史上最大の作戦 (ハヤカワ文庫 NF 187)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150501877

感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦のヨーロッパ西部戦線における転機となった、歴史上最大規模の上陸作戦…ということは知っていましたが、その詳細は知らなかったので、その内容に驚きました。

    例えば、ドイツ軍は暗号(ヴェルレーヌの詩)を傍受していながら、それを机においたまま警報を発しなかったり、これまで不休のロンメル元帥が、直前に休暇を取って遠く離れたベルリンに行っていたり。また、作戦決行日(Dデー)に誕生日を迎える、エーリッヒ・マルクス将軍を驚かすため、他の将校が持ち場を遠く離れてしまったこと。さらに、Dデー直前に航空機が2機のFW-190を残して、すべて遠方に配置換えされていたことなど、ドイツ軍にとっては完全に奇襲となっており、歴史は連合国側に味方していたのだなと思いました。

    そんな偶然が重なっていたものの、5箇所の上陸ポイントのうち、オマハ・ピーチで行われた最も壮絶な戦いに、これが戦争なんだなという思いと、歴史という名の運命のイタズラに翻弄された兵士達の冥福を祈るばかりです。

    もうすぐ、この戦いから80年を経ようとしていますが、相変わらず世界はまだ混沌としています。争いのない世界を願うばかりです。

  • [それぞれの"D"]第二次世界大戦の帰趨を決した1944年6月6日のノルマンディ上陸作戦。人類の歴史に刻み込まれることとなったその「Dデー」に、兵士は、将官は、ヒトラーとアイゼンハワーは何を考え、どのように行動したのか。数多くの証言を得ながらあの日を再構成したノンフィクションです。著者は、本作の映画版の脚本も務めたコーネリアス・ライアン。訳者は、英米文学の翻訳家である広瀬順弘。


    上陸作戦の規模、そして歴史のいたずらとしか思えない偶然の数々に、思わずため息をもらしながら読み進めること必死。作戦全体のマクロ的視点と、個々の人物に焦点を当てたミクロ的視点が縦横に絡み合い、立体的に「Dデー」が眼前に立ち昇ってくるかのようでした。噂には本作の素晴らしさを聞いていましたが、実際に読んでみて改めて不滅の名作と言われる所以がわかりました。


    かなり古い作品なのですが、まだ書かれた時点ではノルマンディ上陸作戦に何らかの形で関わった人が多い故に、ライアン氏の記述がやけに生暖かいというのも一つの特徴かもしれません。特に個々の兵士の戦場での生き様を書いた箇所では、筆に熱とロマン味が乗り移っているのが感じられました。戦記としてだけではなく、一つの物語としてもオススメしたい一冊です。

    〜ついに、H時、攻撃開始時刻が来た。だれも羨む者とてない、栄光もなく疲れ果てた兵士たちが、オマハ海岸に第一歩を刻もうとしていた。ひるがえる戦闘旗もなければ、高鳴るラッパもトランペットもなかった。ただ記念すべき歴史があるだけだった。〜

    圧巻すぎちゃいました☆5つ

  • 2014/5/15読了。
    上陸作戦に居合わせた人々が語るエピソードを膨大に積み上げて、当日の様子を活写するドキュメンタリー。いや面白かった。嘘や誇張もあるだろうけど、当事者の語る話だからそれは無理もないし、だからこそ面白い。
    日本軍の太平洋の話だと、昭和生まれの癖でどうしても「戦争の悲惨さ」「なぜ失敗したのか」「責任は誰にあるのか」「繰り返すまい」といった姿勢が書く方にも読む方にも出てきてしまうものだが、本書はあまりそういうことを感じることなく映画の原作みたいな気分で読めた。実は無茶苦茶偏っている本なのだろうが、ま、そこは日本人にとっては所詮よその国の話だ。
    一番親近感を感じたのは、ドイツ軍将兵の、正常性バイアスと責任回避てんこ盛りの対応だ(ロンメルを除く)。この日の連合軍将兵のような人たちは僕の周りにはあまり存在しないが、ドイツ軍みたいな態度で日々の就業時間を送っているビジネスパーソン()と自称するサラリーマン、官僚()と自称する役人、は大勢いる。正直に言うと僕もそうだ。想定外の困難に臨機応変に立ち向かう自分の姿は想像できないが、現場からの想定外の報告を認めずに上への報告を遅らせる自分の姿は容易に想像できる。実際にそういう同僚や上司がいるし、震災のときにもテレビでそういう人をたくさん見た。軍隊に転職したらきっと同じ姿勢で働こうとするに違いない。上司が激情型のカリスマだったり職場に愛着があったりしたらなおさらだ。ドイツ人と日本人はその変な真面目さ几帳面さにおいて似ているとよく言われるが、なるほどと頷かれるところもある。

  • ノルマンディー上陸作戦を連合軍、ドイツ軍の生存者両名からインタビューしてまとめられた本。

    映画などで何度も見たことがあるが、ここまで過酷で緻密な作戦であったのか、また、今のように無線技術などのリアルタイム通信が確立されていない時代における軍事作戦の難しさもよくわかる。

  • 第二次大戦最大の山場であった連合国によるノルマンディー上陸作戦。作戦の前夜からイギリスでドイツでフランスで軍人達はどのように過ごし何を考えてたのか。実際現地で何があったのか。数多くの兵隊や関係者達の証言をちりばめながら、状況を生き生きと臨場感たっぷりに描き出す。当時の戦いは、必死に準備を重ねても運頼みの部分も大きかったのだなと感じる。陸にさえ辿り着けずに、船から落ちて装備の重さで溺死してしまう兵達の姿がいたたまれない。オマハ海岸で激しい銃撃にさらされてもどこにも隠れる事ができずに死んでいくアメリカ兵たちはさらに悲惨だ。結果が勝利だとしても、何とも言えない空しさを感じて仕方なかった。

  • ドイツ軍・連合軍それぞれの将兵や現地住民の視点を積み重ねて、史上最大といわれた作戦を描き出しており、ページを捲るたび、進行してゆく壮大な歴史的事件と、そのなかでの人々の息遣いに圧倒される。
    双方が、あらかじめ想定して準備した通りにはいかない混乱のなか、奮闘したり、絶望したりする人間に焦点が当てられているところが、ドラマチックで人々を惹きつけるのだろう。

  • ノルマンディー上陸作戦に参加した様々な将兵を描く。関係者に聞き取りをしているとはいえ著者のまえがきには、人間の物語である、と書かれている。ロンメルの不在やドイツ軍の対応の遅れが読んでいてなぜか引き込まれた。

  • Dデイとは何ぞやを知る戦記。

  • 1944年6月6日、人類史上かつてない大規模な上陸部隊が、ノルマンディ海岸を埋め尽くした。連合軍の全兵力を結集したヨーロッパ反攻作戦が、ついに開始されたのである。
    要塞地帯を突破されて総崩れとなったドイツ側は、この日を境に、急速に敗北への道を歩んでいく。

    第二次世界大戦がいかに薄氷の勝利だったかがわかりますね。
    ターニングポイント毎にたった一人の判断が異なるだけで結果が変わったかもしれない。

  • 有名な戦争映画の原作である戦記。ノルマンディ上陸作戦・D-dayの詳細を指揮官・将校・兵士・民間人、両陣営のあらゆる人々のエピソードで綴られている。「これは戦史ではない、人間の物語である」、まさに前書きの通り。濃密で計算できない人間ドラマ。かなり昔に映画は観ているが改めて観賞し直したい。

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