道具づくし (ハヤカワ文庫 NF 247)

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150502478

感想・レビュー・書評

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  • 「とぜんそう」は幻覚作用のある多年草で、これによる幻覚下で書かれたのが「徒然草」、マスクの中に悪臭の素を入れ「臭刑」を課すという「はなじごく」、押し出されようとする大便を阻止すべく身につけた「ふんどし」、みごとなくしゃみが出るよう平安の貴公子が訓練するための道具であった「くさめまねき」など、今は忘れられた不可解な道具の数々をユーモアたっぷりに紹介する。
    自らも語っているように民俗学者が茫然とするような馬鹿馬鹿しい虚構の話ばかりだが、独特の捉え方が楽しい。

  • とぜんそう おすすめ
    「欺瞞」

  • 新書文庫

  • べつやく先生の「づくし」シリーズ。本書では様々な現在は無くなってしまった道具を細かく解説してくれている(ただしデタラメ)。

    「虫づくし」に比べると文章も軽く、サラサラと進んでいく。文章で単語の定義などをこねくり回すようなスタイルもなく、最後にミステリ的な落ちを持ってくるわけでもない。

    全体に、シモネタ、性的解釈および鼻糞と朝潮関に関するものが多いのはさておき、「以前は使われていた」の「以前」が、江戸時代くらいを指すのか、はたまた未来から見て現在を指しているのかゆらゆらと揺れて、わからなくなってしまう。

    また、和歌に詠まれていると、有りそうな体で和歌をでっち上げたり、民族学的な学術的な話をでっち上げたりするのは、単なるタレントのデタラメ話とは次元が異なる。

    こういうコラムが載っている雑誌は、つい読んでしまいそうだ。ところで「じたんだ」が2つ有るのは、愛嬌でしょうかね?それもネタだったりして。

  •  過去に日本に在り、いまは使われていない道具たちの民俗的なことがらについて記した本とのことである。

     おいとけさま。
     3人以上で話しやすいのに、2人では気詰まりだという時は無いだろうか。そんなとき、過去には「おいとけさま」という人のかたちをしたものを前に置き、それに向かって2人が話し掛けるという形とした、と聞くと、ひどく納得する。今の時代においとけさま欲しい!となる。

     徒然草。
     「つれづれぐさ」ではなく「とぜんそう」と読む。
     乾燥したものを燻らせると、幻覚作用のある。徒然草は、吉田兼好がとぜんそうを服用した状態で書かれた本であり、読み手もとぜんそうを服用した状態で読むことで真の内容を理解することが出来る。なお、現在では徒然草の栽培は国に禁止されている。

     このように、ひとつひとつの道具について生き生きと描かれていくのだが「あれ? もしかして……」となってくる。
     しかし、なんというか……一人でこれをすべて書き上げる教養ってすごい。

  • 「有りそうだけど、よく考えたら無いモノ」の
    真面目なおふざけ本。
    実は新宿紀伊国屋で10年以上棚に寝てた一冊ってのに
    一番驚き。

  • 道具について埋葬された事実を掘り起こそうとしている、そのあたりは先に読んだアースダイバーに似たところはあった。本書も「おいとけさま」という物の話からもっともらしく始まったが、道具が積み重なっていくにつれておかしな、不思議な世界観に引きずり込まれる(事実なのか虚構なのか、そもそもそんな物は存在するのか、トワイライトゾーンのようにあやふやな世界)。民俗学の大書たる「遠野物語」を最初に読んだときもそうだったと思う。
    本書を読んで私が一つ得た理解は、今更なのかもしれないが、民俗学というのは物語性がないといけないということ。

  • 真剣なおふざけの本。一瞬本当なのか嘘なのか分からなくなったり…。さも事実のように『~なのは周知であるが』とか『~は誰でも知っているであろうが』と書かれるくだりとか。「註」が好き。

  • 先割れスプーンに駆逐され、失われてしまった日本の「箸」文化。著者の研究によれば、なんと日本では箸を二本とも右手に握って利用していたのだという。

    さすがにこれには学会からの疑問の声も多く、読者としても即座に著者の言を信じることはできない。しかし「あるいはそうかも」と思わせる綿密な研究成果は一読に値する。

    ほかにも「とぜんそう」、「しだりお」、「じたんだ」等々。ときには既に姿すら失われてしまった日本の古代文化を蘇らせる力作。民俗学に興味のある人には必読の書。

  •  ジャンル分けができない本である。いや、別役実の「づくしもの」というジャンルである。
     古民具を紹介するエッセイという体裁を取っているのだけれど、取り上げられている道具たちは、現実に存在するものでは(たぶん)ない。「臭刑」を自らに科すための「はなじごく」とか、「しらみ」の意味を再認識するために開発された「しらみしのび」とか。何というか、読んでいると頭がくらくらしている。きわめて地に足がついた文明批評の書であることと同時に、レトリックのアクロバットを味わわせてくれる不思議な本である。
    2006/3/22

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著者プロフィール

1937年、旧満州生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。東京土建一般労組書記を経て、1967年、劇作家になる。岸田國士戯曲賞、紀伊國屋演劇賞、鶴屋南北戯曲賞、朝日賞など受賞多数。2020年3月3日逝去。

「2024年 『増補版 言葉への戦術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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