僕はエンターテイメントとして高いレベルで完成された、熱い青春物語としてとても楽しく読んだ。 -
思いっきり軍国主義というか、軍の戒律万歳なこの小説を本気で読むべきか、唾棄するべきか、皮肉に受けとるべきかは、先に映画版を見ていたあとだっただけに微妙なところでした。
とにかくリアル、相手が蜘蛛の宇宙戦争であるのに全くファンタジックでないところ、そのリアルさが面白かったです。 -
古典。ストーリーは単調。「フルメタル・ジャケット」みたいなノリがほとんど。ただ戦争をネガティブにはとらえない。現代の社会道徳が失敗したのを教訓に作られた社会道徳という設定。十代の頃、背伸びして読めば、いろいろ考えさせられるかも。
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道徳は備わっているものではなく、熱心に教育されたものだ
的なやり取りがあったのが好き。 -
ヒューゴー賞、原書名:Starship Troopers(Heinlein,Robert A.)
著者名:ロバート・A・ハインライン(1907-1988、アメリカ・ミズーリ州)[海軍兵学校]小説家
訳者:矢野徹(1923-2004、愛媛県松山市)[中央大学法学部]作家・翻訳家 -
中学生の頃に読んだハズ。イラストがカッコよかった。タカ派って言われてるの?ハインライン。確かに兵役をこなしたものにしか市民権を与えない的なところはね。
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こんな日本でよかったね。
参考文献 -
娯楽小説に止まらない、深い本だ。こういう本が不朽の名作と呼ばれるのだろうと思う。すごく面白いというだけでなく、読むたびに何かを考えさせられる。以前読んだときとは、全く違う部分に今の自分が感応するのだ。今回は、教育というものについて、改めて考えさせられるとともに、サラリーマンの在り方について、再考をさせられた。兵士だって、やること一杯で、時間が足りないと叫んでいたんだなぁと思った。