- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150707415
作品紹介・あらすじ
元騎手で調査員のシッド・ハレーは、上院議員のエンストーン卿から持ち馬の八百長疑惑に関する調査を依頼された。しかしその直後八百長への関与を疑われた騎手が死体となって発見され、殺人容疑で逮捕された調教師も証拠不十分で釈放されたあと、不可解な自殺を遂げてしまう。真相究明に奔走するハレーだが、謎の刺客が最愛の恋人マリーナを襲う。不屈の男シッド・ハレーを四たび主役に迎えて、競馬シリーズ待望の再開。
感想・レビュー・書評
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主人公の男性がストイックで、謙虚で、意志が強く、何ともカッコイイのです。
若い頃には競馬騎手として成功した経験のある~ベテラン作家フランシス。
確かな観察眼と気配りに満ちた独特なミステリ作品群を生み出しました。
フランシスはよき協力者であった妻が亡くなった後に絶筆していましたが。
息子の協力を得て再スタートした作品。
文庫化されました!
2010年、亡くなられました…残念です。
12歳の頃からずっとずっと大好きな作家。
どの作品も読み返してます。
これから読む人は幸せですよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イギリスの作家ディック・フランシスの長篇ミステリ作品『再起(原題:Under Orders)』を読みました。
『査問』に続き、ディック・フランシスの作品です。
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元騎手で調査員のシッド・ハレーは、上院議員のエンストーン卿から持ち馬の八百長疑惑に関する調査を依頼された。
しかしその直後八百長への関与を疑われた騎手が死体となって発見され、殺人容疑で逮捕された調教師も証拠不十分で釈放されたあと、不可解な自殺 を遂げてしまう。
真相究明に奔走するハレーだが、謎の刺客が最愛の恋人マリーナを襲う。
『大穴』『利腕』『敵手』に続き、不屈の男シッド・ハレーを四たび主役に迎えて、競馬シリーズ待望の再開!
巨匠が六年の沈黙を破って放つ待望の競馬シリーズ最新作。
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2006年(平成18年)に発表された競馬シリーズの第40作にあたる作品です。
障害レースの最高峰、チェルトナム・ゴールド・カップが行なわれる当日、元騎手の調査員シッド・ハレーは競馬場を訪れ、建設会社を経営する上院議員ジョニイ・エンストーン卿から仕事を依頼された… 持ち馬が八百長に利用されている疑いがあるので、調べてほしいというのだ、、、
彼は調教師のビル・バートンと騎手のヒュー・ウォーカーが怪しいという… ハレーは依頼を引き受けるが、その直後、競馬場の片隅でウォーカーの射殺死体が発見された。
この日、ウォーカーとバートンが罵り合っているのを多くの人が目撃していた… そしてウォーカーは前夜、ハレーの留守番電話にメッセージを残していた、、、
レースで八百長をするよう何者かに脅されていたらしく、「言うことをきかなければ殺す」と言われたという… やがてハレーは思わぬ経緯でウォーカーの父親から息子を殺した犯人を突き止めてほしいとの依頼を受ける。
さらに知人から、ギャンブル法改正によって発生する不正についての調査も任される… こうしてハレーは三つの依頼を抱えることになった。そんな折、警察はバートンをウォーカー殺害容疑と八百長の疑いで逮捕する、、、
彼は証拠不十分で釈放されるが、やがて事件が起きた… そのバートンが自宅で拳銃自殺をしたというのだ。
どうしても彼が自殺したとは思えないハレーは、調査を進めていく… だが、卑劣な敵は、ハレーの最大の弱点である恋人のマリーナに照準を定め、魔手を伸ばしてきた!
シッド・ハレーが登場する物語は初めて読みましたが、シリーズ中4度目の登場のようですね… ビル・バートンの死は自殺ではなく、自殺に見せかけた殺害と信じるハレーは、ヒュー・ウォーカーの銃殺と同一犯の犯行と考えて捜査を進めますが、ハレーの捜査を妨害するために恋人のマリーナが襲われ、瀕死の重傷を負うことで窮地に追い込まれます、、、
しかし、偶然、ある人物のタンスの中を見たことをきっかけに犯人一味の一人を特定して反転攻勢… その後、一気に犯人たちを追い詰めていく終盤の展開が愉しめました。
面白かったですね… 競馬シリーズを読んだのは新旧ごちゃ混ぜで7冊目かな、機会があれば、競馬シリーズの他の作品も読んでみたいです。 -
ずっと寝かしていた大好きなシッド・ハレーもの。
菊池光訳で読めなかったのは残念ですが、これまでのディック・フランシス作品との違和感もそれほど大きくなく、読みやすいです。
シッドはいつもの彼ですが、マリーナもさすがはシッドの恋人。
ラストにホッとしつつ、もう新しいシッド・ハレーの物語が読めないことに寂しさを覚えます。 -
ディック・フランシス単独名義での最終作。
シッド・ハレーを最後に持ってきたんだ。
これで競馬シリーズは卒業。楽しかったな。 -
ディック・フランシス競馬シリーズ第40作目(全44作)。
最愛の奥様を亡くしてから6年間の沈黙の後、86歳のフランシスが自身の「再起」の舞台で主人公に選んだのは、4度目でこれが最後のシッド・ハレー。
障害競馬の元全英チャンピオン騎手という自分と同じ肩書きを持つハレーには、並々ならぬ思い入れがあったのだろう。3作品以上に主人公として登場するのはハレーのみである。
本作のあらすじは以下の通り。
敏腕調査員のハレーは競馬の八百長疑惑を調べていたが、八百長への関与を疑われた騎手が死体となって発見され、その殺人容疑で逮捕された調教師も釈放の後不可解な死を遂げてしまう。真相究明に奔走するハレーだが、謎の刺客が恋人マリーナを襲う!
