侍女の物語 (ハヤカワepi文庫 ア 1-1)

  • 早川書房
3.97
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感想 : 190
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  • Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200113

感想・レビュー・書評

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  • 4/1760  (続編→「誓願」)
    『〔カナダ総督文学賞受賞〕男性絶対優位の独裁体制が敷かれた近未来国家。出生率の激減により、支配階級の子供を産むための「侍女」たちは、自由と人間性を奪われた道具でしかない。侍女のオブフレッドは生き別れになった娘に会うため恋人と共に脱出しようとするが……。辛辣なシニシズムで描かれた戦慄の世界。』(「Hayakawa Online」サイトより▽)
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000010985/

    冒頭
    『わたしたちは、かつて体育館だった場所で眠った。ワニス塗りの木の床には、昔そこで行なわれた試合用の直線と円が描かれたままになっていた。バスケットボールの鉄輪はまだ残っていたが、ネットはなくなっていた。観客席がフロアをぐるりと取り囲んでいて、そこにいると、試合を見守る女の子たちのチューインガムと香水の甘い芳りの混じった強烈な汗の匂いが、残像のようにかすかに嗅げる気がした。』


    原書名:『The Handmaid's Tale』
    著作:マーガレット・アトウッド (Margaret Atwood)
    訳者: 斎藤 英治
    出版社 ‏: ‎早川書房
    文庫 ‏: ‎573ページ


    メモ:
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」
    ・一生のうちに読むべき100冊(Amazon.com)「100 Books to Read in a Lifetime」

  • ゾッとするような閉塞感。洋の東西を問わず状態は決して遠くない

  • ’85年発表、好評であった。2017年にテレビドラマ化され34年ぶりに続編も書かれた/近未来のディストピア小説であると同時に、20世紀前半までの西欧社会やイスラミックステートが“それほど現在のコンセンサスとかけ離れているか?”=フェミニズム運動は成功に近づいているか?が問われる。
    ここで描写されるのは生殖医学を放棄し、神政で“女を産む機械”とみなす体制。修道女組織が支える
    語りては「赤」で象徴される「侍女」
    語り手はどうなったのか、作者は34年前には考えてなかったと思う。続編が出た以上、救いはあるのだろうが、まずは絶望を噛みしめたい。

  • 夏だ!休みだ!SFだ!ということで久しぶりに読書(Speculative Fiction!)
    図書館で予約していたが、『誓願』が出たこともあって、半年以上待っていた。『誓願』もいつ回ってくるか分からないが楽しみに待とうと思う。

    そして久しぶりに読む手が止められないほど面白かったのだが、近未来と言ってられない現状にここ数日は愕然としている。これは近未来の話ではないのだ、現実なんだと思うと、怖くて息がし辛い。いつこうなるか分からない。いつ自分がそういう状況に置かれるか分からない。そしてその状況にもし自分が置かれたら、きっと私は「オブフレッド」と同じ行動を取っているだろう。いや、彼女ほど正気を保っていられるだろうか?彼女ほど‘賢く’生きられるだろうか?安易に体制に縋り、新しい生活に順応しようとするのではないかとも思う。ただ、ただ、不安に駆り立てられる一作だった。この本が警告ではなく、現実になっていることを知ってなお、何も変わらない世界。香港、ミャンマー、そしてアフガニスタンと続いて感じるこの無力感.....

  • 創作のはずなのに「夜と霧」より辛かった。

  • Huluでのドラマが話題になっていたため、
    原作から読んでみました。

    繁殖という生物的役割が目的化した近未来の社会。
    SF小説として楽しみながらも、
    極限的状況における非人道的な行いが
    まかりとおってた時代は歴史上実在している。
    これが未来を予言していそうでゾっとしながら読んだ。
    続編も気になる終わり方だった。

  • 極限の少子化社会が到来。人類の喫緊の課題が、いかにして種を保存するか、つまり子を産み育てるか。そんなトピックをめぐる物語。
    アメリカの一地方っぽいこの社会を管理する政府がとった政策が、大規模かつ超組織的な代理母出産システム。で、このシステムがつくる世界観が、非常にディストピアな社会だとかなんとか...

