キドリントンから消えた娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 テ 4-2)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150775520

感想・レビュー・書評

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  • 失踪した娘を、事故死した前任者に代わって捜査を開始する、主人公のモース主任警部。
    彼はすごく人間臭い男性です。そうだよね、ピカっと閃いてたちどころに事件を解決する、ホームズやルパンや、ポワロのような人間なんて、実在しなかったんだ…と、何故か納得してしまった一冊。
    彼の七転八倒とともに、事件の全貌が見えて来て…。
    思考が途切れる理由が男性故のもの?の箇所があり、なんだか微笑ましいかったですよ。

  • 後半の仮説ラッシュは本当にすごい。いっそ病的。ようやるわこの人。

  • 『起こった可能性のある事実は多い。起こっただろうと思われる事実もかなりある。しかし、確かな事実はほとんどない。』

    ありえそうなこととありえること、考えそうなことと考えられること、の話。何を求めて読むにしろ、隙間時間で読めるような本ではないことはたしか。反転を繰り返しているようで、実はしっかりと指向性をもたせている。一種のサブリミナル効果といっても過言ではない、此の人の作風なのだろう。

  • オックスフォード運河を読んだときも思ったんだけど、コリンデクスターは結末にがっかり気味。
    ラストまではワクワクして、すごく盛り上がって読むのになあ。

    これにいたっては正直、真相がどれなのかよくわかんない…。
    スッキリしたいので評価低め。

  • 面白くない結末かと思いきやそっちか・・・コロコロ推理が変わります。

  • テレビドラマにもなったモース警部シリーズ2作目。同僚の死によって引き継いだ行方不明の若い女性探しが思わぬ複雑な事件になっていて…というストーリー。ただ、モース警部がわりと気分屋っぽいところがあるのと、彼の捜査はミスを積み重ねて可能性を消去していって、最終的に残ったものが正解というパターンで進行する。これが通常みられる小さい正解を積み重ねていって結論に到達するというパターンとは全く異なっている。そのため、モースの行動を味わい深いとみるか、「いやモース、そうじゃないよ。もうちょい考えなよ」と思うか、要は読者の嗜好で評価が大きく分かれるシリーズだ。なお、本作は導入から容疑者が絞られていくところまでは面白いのだが、そのあとモースが延々とハズレを引き続ける様子がちょっと厳しい。

  • イギリスの作家「コリン・デクスター」の長篇ミステリ作品『キドリントンから消えた娘(原題:Last Seen Wearing)』を読みました。

    『ウッドストック行最終バス』に続き「コリン・デクスター」作品です。

    -----story-------------
    2年前に失踪して以来、行方の知れなかった女子高生「バレリー」から、両親に手紙が届いた。
    元気だから心配しないで、とだけ書かれた素っ気ないものだった。
    生きているのなら、なぜ今まで連絡してこなかったのか。
    失踪の原因はなんだったのか。
    そして、今はどこでどうしているのか。
    だが、捜査を引き継いだ「モース主任警部」は、ある直感を抱いていた。
    「バレリーは死んでいる」…幾重にも張りめぐらされた論理の罠をかいくぐり、試行錯誤のすえに「モース」が到達した結論とは?
    アクロバティックな推理が未曾有の興奮を巻き起こす現代本格の最高峰。
    -----------------------

    1976年(昭和51年)に発表された「モース主任警部」シリーズの第2作目の作品です… 「モース主任警部」シリーズを読むのは本作品で4作品目ですね。

    オックスフォード郊外の小さな町キドリントン… ロジャー・ベイコン中等総合学校の美しい女生徒「バレリー・テイラー」は、昼食を自宅でとったあと、700ヤードしか離れていない学校へ戻る途中で失踪した、、、

    事件は翌日になった父「ジョージ」と母「グレース」から警察に届けられ「エインリー主任警部」が捜査にあたったが、手掛かりがなかなか掴めずに2年が過ぎた… 「エインリー」は捜査の過程で「バレリー」は何者かに殺害されてたと考えていたらしいが、「エインリー」は、本事件についてロンドンに捜査に出かけた帰りに交通事故に遭い死去してしまった。

    「エインリー」が死んだ翌日、「バレリー」の両親のもとに「バレリー」からの手紙が届き、「生きているから心配しないで」という簡単な内容が綴られていた… 「エインリー」の捜査を引き継いだ「モース」だった、、、

    手紙の消印はロンドン市内で、筆跡鑑定は90%の確率で「バレリー」本人の筆跡であるという結果だった… 「モース」は「ルイス巡査部長」とともに、「バレリー」の両親「ジョージ」と「グレース」、ロジャー・ベイコン校の校長「ドナルド・フィリップソン」、教頭の「レジナルド・ベインズ」、当時フランス語の助教諭だった「デビッド・エイカム」ら関係者の周辺をあたり始めた、、、

    「モース」は「バレリー」は既に殺されており、手紙は彼女の筆跡を真似て別な人物が書いた偽物だと直感し、事件の全貌について大胆な仮説を立て、「エインリー」がロンドンで何を調べていたのかという点と、「バレリー」殺害の動機を探る方針で捜査を続ける… しかし、なかなか殺人の痕跡は浮かばず「モース」は苛立ち始めるが、そんなとき「バレリー」がロンドンで闇で堕胎手術を受けていたことが判明し、これが事件解決の突破口になると「モース」は考える。

