- Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150761523
感想・レビュー・書評
-
MWA賞受賞作であり、一般的にレナードの代表作とされている。さて、この本に至るまで私の中でのレナードの評価はうなぎ上り。しかもそれらは何の賞も受賞していない作品であった。従って本書への期待は否が応にも高まった。
元シークレットサービスの捜査官で今は写真家のジョー・ラブラバ。陽光煌くマイアミに暮らしていた彼はそこで1人の女性と知り合う。それは彼が少年の頃、憧れていた銀幕のスター、ジーン・ショーだった。ジーンは年を取っていたが、ちっとも魅力は衰えていなかった。その頃の憧憬が甦り、ラブラバはジーンに近づき、懇意になる。しかし彼女の周りにはならず者や脱獄犯などきな臭い連中がなぜか集まる。彼らは彼女の財産を狙っていたのだ。憧れの君を救わんべく、ラブラバが悪党ども相手に立ち回る。
結論から云えば、下馬評の割にはちょっと期待はずれ。
主人公の名ジョー・ラブラバは一連のレナード作品に登場するタフガイで、しかも元シークレット・サービスという職業柄、知性も感じさせる。
このラブラバがかつての銀幕スターでラブラバの憧れの人に逢い、騎士役を買って出るというのは実にレナードらしい心憎い演出だ。
が、しかしなんとものめり込めない。
理由は3つあって、1つは全編に散りばめられた40~50年代映画の薀蓄。ヒロインが元映画スターだからこれは仕方ないだろうし、逆にレナードがかなりの映画ファンだというのは周知の事実であるから、逆に云えばレナードは自分の薀蓄を曝け出したいがためにこの設定を持ち込んだのではないかと思われるくらいだ。しかしこの40~50年代の映画というのが当時20代の私にはさっぱり解らない。自分もかなり映画好きだが、この辺のクラシック・ムーヴィーは守備範囲外。従って何がそんなに楽しいのか、全く解らなかった。1つでも知っている映画があるとまた違うのだろうけど。
もう1つはジーンという年増女性がヒロインだということだ。当時の私は大学出立ての社会人。当然合コンなどもあり、実際毎月参加していた。そんな年頃だから、もっぱらの興味は同年代の女性だったし、逆にジーンと同年代の女性は職場にしかいなく、申し訳ないが全く恋が芽生えるなどという気になったことはなかった。ちなみに『五万二千ドル~』同様、作中に出てくるジーンの写真と思しき物が文庫表紙にあしらわれており、ジーンという女性がどんな女性か、イメージしやすくなっている。ハヤカワ・ミステリ文庫の表紙は素晴らしいね。
しかし今ならばこのラブラバの気持ちも理解できるだろう。アンチエイジングという言葉がさかんにメディア上で発信される中、ジーンの年代(たしか40代だったと思うが)の女性は綺麗だし、熟女などという言葉も流布しているくらいだからだ。別に私にそういう興味・趣味があるわけでないが、齢も近くなり、この年代の女性の美しさ、魅力というのが解る年頃になったということだ。そういう意味ではちょっと早すぎた作品だったのかもしれない。
しかし最大の理由はこのタフガイと思われたラブラバの見せ場が意外に少なかったこと。タフガイなんだけど、なんだか活躍の場がないままで、逆にジーンが物語をかっさらってしまったような感じだった。その名が題名にもなっているのにもなんとも影の薄い主人公なのだ。
ということで、題名と中身が一致しないなぁというのと、これで受賞?という懐疑が先に立ってしまい、私の中では佳作という位置づけになっている。
思えばこれがレナードテイストなんだろう。逆に云えばアメリカ探偵クラブの方々はこの妙なツイスト感が当時新鮮に移ったのかもしれない。定石どおりに物語が進まない展開が。あと、考えられるのはもしかしたら審査員の方々がレナードと同年代、もしくは近い年代で作中で語られる映画の薀蓄がツボにはまったのかもしれない。
現在、クライム・ノヴェルの巨匠という名声を得ているレナード。それに対して否定はしないが本作を代表作とするには異議がある。各種ガイドブックはもっと他の作品も取り上げてほしいものだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
デュラララが好きだと、昔、大学の文芸サークルの人に言ったら勧められた本。
一編の映画を観ているような、それでいて、洒落たかっこよさが漂う作品だった。
登場人物、みんなめちゃくちゃなのだが、なぜか悪役も憎めないところがある。
群像劇でもあり、憎めないキャラクターたちという意味でも、確かにデュラララに通づるものもあった。
ラストは、果たして誰の勝ちだったのか、何ともわからない結末だった。 -
どうして題名がラブラバなのか苦しんでおりました。
「ラ・ブラバ」なのか
きれめはあるのか否か分からないです。
そもそもどうしてこういう題名になっているのか分からなktたです -
小気味好いテンポで進行する軽いタッチのノワール。悪女も悪党も、ちょっと間抜けなところがミソで、結局は破綻する犯罪の顛末にも捻りを加えてある。玄人受けが良いのも納得の作家だ。