    しかし、ジェンダー論、社会批評、比較文化論などの視点ではある程度意義のある作品なのだろうとは思うけれど、物語自体の面白さというと...

    まず、主人公がディストピアな状況に対して、徹底的に受け身。基本的に自分からは何もしない。
    何もしないんだけど、この国は最低だ、とか、こんなクズみたいな奴とセックスすんのかよ、とか愚痴ばっかりで、

    それでいて信頼できるのかもわからない、素性の明らかではない男に欲情して、この人となら愛のある最高のセックスができそうだ、と妄想と欲望を抑えられない。で、実際、行動に移す。

    彼女は、もともと他の女性から旦那を寝取って結婚していて、友人にはフェアじゃないと非難されても、自分に都合よく誤魔化すタイプ。そして、娘は溺愛するのに、母親の現在には全く関心がない。

    で、この物語はそんな女の口述記録がベースになってできている。つまり、ディストピアな世界観はさておき、そんな女のグダグダな心情を果たして読む価値があるのかと、けっこうげんなりする。逆に、男性側の発言に興味を惹かれるところはあったかもしれない。

    非常に抑圧された環境での緊張感はある。そして、そんな状況で抵抗勢力も存在する。志を持ち、行動力のある女性がいて、地下組織を作って抵抗運動をしている。
    でも、主人公は積極的に関与はしない。怖いから。徹頭徹尾、自分中心。で、結局彼女は、いろいろあって自分が見聞きしたことをテープに吹き込んで保存しただけ、という。全体を通して非常に後向き。

    男であれば、"名こそ惜しめ”ともいうように、使命に殉ずるということは一種の美学としてあり得ることだとしても、女の場合はそうは行かない。その、女の無力感というものを作者は表現したかったのかもしれない。が、よくわからない。

  • なんとも暗い、閉塞感のある物語だった。「物語」として楽しめるなら、それでいいのだが、文庫の解説に落合恵子さんが書かれているように、「近未来」とされているが「近過去」のようでもある。「現実」はその間に挟まれているのだから、地続きの世界だ。この小説が書かれた1986年よりも、2021年の方がもっと差し迫っている感じがするのは、そうか、「近未来」に近づいているからなのか。

  • キリスト教原理主義の社会の中で、女性は産むための道具として扱われている。財産、名前、娯楽のあらゆる自由が奪われてしまったディストピアの物語。しかし読んでいくと現実の世界とリンクする部分も多い。例えば家を継ぐのは姉ではなく弟だったり、男女別姓が認められていなかったり。主人公が検診を受ける場面で、医師と患者の間に布が垂らされて…とあるが、現在の日本ではそれが当前だ。海外ではどうやらオープンに婦人科検診があるらしい。1985年に書かれた作品だが、まだまだ考えさせられる場面は多い。
    物語はここで終わるの?と思うのだが
    種明かしが最後にあって謎が解けたかと思ったけれど
    続編の「誓願」が出版されているとの事で気になる

  • 読み始めてすぐに、物語の舞台が現代と地続きにあることに気づいてぞっとした。平和な毎日がこんな風にあっという間に変貌してしまうなんてことがあるだろうか、そんなことあるはずない、いや………。しみじみ恐ろしい物語でした。

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著者プロフィール

マーガレット・アトウッド(Margaret Atwood):1939年カナダ生まれ、トロント大学卒業。66年にデビュー作『サークル・ゲーム』(詩集)でカナダ総督文学賞受賞ののち、69年に『食べられる女』(小説)を発表。87年に『侍女の物語』でアーサー・C・クラーク賞及び再度カナダ総督文学賞、96年に『またの名をグレイス』でギラー賞、2000年に『昏き目の暗殺者』でブッカー賞及びハメット賞、19年に『誓願』で再度ブッカー賞を受賞。ほか著作・受賞歴多数。

「2022年 『青ひげの卵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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