    そこへ、「ベインズ」が自宅で何者かに背中に肉切りナイフを突き立てられて殺されるという事件が起こる… 誰が「ベインズ」を殺したのか? 「モース」の頭のなかで歯車がスピード回転し始めた、、、

    犯人は、「バレリー」の母「グレース」で、事件当日、学校へ戻る途中を目撃された「バレリー」は、実は風貌が瓜二つの「グレース」の変装… 彼女は「バレリー」が、実の父ではない夫「ジョージ」と男女の関係に陥り、妊娠したことを知って殺害し、その証拠を掴んで脅迫していたのが「ベインズ」で、彼もまた殺したのだ――というのが「モース」の推理だった。

    パズルのピースがきちんと揃う、この推理は間違いのないように思われたが、「バレリー」が失踪事件をおこした当日にロンドンの病院で妊娠中絶手術を受けている事実が判明し、捜査は振り出しに戻る… 「モース」は愕然とするが、今度は「バレリー」は生きており、彼女が「ベインズ」を殺したという仮説を立て、再び捜査を進める、、、

    大胆というか、誇大妄想に近いとも思える、意外性のある「モース」の仮説が、二転三転四転… するので、読み手側も、真実と「モース」の推理が、ごっちゃになってしまい、やや混乱しながら読み進む感じですが、仮説が誤っていても、誤っていても、怯むことなく、諦めもせず、一歩一歩真実に近づいて行こうとする「モース」の行動に共感して、いつの間にか感情移入しながら読んでいましたね。

    実際の犯罪捜査って、鮮やかな推理のもと一発で犯人を言い当てる… なんてことはないだろうから、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、真実を求めていくという捜査方法は、リアリティのある展開なのかもしれませんね、、、

    そして、待っていたのは意外な結末… まさかね、そんなところで生活していたなんて。

    学力に問題のあった「バレリー」ですが、フランス語を話すことはそれほど不得手ではなかったことや、応用科学と科学技術だけが得意だったこと(=車にも興味があるはず)、そして顔の吹き出物… が、登場人物の中に隠れていた彼女を見つけ出すヒントになっていましたね、、、

    「モース主任警部」シリーズらしさ満載の作品でした… 面白かったな。



    以下、主な登場人物です。

    「バレリー・テイラー」
     ロジャー・ベイコン校の女子学生

    「ジョージ」
     バレリーの父

    「グレース」
     バレリーの母

    「ドナルド・フィリップソン」
     校長

    「シーラ」
     ドナルドの妻

    「ミセス・ウェッブ」
     ドナルドの秘書

    「レジナルド・ベインズ」
     教頭

    「デイビッド・エイカム」
     フランス語の助教諭

    「リチャード・エインリー」
     主任警部

    「アイリーン」
     リチャードの妻

    「ジョニー・マガイア」
     <ペントハウス>の客引き

    「ジョゼフ・ゴッドベリー」
     横断歩道の元誘導員

    「アイリーン」
     高級娼婦

    「ストレンジ」
     警視正

    「ルイス」
     部長刑事

    「モース」
     主任警部

  • 「未解決失踪ものの古典」「反転反転また反転の名作」というので、てっきり重厚にして悲劇的な作風を想像していたのだがとんでもない。根拠もなく妄想をたくましくする昭和(英国だけど)のエロ親父が右往左往するのに延々付き合わされる、どうしようもない代物だった。
    だいたい、思いつき→突っ走る→(仮説が正しくないという)確固たる証拠が出る→がっかり… のくり返しを「反転反転また反転」とは言わない。まず最初に「事実らしく見えるもの」があり、それをもとにした推理→検証→確固たる反証発見、こうでなければ論理もクソもない単なる暴走であって、そんなもんなら誰でもできる。こちとら無能に付き合ってる暇なんざないんである。まったく、なーにが「論理的解決脳」だか。
    多忙を極める現代人の時間を消費させるなら、有能でなければせめて魅力的なキャラクターであるべきだが、前述のとおりこれが能力以上にひどい。主人公のみならず時代を考えてもクズ男のオンパレードで、片や女性は結婚退職した主婦や秘書やタイピスト。ろくでもない時代「だった」とつけられるのだから英国はまだマシで、そうですらない我が母国はまったくもって終わっている。
    ネタ的には当時としては水準以上の出来だったのかもしれないが、今の時代にわざわざ読むだけの価値はない。小説としては言わずもがなで、こんな古典的名作()で貴重な時間を浪費している暇があったら、現代の「先進国の」新作を読んだほうが、よほどストレスレスに有意義かつ楽しい時間を過ごせるだろう。

    2022/8/22〜8/29読了

  • 早川書房の<このミステリがヤバい!>フェアから一冊。妄想で組み立てた仮説に従い猛進し、玉砕しては再トライを繰り返すモース警部と内心辟易しつつも追従するルイス刑事という迷コンビが探偵役。事実確認をせずに突っ走るので、リセットする度に方向転換する推理の応酬が見所と思われる。二転三転どころの話では済まないプロットだが、捜査情報の真偽が曖昧なまま蓄積しては錯綜するので、煩雑さもひとしお。ラスト一頁まで物語をリードする牽引力はあるが、読み甲斐を問われると言葉に詰まる。一連のプロセスを愉しめるか否かが分かれ目の様な。

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