君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫 ホ 1-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200434

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻。
    アフガニスタンが舞台で、イスラーム文化の暮らし、
    クーデタ、ソ連の侵攻、タリバンの暴力、9・11、アメリカの空爆といった背景に、主人公とハッサンの物語が進行していく。

    読者としては主人公の煮え切らなさにだいぶいらいらするけど、じっさい当事者の心境はこんなものなのかもしれない。
    自分の今の生活の中では、死の危険に直面する場面が無いだけに、ぴんとこないところがあるのは確か。
    暴力の前で、人間らしさを保つことの難しさを思う。
    暴力を振るう側が正しくない、卑怯なのだ。なのにそれに屈したときに恥ずかしく惨めに感じてしまうのは理不尽だ。途方も無く理不尽だ。

    高潔なまま死んでゆくか、恥をさらして生き延びるか。
    ケースバイケースだと思うけども、後者を選んで前に進む勇気と希望を持ちたい。どんな罪でも恥でも傷でも抱えて生きてくやり方はあるはずなんだ、立って歩いている限り。

    多くの失望と絶望と虚無感の中に、ひとかけらのそういう希望。
    物語とは、文学とは、そういうものであってほしい。
    そういう、ひとつの物語です。

  • 「君のためなら千回でも!」
    召使いの息子ハッサンはわたしにこう叫び、落ちてゆく凧を追った。同じ乳母の乳を飲み、一緒に育ったハッサン。知恵と勇気にあふれ、頼りになる最良の友。しかし十二歳の冬の凧合戦の日、臆病者のわたしはハッサンを裏切り、友の人生を破壊した。取り返しのつかない仕打ちだった。だが二十六年を経て、一本の電話がわたしを償いの旅へと導く・・・。(文庫背表紙より)

    アフガニスタンの過酷な部分しかクローズアップされない現在だけれども、そんなアフガニスタンにも美しい時代があったのだとこの本で学ぶ事ができた気がする。
    とにかく主人公たちの子供時代のアフガニスタンの描写が素晴らしく美しくて・・・作者はホントに故郷を愛しているのだなぁと感じ入りました。

    主人公アミールがしてしまった事は、彼にとって恥ずべきこととして一生の心の重荷になっていたけれど、この年の子供には、こういった「友人を見捨てる」という行為自体は(悲しいけれど)珍しくないんじゃないかと思う。
    大事なのはその後のこと。
    何年経とうが、はるか遠くの地に住んでいようが、かつて自分の友たらんとその体や命を張ってくれた友人に対して、同じだけのものを返せるか・・・。
    アミールに課せられた試練は重いものだったけれど、その分それを乗り越えようと奮闘した彼の姿は尊いものだと思う。
    下巻で故郷に帰るアミール。
    彼の償いの旅の結果がどうなるのか・・・、誰の身の上にも幸福が訪れる事を祈りつつつ、後半の彼の物語を読んでみたいと思います。

  •  少々口幅ったい言い方になるが、広貴は、父親である私のことを、よく本を読むなんでも知っているお父さんと思っている。私の本棚をのぞき込みながら、次に読む本をよく選んでいる。私もそのことは知っているので、広貴には早いなと思うものは、あえて、本棚には並べない。

     広貴が学校の朝の読書の時間に読む本を探している。私は、ちょっと迷ったが、中学一年生ならまぁよかろうと、この本を薦める。

     私のこのブログでも、<a href="http://yamano4455.jugem.jp/?day=20080120" target="_blank">以前、取り上げている</a>。なかなかうまいこと書いてある。

     先日、私は自室でPCとにらめっこしながら仕事をしていた。広貴は、隣の自分の部屋で静かに本を読んでいる。私の部屋に入ってくる。目が真っ赤。

     広貴は私の顔を見て安心したように、声を上げて泣き出す。まさに、号泣というような泣き方だ。全く事情の分からない私は、内心あわてながらも、落ち着き払った様子で、広貴に、どうしたと聞く。広貴は、私によしかかるようにしながら話し出した。

     「『君のためなら千回でも』を読んでいたら、人は何のために生まれてきたのか、何のために生きているのか、命ってなんなのか、自然そんなことにまで思うようになっていき・・・・この国の子たちは・・・、そんな事を考えると涙が止まらなくなった・・・」

