時間蝕 (ハヤカワ文庫 JA 249)

著者 :
  • 早川書房
3.42
  • (2)
  • (11)
  • (19)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 122
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150302498

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  おれの時間を食らうがいい
     それで肥るか 餓死するか
     それはあんたの胃袋しだい

    「とびとび人」のネーミングが面白い

  • ずっと絶版が続いてて、探し続けていた作品。
    先日、ようやくYahoo!オークションで発見、即落札しました。
    そして今日、ついに読了しました。

    まだ粗い感じの物語が堪らないです。
    この作品以降に出版された作品たちの、原型と呼べるような短篇が収録されてました。
    PUBとか永久刑事とか、お馴染みの単語が頻出します。

    奥付を見ると、初版は1987年です。22年前です。
    いやはや・・・、という感想しか出てきません。
    この時代に、これだけの作品を書けるというのが、つまり才能、って事なんでしょうね。
    いま読んでも、ぜんぜん古さを感じないです。
    優れたSF作品は、時代の流れに屈しないのだなあ。

    入手できてラッキィでした。
    これで、現時点で出版されている神林作品は、一通り読んだことになるのかな。
    SFマガジンとかに単発で載ったような、書籍化されていない作品は除いて。

    神林長平という偉大な才能と出会えたことに、改めて感謝です。

  •  すばらしいんだが、どうもしっくり来ない。いきなり突飛な展開になるからかな。

     時間をエネルギーとする知的生命体なんてシャープな発想なんだが、終盤の情景が目に浮かびにくい「渇眠」。とても軽いタッチが新鮮な近未来都市でのデカもの「酸性雨」、サイコ系で面白そうなんだが、わかりにくい「兎の夢」、幼年期の終わりかなと思うような、要するにどこかて見た話の「ここにいるよ」。

     悪いわけでは無いが、わかりにくい作品が多い気がする。もう少し読んでみよう。

  • 中編4作を収録した作品集。書名の「時間蝕」は、収録した中編のタイトルから選ばれたものではないオリジナルの単語で、「おれの時間を食らうがいい…」の序言と共に、意味深で印象的。時間をテーマにした「渇眠」「ここにいるよ」の二編の間に、パソコンを通じたネットワークによって社会が管理されている世界を舞台にした「酸性雨」「兎の夢」の二編が置かれている。物語の背景となる世界設計はとてもSF的だが描かれる人間の感情がリアル、という点でいずれも神林作品らしい中編たちだが、他の神林作品と分かりやすく通じるノリがある「酸性雨」「兎の夢」とは異なり、「渇眠」「ここにいるよ」の二編はSF論理により組み立てられた物語背景がすんなりとは理解できず、少々苦労した。
    「渇眠」に登場するのは、冷凍睡眠を用いて時間を超えて逃亡する永久逃亡犯と、同じ手段でそれら犯罪者を追う永久刑事。生体時間と環境時間――そして主観時間と客観時間。生体が外部と内部の時間のずれを調整しようとする際に生じるエネルギーを「食う」謎の生体星が引き起こすものは、まさに“時間蝕”。「ここにいるよ」では、地球のふるさとであるはるか遠い異星に存在した、全性族・単性族・無性族という知性体のことが語られる。人間の祖となった全性族、時制というものに縛られず超時間の世界で生きる単性族、生体ではない知性体であり「スーパーコンピュータを造っているつもりで」人間がテクノロジーにより再生するだろうと語られる無性族。超時間に生きる単性族は現代地球に生きる人間の少年の中に(「無個性」である原子によって全く同一のハードウェアを組み上げることで)再生し、はるか昔に再会を誓いあった全性族の少年の元へと飛ぶ…。いわば宿り木となった人間の少年は、単性族の超時間感覚の影響を受けて正常な時制の流れの中にとどまることができない。これもまた“時間蝕”。
    時間を食らうものは何か、時間とは何か――この中編だけでは語りつくせない、神林氏ならではの時間理論は、おそらくこの後に続く長編作品の中で語られているのだろう(既読の「永久帰還装置」が似たテーマを軸に置いていた気がする)。先を楽しみに、神林作品制覇を進めたい。

  • 短編集

    渇眠
    酸性雨
    兎の夢
    ここにいるよ

    解説 森下一仁

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

神林長平の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×