読み進める中で感じたのは、ハレーがまるくなったなぁということ。いや、筆者フランシス自身が歳とともにまるくなったのだろうか。
ハレーが主人公なのに、と言っては失礼だが、非常に温かみのある作品に仕上がっている。前3作の雰囲気が「陰」だとしたら本作は間違いなく「陽」といえるだろう。
訳者の菊池光さんが亡くなって北野寿美枝さんに変わった影響かと考えてみたが、簡潔でクールな文体は本作においても変わりない。
ハレーといえば孤高のイメージがあったのだが、今作では彼と身近な人たちとの絆の深さに焦点が当たっていることから、受ける印象が全然違うのである。寡黙だったハレーの口数も心なしか増えたような気がする。
このハレーの変化を残念がるファンも多いようだが、私は嬉しく感じた。
仲間との絆が描写されている中で、私が一番好きなのは以下のシーン。
前3作でもおなじみの通り悪党たちはあの手この手でハレーを痛めつけてきたが、どんな残忍な方法を用いても調査を阻止することはできず、むしろハレーの決意を固める結果となったため、今ではわざわざハレー自身を痛めつけようという輩はいなくなった。つまり、ハレーはどんな暴力を受けても屈しない姿勢を貫くことで、暴力から身を守っているのである。
しかし本作では卑劣にも恋人マリーナが傷つけられ、元義父チャールズも標的にされる可能性がある。自分の調査のせいで大切な人たちを危険な目に遭わせるわけにはいかないと、一旦は手を引こうと考えるハレー。しかし、刃物で顔を切りつけられた傷跡痛々しいマリーナとチャールズはこう言うのである。
「ねえ、私も同じ方法で身を守りたがると、どうして考えてくれないの?私にも、あなたと同じ評判をちょうだい」「わたしにもだ」
こうして、二人に温かく背中を押されたハレーは調査続行を決心する。この時「悪党どもよ、くそくらえ!」と赤ワインで乾杯する三人がたまらなくかっこいいのだ。
シッド・ハレー4部作は回を重ねるごとに調査員としてのハレーに貫禄が出てきており、たどたどしさのあった1作目「大穴」などに比べるとハラハラ感は少し薄いかもしれない。人間としても貫禄が出ており、左手もろとも騎手生命を失ったショックで生ける屍となっていた頃の面影はもはやどこにもなく、ハレーの心の成長を見てとることができる。
そんなハレーとは対照的に、本作の黒幕は内面的に超小物でひどく滑稽であった。
本作はシッド・ハレー最後の登場ということで、すべてが大団円に終わって本当に良かった。なんといってもハレー再婚おめでとう!
マリーナの存在によって、元妻ジェニイがハレーに対してずっと抱いていた見捨てたことへの後ろめたさがやっと消え、ハレーとジェニイとのわだかまりは完全に解けた。これまで会う度に傷つけ合ってきた二人が、長い時を経てやっとお互いの幸せを心から願えるようになったのだ。婚約者マリーナと元妻ジェニイの仲睦まじさが印象的である。
読み終えてみて、本作は円熟したシングルモルトのようだと思った。無性に、あの琥珀色の芳醇な液体を飲みたくなってしまった。
フランシスの競馬シリーズを読む際は、初期の作品であれば若いシングルモルトを、後期の作品であれば年代もののシングルモルトをお供にしてみると、さらに味わい深くなるのかもしれない。 -
おもしろくない。妻がいないと、こうも質が落ちてしまうのか。シッドのなさけないこと!
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いつもながら期待を裏切らない面白さ
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シッド・ハレー4度目の登場。読まないでいられません。
今回注目したのはチャールズ・ロランド卿。
この人は主人公シッドが最初に結婚した妻のお父さんで、退役した海軍将校で、ずっと主人公を友情で支えてくれている人です。
のはずなんですが。
なんですかね……あの人はあんなに……
……
ホモっぽかったでしたかねえ…。
シッドの恋人のマリーナと小さなフラットでシッドの留守を預かる場面は、まるで主人公がマリーナ(本命)と提督(二号)を二股かけた悪い男なのに、両者がそれを許している?……みたいに映ります…。何かの読みすぎ?
「大穴」でクサっているシッドを侮辱することで、逆に奮い立たせてくれてた鋼鉄の人も、年のせいで柔らかくなったってことでしょうか。
意図してないと思うのだけど、やっぱりフランシスの視点の移り変わりのせいでしょうか?
訳者さんは、わかってやってんのかなー。
「再起」というタイトルじゃなくてもよかったかな?
という感想で、星ひとつ減らしました。