     言葉に詰まりながら、少しずつ、そんなことを言う。

     私は、余計なことは言わない。そうか、そうかと言って、ようやくおさまってきた広貴の背中や肩をさする。

     本の威力はすごい。また、親バカではあるが、そんな豊かな感受性を持つ広貴に、まっすぐ育っていって欲しい。

     妻にこの話をすると、妻も、広貴が読み終えたらすぐに読みたいと声を上げる。一冊の本で、家族で共通の話題ができる。共通の思いを持つことができる。真由子もいつか読んでくれることだろう。

  • 人は多くの間違いを犯す。
    そしてそれを背負って生きていく。

    でも、いいじゃないか、
    罪を犯すほど、罪を償うという人生の目標ができる。

    そんなことを思った本。

    愛を勝ち取るためなら人はときにずるいことをしてしまう。

  •  以前に映画を見ようと思ってスルーしちゃったのですが超後悔……切なくてじんわりとした。
     翻訳がちょっと読みにくかったのですが、ぐいぐいと引きつけられ上下巻、一気に読んでしまいました。
     舞台はアフガニスタンで、物語にも政治、人種差別、文化などが深く絡んできます。その中で生きる主人公アミールとハッサン。この作品は贖罪というのがまさに核にあって、基本的に物語のトーンは暗いのですが、最後もどこか希望が感じられるエンドでよかった。
     あと、物語の伏線も張り巡らされていて、意外な人物が登場したり、事実が発覚したのが面白かったなぁ。けっこうえげつないシーンもあったりするので、悲しいお話が苦手だと辛いかも知れません。生々しいし痛い。でも、読む価値のある作品だと思います。中東ってのもなかなかないので面白いかと。おすすめ。

  • 友達に教えてもらって出会った一冊

    止まらない・・・そしてすごく気になる!
    おもしろいっというより何だか心に響くものがある一冊。
    考えさせられることが沢山詰まった暖かい本です。

  • アフガニスタンが舞台のあまり読んだことの無い話。ただ、テーマは普遍的な人間同士の関係であり、スゴ本でも絶賛されてたとおり、期待を裏切らない内容であった。
     人を裏切ることをテーマ(これだけではないが、)にした既読の本は、「1974年」「君達はどう生きるか」など今のところ外れがない。
     邦訳の旧題は「カイトランナー」であるが、「君のためなら千回でも」という原作に忠実な訳のほうがしっくりくる。

  • かつて繁栄していたアフガニスタンで、主従関係でもあり親友でもあったアミールとハッサン。しかし12歳の時に起きた事件が二人を引き離し、さらにアフガニスタンの情勢は悪化し、アミールはアフガニスタンを脱出し、アメリカに渡る。
    そして月日は流れたとき、突然かかってきた一本の電話が、アミールを戦地アフガニスタンへと引き戻した・・・。

    刻々と悪化するアフガン情勢も、登場人物たちの苦しみも、読むのがつらい小説。でもどちらも目を背けてはいけないし、実際のところ面白くて目が離せない。

    名作です。
    こういうエンターテイメントと社会問題を同時に扱った小説や映画がもっとあると、人々が社会に興味を持ちやすくて良いよね。映画を観てから本を読んだ方が、情景が頭に浮かべやすいので良いと思う。

  • アフガニスタン、戦火、
    離ればなれになってしまう、幼い二人の友情の物語です。

    いままで政情の不安定な国には行ったことありませんが、
    もっと自分のとこ以外の国も知らなきゃいけないなと、そう思わせてくれました。
    ちなみにコレを読んで、芝居を一本書きました。

    そして、そんなこと以上に、幼い、友達以上の素敵な関係の二人に降り注ぐ運命が過酷で泣けます。
    とてもスリリングで面白い作品だと思いました。

  • 舞台はアフガニスタン。裕福な家庭の息子アミール、そしてアミールの家で働く心優しい父と純粋な息子ハッサンの悲しい物語。
    宗教や人種問題、格差などいろいろと考えさせられます。
    本当の幸せってなんだろう。。。

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