- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150308414
感想・レビュー・書評
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雰囲気が外国の作品のように感じた、登場人物の名前は日本人なのに…
雪風もこんな雰囲気だったかもしれない。
だけど、解説の桜庭一樹さん程にはハマれなかった。
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書かれた時期はバラバラながら、どれも仮想空間=ヴァーチャルリアリティにまつわる短編集。基本設定的にはたぶん同じ世界の違う時代の話の連作となっているけれど、個別の話としてもそれぞれ読める。
最初の「抱いて熱く」がシンプルに面白かった。SFとしても初心者にもそれほど難解ではないし、若い男女の恋愛ものとしても読める。自然現象か宇宙人からの干渉かは不明ながら、人類は人口密度が高まり触れ合うと発火するようになってしまう。ほぼ滅亡しかけている人類、桂子と水天(ミテン)は恋人同志だが手をつなぐことすらできず、廃墟となった町でかろうじて食料を探し生き延びている。やがて小さな集落に辿りつくが実は彼らは…。触れあうことが不可能なゆえに、仮想現実に逃れた人々の登場。
「なんと清浄な街」では、すでに人類はほぼ全面的に仮想現実界に移行している。だが謎のバグが生じ…。表題作「小指の先の天使」になると、どうやら仮想現実に行ってしまった人々のことは神格化されており、その番人と、現実の世界に生きている少数の村人がいる時代となっている。
「猫の棲む処」は、その番人の物語。仮想現実世界の少年の一人が本物の猫に触れてみたいと言ったことから番人は彼を外の世界へ案内するが…。そして「意識は蒸発する」になると、さらに時間は流れ、もはやその仮想現実へ行くためのシステムは古代遺跡のような扱い。人類の一部は火星に逃れており、地球に戻ってきてそれらの遺跡を調査、一人が実際にシステムを使い仮想現実世界にはいることを試みるが…。
いずれも、肉体と魂の関係について考えさせられる。仮想の世界で生きていくためには、人間は脳しか必要なく、他の器官は退化、チューブに脳だけ繋がれているような状態で充分なのだけど、そうなるともはや仮想現実界で人間の姿を取り続ける必要すら見いだせなくなっていくわけで、そしてもちろん現実の子供はもはや生まれない。そうなると肉体は必要ない…とはいえ、ではなんのために人は生きるのか?と沸き起こる疑問。実はとても哲学的なテーマを内包している。
※収録
抱いて熱く/なんと清浄な街/小指の先の天使/猫の棲む処/意識は蒸発する/父の樹/解説:桜庭一樹 -
小指の先の天使 (ハヤカワ文庫JA)
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神林長平氏の作品には幾つか主軸となっているテーマがあって、本作は、その中の「仮想世界」を主軸においた連作短編集。
書かれた時期は、かなりばらけているにも関わらず、首尾一貫した強固な姿勢を背景に紡がれていく物語には、全くブレがない。
これが、神林作品のもつ最大の魅力だなと再認識。
解説で桜庭一樹氏が書いているように、<blockquote>彼の作品群はなかなか強敵で、あのころどうはまり、どう好きなのか、たいへん説明しにくい。</blockquote>
文章は決してこなれてるとは言えないし、読みやすいかと言えばそういうわけでもない。
ただ言えるのは、神林作品の「文体」には、読者の心をぐぐぐっと惹き付ける強力な引力がある。
そして、氏の紡ぐ「物語」には、読者をねじ伏せる強烈な説得力がある。
本作でも、その「強烈さ」は相変わらず凄まじい。
その世界に身を置いているという意識が、頭の片隅に常に残っている感じ。本を読んでいない時であっても。
個人的には、「なんと清浄な街」がかなり好き。
この、メタでメタな多重構造的世界を掘り進んでいく、どんどんと入り組んで煙に巻かれていくような感じが素晴らしい。
それでいて、そこには一貫した「軸」がしっかりと存在していて、気付くとその「軸」に寄り掛かっている自分を発見したりもする。
やっぱ、神林氏は天才やなあと思う。 -
SF。短編集。連作?
全体を通して、”VR”と”意識”がテーマか。
「抱いて熱く」が好き。一番分かりやすく、ロマンチックな恋愛SF。
「なんと清浄な街」もミステリチックで良い。
3作目からは少し分かりにくい感じ。 -
フムン熱が高まったので神林未読ストックに手を出す。短編集だけど<なんと清浄な街><小指の先の天使><猫の棲む処><意識は蒸発する><父の樹>はメタ世界と言語的仮想世界・意識についての連作。「メタ世界と神の領域」「言語的仮想世界と意識と物語」ってSFとファンタジーが入り乱れるタイプのちょうど読みたかったやつ!特に<猫の棲む処>は、猫に関する不思議と愛着を詰め込んだ一編で幸せ!「ヒトの幻想の外で生きるんだ、ソロン。」にぐっとくる。で、解説の桜庭一樹氏の暴走が可愛いw全力で支持。存分にフムンした。
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2014年4月18日(金)、読了。
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ソロンの話を多分5回位読み返してしまった!
設定を同じくする連作集なんですが、
一冊読むととても感慨深い、残る物があります。
SFというカテゴライズに収まりきれない、流石としか! -
読後感がさびしい…淡々と紡がれるのは、これは終わりの話。